第11話 夜の女子会

夜風に当てられ、気分が白けた俺達は、解散することになった。


「あんな情報交換なら、毎日集まらなくてもいいよな」


「『蒼穹の聖光』は別として、他のパーティはキチンとした情報を公開するつもりはないだろうね」


さすがベルフィ、冒険者の思考や行動をよく知っている。


金の匂いに敏感で強欲、できれば自分達で儲けを独占したいと考えるのは、商売人も冒険者も同じだ。


自分の利益を薄めてまで、皆で分かち合う精神なんて持ち合わせていない。


『蒼穹の聖光』は生徒会に所属している優等生に似ている連中ばかりだ。

冒険者として模範になる行動を心がけるに違いない。

つまり冒険者ギルドの忠犬である。


『獅子の咆哮』の男子達は、子供のように競争が大好きである。

強力な魔獣を狩って、力を誇示したい単細胞の集まりだ。

幼馴染の女子達は、ブレイズ達が騒動を起す度に迷惑している。

それなの男子達を見捨てない良い子ばかりだ。


そう考えると『蒼穹の聖光』と『獅子の咆哮』が俺達に情報を隠すとは考えにくい。

しかし『奈落の髑髏』は得体が知れない連中だ。


奴等は有益な情報を得ても、それを俺達に共有することはないだろう。

まずは『奈落の髑髏』を泳がせて、連中の動きを観察してみるか。


俺達が野営テントに戻ると隣の女子達のテントが騒がしい。

何をしているのか気になり、テントの入口の幕を開いてみる。


するとアレッサ、ルディ、エリスの他に、ルーネとシャナ、それにレシル、エルミナ、サラン、女子達が集まって座っていた。


「皆、どうしてここにいるだ?」


「夜って暇でしょ。だから皆に声をかけて女子会を開いてたの。ノアとベルフィも参加する?」


「いや……今日は遠慮しておこうかな」


ルデイの問いにベルフィは表情を引きつらせた。

これは早く去ったほうがいいと考えていると、アレッサが大声で叫ぶ。


「女子会といえば、恋バナよね! 皆の恋愛話を聞きたいわ! 恋愛相談なら私も応援するから!」


その提案になぜか女子達が生暖かい目で彼女を見る。


スタイル抜群で、性格も素直。

怪力ではあるが、美少女のアレッサは、意外にも冒険者の中で人気が高い。

しかし、彼女は恋愛感情に無頓着で、今までに無意識的に数々の男子達を振ってきた経歴を持つ。


そんなお子ちゃまのアレッサに相談をしても、恋愛が成就するはずがない。

そのことを他の女子達も感じているのだろう。


するとルディが手をパンと叩く。


「恋愛相談はともかく、恋バナはしたいよね」


「はい……私も興味あります」


「私も……」


ルーネとシャナも気になるようだ。


「では、私達がセインの良い所を、今から説明しましょう」


レシルがそう提案すると、エルミナとサラが、ウンウンと何度も頷いた。


『蒼穹の聖光』の女子達はセイン一筋だからな。


俺としてはハーレムを形成するイケメンの話しを聞かされても、ムカムカするだけなのだが。


女子達のやり取りを呆然と見ていると、レシルが目を細め、俺達に殺気を放つ。


「これから女子の秘密を話すのに、まさか二人も聞くつもりなの? そうであれば問答無用で斬るけど」


「ノアとベルフィのスケベ! 女の子の敵は私がやっつけてあげるわ!」


「待て待て待て、すぐテントに戻るから! 皆さんでゆったりと話してください!」


アレッサが立ち上がってきたので、入口の幕を閉じて、速攻で自分達のテントに逃げ帰った。


武装を解いて寝袋に入った俺は、スマホからペットボトルを二本取り出し、ベルフィに手渡す。


このペットボトルはコーラで、フィオナ様のお気に入りだ。

彼女いわく、コーラとポテチはオタクの必須アイテムらしい。


ペットボトルを飲み、俺はニコリと笑む。


やはりコーラは美味い!


「それにしても、女子達って、全員仲がいいんだな」


「女子達にとってパーティ間の争いなんて関係ないんだろ。環境に応じて生活を楽しむのが女性だからね。それに比べて、男性はいつまでも夢を追いかけて、子供っぽいからね」


「ブレイズ達を見ていると、そう感じるよな」


「大森林のお宝を夢見て、魔獣と戦って、パーティ同士で競い合って僕達も同じようなものさ」


そう言って、穏やかにベルフィは微笑む。


彼の顔を見て、ふと転生した頃を思い出す。


天界からベルトラン王国の王都ベランに転生してすぐ、荒くれ者達に襲われ、俺は金貨の入った革袋を奪われた。


その時、偶然に居合わせたアレッサに助けられ、空腹の彼女に食事を奢ることになったんだ。


そのことで、なぜかアレッサに気に入られ、一緒に行動するようになった。


王都の冒険者ギルドで登録をし、『ニューミナス 大森林』の噂を聞いて、彼女と二人でバリストン辺境伯領の領都バリトンへ向かうことにしたんだよな。


道中の乗合馬車の中でアレッサに声をかけてきたのがルディだ。

彼女達が意気投合したことで、同じ宿に泊ることになり、そのままギルドの依頼を、三人で熟すようになった。


ルディいわく、アレッサを見ていると楽しいそうだ。


そしてバリトンの街を歩いている時に、孤児院の庭で子供達と遊んでいたベルフィを見かけたのだ。


冒険者ギルドで彼を発見した時、ついつい気になり声をかけたんだよな。

それからベルフィも俺達の仲間になって『不死の翼』を結成して今に至る。


バリトンを離れてからも、彼は孤児院へ、依頼報酬のほとんどをギルドを通じて送金している。


孤児だったベルフィにとって孤児院は家族なのだ。


「子供達は元気なのか?」


「この間からミリアから手紙が届いたよ。皆、元気そうだ。いつも送金の援助をしてくれて助かる」


ベルフィの事情を知っている、俺、アレッサ、ルディの三人は、自分達の報酬を減らし、その分をベルフィの報酬に上乗せしている。


育ち盛りの子供達に貧困な生活をさせたくないのは、俺達三人も同じ気持ちだ。

それにベルフィの家族であれば、俺達の家族でもある。

仲間は助け合わないとな。


それから二人でしばらく雑談をし、睡魔に襲われ眠ることにした。


寝袋の中でぐっすり眠っていると、ポケットに入れているスマホがバイブが震える。


その振動に目を覚まし、ノロノロとスマホの画面をタップすると、涼やかな声が聞こえてきた。


『翼君、元気?』

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