まだしばらくは友達以上恋人未満でいるつもりだ

梅竹松

第1話 両想いだとわかっているけど告白しない

 学生の間は彼氏彼女の関係になるより友達以上恋人未満の状態でいる方が楽しい――これはオレの持論だ。


 現在高校一年生のオレには、有山葉月ありやまはづきという名の幼馴染がいる。

 彼女とは家が隣同士で年齢も同じだ。

 そのため、すぐに仲良くなった。

 また、小学生の頃からクラスメイトになることも多く、今も同じ高校の同じクラスに所属している。

 一緒に過ごす時間が多いからか高校一年生になった今でも非常に仲が良く、オレと葉月はカップルに間違われることも多かった。


 そんなオレたちだが、実際は付き合っているわけではない。

 まだどちらかが告白したわけではないからだ。


 だけど、オレたちが両想いであることは明白だった。

 オレは葉月のことが好きだし、葉月もオレのことを悪く思っていないのは見ていればわかる。

 実際にオレが他の女子を「可愛い」と褒めたり、街中で胸の大きな女性に見惚れていたりすると、わかりやすく嫉妬するほどだ。

 オレたちのような状態を友達以上恋人未満と言うのかもしれない。

 告白すれば、かなりの高確率で付き合えるだろう。


 それがわかっていても、オレはあえて告白しないことを選択した。

 なぜなら今は付き合うよりも“友達以上恋人未満”の状態の方が楽しいからだ。


 まだ責任を取れる年齢ではないのだから、仮に恋人同士になったとしても、学生のうちは健全なお付き合いをした方がよい。

 だがそうなると、できることは交際前と大差ないのだ。


 高校生のデートと言えば、一緒に買い物をしたり、放課後に寄り道をしたり、休日に遊びに出かけたり、どちらかの家でのんびりと過ごしたりするのが一般的だろう。

 でも、それは付き合わなくてもできることだ。

 実際、オレと葉月は世間一般的に“デート”と呼ばれるようなことは今までに何度もしている。

 だから今さら付き合っても、特に日常生活が変化するとは思えない。

 むしろ付き合わない方がお互いに意識せずに済むから気が楽だった。


 だが、もちろんカップルになるメリットも存在する。

 それはキスができるかどうかだ。


 いくら仲の良い幼馴染とはいえ、恋人にならなければキスをするわけにはいかない。

 デートの最後にキスをするというのはわりと憧れるシチュエーションなので、それができないのは大きなマイナス要素と言える。

 オレだって、いつかは葉月とそういうことをしてみたいという欲求はあるのだ。


 だけど、それでも今はまだ恋人になる気にはなれなかった。


 やはり葉月と友達として遊んだりはしゃいだりする時間はとても楽しいからだ。

 それに、クラスメイトたちから「お前ら早く付き合っちゃえよ」と囃し立てられることも意外と好きだったりする。

 他の生徒から冷やかされると葉月は顔を真っ赤にして否定するのだが、よく見れば満更でもなさそうな表情をしているので、とても可愛いのだ。


 また、オレがちょっとした意地悪で「あの子、可愛いね」とか「あの女の子、ちょっとタイプかも」などとつぶやくと、葉月は頬を膨らませて嫉妬するのだが、その時の表情は何度見ても飽きない。


 『私の前で他の女の子を褒めるのは不愉快だけど、彼女でもない自分にそんなことを言う資格はないんだよなぁ……』と考えているのが丸わかりで、ついつい定期的にからかいたくなってしまう。


 嫉妬する葉月を間近で眺めるのは、今やオレの楽しみのひとつになっていた。


 以上、二つの理由により、オレはしばらくは告白しないつもりだ。


 もちろん葉月の方から告白してきたら付き合うが、プライドの高い彼女が「私と付き合ってください」と頼んでくる可能性は低いだろう。


 つまり、オレの方から告白しない限りは友達以上恋人未満でいられるというわけだ。

 繰り返しになるが、学生のうちは付き合うより恋人同士になる一歩手前の状態の方がより青春を感じられるのだ。


 もちろんいつかはちゃんと気持ちを伝えるつもりだが、しばらくは今の状態を全力で楽しむつもりだった。


 

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