第2話 ある青年②
そうした愚行もやがては尽きる。兵は無限に生み出されはしないからだ。その時が『世界』が『セラーニャ』となる記念すべき日であるはずだった。
ところがここに、不穏が薄く舞った。『娘』の一人がとある国の部隊と交戦し壊滅させたのち、行方をくらませたのだ。
『セラーニャ』は戒厳令を敷き、ただちに調査を行った。しかし、『娘』は見つからず網をかいくぐってある噂が広まっていった。
かの部隊には一人だけ生き残りがおり、それによって『娘』は討ち取られたのだ、と。
一笑に付すもの、懐疑的なもの、希望を見いだすもの。受け取る側の反応は様々であったが、それぞれに芽吹く思考の中、共通するものがあった。
もし、本当に生き残りがいるならば、その者はどこへ?
「バン、遊べ」
「よーし、昼寝ごっこするぞ。目をつぶって寝っ転がってそのままじい~っとするんだ」
「やだ! 他のがいい!」
「あ~、もうっ」
その存在定かでない生き残りは確かにいた。名を、バーンノルツ。今はとある農場の一室で、ころころと太った少年に揺すられて不平を漏らしているのだった。
『娘』を討ち取ったとされる彼が属していたその部隊は、『テキサ』なる小国に属し『
だが、これには誇張が含まれている。発足当時でさえ『
青年バーンノルツも、徴兵を受けるまでその力を有する兆候すらない平凡な一個人に過ぎなかった。数合わせのため同隊に組み込まれ、僅かな訓練期間の後、『
極度の疲労と大小さまざまの身体を引き摺りながら必死に這い逃げ近くの茂みに身を隠し、どうやら思いがけない幸運に恵まれたのだと理解すると、これを好機として新たな人生を歩みだすことに決めた。『祖国』にも『故郷』にも微塵の愛着はなく、家族もない。忌まわしき過去を捨てるにわずかの躊躇もなかった。
それから数日、雨で喉を癒し、躯を漁って携行食糧等を調達して回復に努めた。激しい戦いに恐れをなしたのか『戦場漁り』の類もなく、獣や虫すらも不思議と寄ってこなかった。野宿の道具一式もあり、気温も凍死するほどには下がらずにいたのも幸運であった。
自由に動けるまでなると、あてどなく歩き出した。『仲間』を振り返らず、弔うこともしなかったのは、まだそれだけの余裕もなく、やはり『
属していたのは僅かな間だが、待遇はこれまでと全く変わらなかった。声をかけられるのは命令されるか憂さ晴らしに罵倒される時のみ、へまをしてもしなくても毎日殴られた。服従のみが許される『モノ』、それが『自分』であると繰り返し叩き込まれてきた。
二度と御免だ。そう誓い、バーンノルツはひたすら新たな『生』を求めて歩き続けた。例えその最中に死することがあっても、それは己の意志であり後悔はなかった。
そして、死よりも先に『それ』が現れた。見渡す限りがその一部であるほどの巨大な農場、武器を構えた男たちに囲まれ、口々に詰問されつつ、青年は『あの世』がこれだとするといささか拍子抜けだ等と思いながら腰を下ろし、気を失った。
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