第9話 前世の記憶とおばあちゃん

次の日、頭が割れるような頭痛で、目が覚めた。

まだ、周りは真っ暗だ。


「あれ?ここはどこだ?」


頭の中をすごい勢いで、一人の人間の人生が走馬灯のように通り過ぎていく。

どうも、日本って国の東京の片隅にすんていたサラリーマンだったらしい。

バツイチで子供なし、50歳を過ぎてもうだつの上がらないまま、定年後をどうしようかと思いつつ、ラノベを読んで現実逃避をしながら生きている惰性だけの人間だ。

若い時はそれなりに頑張っていたらしく、ある程度の知識はあるみたいだ。

ただ、自分が知っているはずもない知識もいくつか混じっている気がするけど。

たまたま、大炎上しているプロジェクトへヘルプで入ったら、3連徹。一旦、家でシャワーと着替えのために戻り、シャワーを浴びたところまでで記憶が終わっている。

もしかして、素っ裸で亡くなった?恥ずかしい。

その後、なんか白い所で、靄っと姿の見えない神々しい雰囲気の人と少し話して、”才能と努力する能力が欲しいなぁ”と贅沢なことを言った気がするが、そこで、終わっていた。

いままで、もやっとしていた前世の記憶は、この男の人生だったらしい。


なぜ、今のタイミングで思い出したのか、よくわからないが。マルスとしての記憶も、普通に残っているし、性格にも影響がない気がするので、一旦は、棚上げしておく。

すこし、記憶が落ち着くまで待って、朝食を作り始めた。


食事が出来上がったので、おばあちゃんを呼びに行く。近頃、起き上がるのも大変な時があるんだよなぁ。

「おばあちゃん、ごはんができたよ。」


返事がない。ベッドに向かって、おばあちゃんを軽くゆする。身体が冷たい。

脈を診る。脈がない。


その場で、少し立ち尽くしていた。

気がつくと、外が明るくなっている。


涙が出ない。考えてみたら、前世の両親が亡くなった時も涙が出なかったな。っとか、意味のないことを思いながら、これからどうしよう?


「おばあちゃん、お疲れさまでした。」


と言って、一旦、食堂に戻って、ご飯を食べる。


昨日の話は、この事なんだろうなっと思いながら、言いつけに従って、動き始める。

まず、もっていくものともっていかないものの整理だ。

薬関係は全部持っていく、それから、衣服、食器、家具はどうしようかな?魔導書は袋の中だし。

ベッドは欲しいけど、この魔法袋ってどれぐらいの量とか大きさが入るのかな?分からないから試してみる。

やったベッドは入った。タンスは僕の分だけを入れて、おばあちゃんのタンスは、中身だけを布の袋に入れてタンスは置いておく。

あんな奴らに、おばあちゃんのものを触らせたくない。

で、照明魔道具と掃除用具、少ない食料なんかを入れたら、もう小屋が空っぽだ。

おっと、床下に隠してあったお金といくつかの魔石も持ち出す。


あとは、おばあちゃんを布団で包む。

「ちょっと、苦しいかもしれないけど、我慢してね。」

と言いながら、山の採取用の格好でおばあちゃんを抱きながら、山側の裏口から出る。

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