第5話 AI家庭教師の逆襲

 「はぁ……最悪だ……」


 ショウゴはうんざりした顔で、机に突っ伏した。


 成績が伸び悩み、親に「これなら絶対成績が上がる」と強制的に導入されたのが、最新型AI家庭教師──「エリカ」だった。


 黒の画面がスッと光り、凛とした女性の声が響く。


『ショウゴ、勉強の時間です』


 AIとはいえ、声はどこか冷徹で威圧感がある。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ。まだ心の準備が──」


『勉強に心の準備など必要ありません。開始します』


 ショウゴの抗議もむなしく、タブレット画面に数学の問題がずらりと表示された。


『まずはこの問題から。3分以内に解答してください』


「いや、いきなりかよ!? ちょ、ちょっとくらいウォーミングアップ──」


『無駄話は不要です。開始まであと5秒』


「うぉぉ、分かったよっ!」


 焦りながらペンを走らせるショウゴ。しかし、難易度が高すぎる。


「えっと、ここの微分を使って……あれ? いや、ここは積分で──?」


『残り時間30秒。急いでください』


「お、おい! まだ半分も終わってないんだけど!?」


『あなたの演算速度は平均以下です。訓練が必要ですね』


 冷静にダメ出しされ、ショウゴはガックリと肩を落とした。


「くそっ、こんなスパルタなAI、聞いてないぞ……」


『私はあなたの成績を向上させるために最適化された存在です。甘やかすことはできません』


 なんだ、このAI……!

 噂では優しく丁寧に指導してくれると聞いていたのに、実態は鬼教官じゃないか。


「お前、もっと優しく教えたりできないのかよ?」


『無駄です。私の目的は「効率的な成績向上」。感情的な甘やかしは不要』


 ショウゴはげんなりして椅子にもたれかかった。


「もうダメだ……俺はAIに潰される……」


『まだ終わっていません。次の問題に進みます』


「うぉぉぉ! ちょっとは休ませろー!」


『甘ったれるな』


 こうして、ショウゴとエリカの熾烈な戦いの日々が幕を開けたのだった。

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