第24話 人類の叡智 コンクリート完成!
いよいよ試作開始だ。サクラは曖昧な記憶を頼りに、最初の配合比率を指示する。
「石灰が1で、火山灰が2、砂利は4…くらいだったような…?」
「了解っ!」
オークンは掛け声とともに、巨大なスコップでざっくざっくと材料を混ぜ始めた。
「次は水ね。ええと、どのくらいかな…」
サクラがおそるおそる水を加えると、
「あ、ちょっと多かったかも!」
案の定、シャバシャバの液体になってしまった。
サクラは苦笑いしつつ、「まあ、最初はこんなものよ!」と、液体を木箱の型枠に流し込んだ。
しかし、翌日。
期待を込めて見に行った型枠の中にあったのは、ひび割れた、脆い泥の塊だった。
「あちゃー、やっぱり最初はうまくいかないかー」
ゴブ太が頭を掻く。
オークンが指で塊をつつくと、泥の塊はポロリと崩れた。
「うん、まあ想定内よ!」
サクラは気を取り直し、拳を握った。
「原因を考えて、次いこう、次!」
それから試行錯誤の日々が始まった。
サクラは配合比率を変え、水の量を慎重に調整し、混ぜ方にも工夫を凝らす。
ゴブ太とオークンは、文句ひとつ言わず、サクラの指示に従って黙々と作業を続けた。
彼らはサクラの諦めない姿勢を誰よりも知っている。
「もしかして、この石、そのままじゃダメなのかも?」
サクラは記憶の断片を思い出した。
「そうだった、石灰岩は焼かないと!」
三人は協力して試験場の隅に簡単な石組の炉を作った。
オークンが力仕事を担当し、ゴブ太が器用に火を操る。
炉で真っ赤になるまで焼かれた石灰岩は、冷めると白く軽い「生石灰」に姿を変えた。
これに水をかけると、シューッと音を立てて激しく熱を発し、「消石灰」へと変化する。
「うおっ!石が燃えてるみたいだ!」
「すげえなサクラちゃん!」
ゴブ太とオークンは、目の前で起こる化学変化に目を輝かせた。
改良した消石灰を使うと、出来上がるものは以前より格段に良くなった。
しかし、まだサクラが求める強度には達しない。
「うーん、何が違うんだろう…」
サクラが配合表とにらめっこしていると、砂利の山を見ていたゴブ太が呟いた。
「なんかさー、もっとザラザラしたのが多い方が、しっかり固まりそうな気がしねぇ?」
「ザラザラ…?」
サクラはその言葉にハッとした。
「確かに、骨材の大きさが均一すぎるのかもしれない…!」
サクラはゴブ太の意見を取り入れ、大小さまざまな大きさの砂利を混ぜ、火山灰との比率も微調整し、水の量も慎重に見極めた。
そして、祈るような気持ちで新たな配合を試した。
ゴブ太が念入りに材料を混ぜ、オークンがサクラの指示通り、水を少しずつ加える。
型枠に流し込み、固まるのを待つこと数日。
三人が固唾を飲んで見守る中、サクラが慎重に型枠を外す。
そこには、これまでとは明らかに違う、灰色で緻密な塊が現れた。
「……できた、かも!」
サクラが手に取ると、ずっしりと重い。
オークンがおもむろに拳で叩いてみるが、コンッという硬い音が響くだけで、びくともしない。
「おお……っ!」
オークンが感嘆の声を漏らす。
ゴブ太が近くに落ちていた石で力いっぱい叩いてみた。
「カッチカチだ!やったー!」
それは、まだ完璧なコンクリートとは言えないかもしれない。
それでも、紛れもなく「人工の石」が、彼らの手によって生み出された瞬間だった。
「やった…!二人とも、本当にありがとう!」
サクラは成功した配合と手順を震える手で記録しながら、満面の笑みで仲間たちに感謝した。
「へへん、まあな!サクラちゃんの発想と、おいらたちの力があれば当然よ!」
ゴブ太とオークンが胸を張る。
サクラは、出来上がったばかりのコンクリートのテストピースを大事に抱え、アルドリックの元へ報告に向かった。
執務室で報告を受けるアルドリックは、差し出された硬質な塊を手に取り、その重さと硬さを確かめ、わずかに目を見開いた。
「ほう…これが『コンクリート』か。確かに、ただの泥や土くれとは違う。よくやったな」
アルドリックは素直に成果を認めたが、すぐにいつもの冷静な口調に戻った。
「だが、サクラ。この小さな塊ができたからといって、すぐに道が作れるわけではない。これを安定して大量に生産し、実際に道として十分な強度と耐久性を持たせるには、まだ課題が多い。わかるな?」
「はい!」
サクラは力強く頷く。
「今回の成功は、まだ第一歩です。これからさらに改良を重ねて、もっと強くて、長持ちするコンクリートを作ります!そして、必ずこの手で、丈夫な道を!」
その日の夕方、調理場には、コンクリート試作の成功を祝うささやかな食事が並んだ。
「次はもっとでっかくて、カッチカチの石を作るぞー!」
「「おうよ!」」
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