第31話 疑問と答え(他者目線)

「その少年ですが、森の中で助けてもらいました。その少年と行動を共にして、街まで来たのですが、シルバーウルフを従魔としていたため、従魔登録するために冒険者ギルドへ向かっていた時に。その助けてもらった感謝の意を込めて、”私が冒険者登録時に推薦してやろう。D級冒険者から始めることができるぞ”と提案したところ、あっさりと拒絶されました。

私がなぜだと尋ねたところ、成人してすぐの少年が、B級冒険者の推薦を受けて、D級冒険者になったらどうなるか想像もできないのかと。金を払ってランクを買ったとしか見られないだろうと。そして、その金を狙って、明日には路地裏でぼろ雑巾のようになるから止めてくれと。


そこで、私が”この街では、そのようなことを起こさない。私が保証する。”と言ったら、心底呆れられました。」


「うむ。その時、その少年は、ほかにどのような話をしたのだ。」


「まるで、”街の当主のようなことをいう。”、”できもしないことを言うのは有害以外のなにものでもない”と言われました。あと、”どの力を使って行うと言っているのか、考えて喋れ”と。心底呆れたように言われまして。」

「では、その子供一人でよい、お前は、先ほどの子供をD級冒険者にした後、どのようにして、保護するのだ?」

「私が周知するから大丈夫だと言ったら、”貴族の力が街の隅々にまで浸透しているように言っているけど、荒くれ物やA級冒険者たちを抑えることが出来るのか?”と。できると言ったら、ガレットに、成人してすぐの者たちの犯罪被害状況を話させ、それらを抑えることが出来ない当主より、お前はできるのかと、無礼なことを言ったので、少々言葉を荒げてしまいました。」


「わはは。よほどお前より出来が良いな。その子供は。」

「父上までそのようなことを。」

「では、お前が言ったように、お前の力で、成人してすぐの者たちの犯罪被害を抑えてみよ。私も、毎年苦慮しているが、いっこうに犯罪被害数が減らん。頼むぞ。ケリオンよ。」


「お話に割り込んでよろしいでしょうか?」

「ガレットよ、許す。話してみよ。」

「私も、半分カマかけで、D級へ推薦できるぞと唆したのですが、見透かされ、”考えてもないことを言うな”と言われました。その時に、”実力に階段飛ばしはありません。ランクには意味があります。それぞれのランクで学ぶことがあり、その学びによって、上のランクに行けるのですから。階段飛ばしを行えるのは偉い人たちのみです。”だそうです。その階段飛ばしを全然羨ましがっておらず、逆に嫌悪感すら感じましたが。」


「だ、そうだ。ケリオンよ。お前をD級から始めさせたのは間違いだったようだな。F級からやり直してみるか?

それとは別にして、わが家での教育もまともに受けなかったと見える。困ったものだ。いくら三男とはいえ、成人して間もない少年の考え方にすら追いついていないのでは、どこへも婿にやれん。当分、家に籠って、勉強をし直せ。これは命令だ。」


「父上、それは、あんまりです。私とてB級冒険者です。それなりに実績を積んでいるのですから。」

「はぁ。ガレットよ。お前はどのような教育をしておったのだ?まさか、自分の実力だけでB級になったと勘違いをさせたか?」

「申し訳ございません。ただ、ケリオン様、ユミエラ様、レイチェル様の三人を一人で面倒を見るのには限界がありまして、それにギルドの方でも忖度があったらしく、私が不在の時にB級へ昇格していましたので、止めようもなく。」

「そうか、では、ギルドへは私の方からクレームを入れておこう。ケリオン、ユミエラ、レイチェルの三名は、我が家で、貴族とは何たるかを勉強させよう。ユミエラ、レイチェルの実家にも連絡をしておけ。」

「そんな、父上、、」「黙れ。お前に発言を許していない。今までの話で何も理解出来ないなら致し方ない。もう、下がって、先程の命に従え。其奴を下がらせよ。」


「しかし、その少年と会ってみたいな。どのような話ができるか、面白そうだ。ガレット、手配できるか?」

「話を持っていくことは可能ですが、面会の約束まではお約束できません。その少年は、権力者に近づくことを警戒しているようで、無理に呼びつけたら、この街から消えるでしょう。それぐらいの実力はあります。それにケリオン様達は、その少年に助けられた感謝の言葉すら口になされなかったので、余計に、嫌がるでしょう。」

「そうか、あまり無理をするな。しかし、冒険者になるとか言いながら、助けられたのに感謝の言葉もかけることが出来ないか。余計に勉強しなおさなければ、家から出すこともできんな。ただ、ケリオンが申していたように、森の中で助けた時の報酬は渡すのだろう?」

「はい。すでにパーティー資産から準備しており、明日か明後日辺りに渡してくる予定になっております。その時に、御当主様がお会いしたいとは伝えますが、期待をなさらずにいてください。お願いします。」

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