第23話 人工の石
市場庁舎の調理場には、いつものように朝の活気が満ちていた。
オークンが力強くパン生地を捏ねる音と、ゴブ太が鼻歌交じりに肉を切る音が響く。
サクラは、先日アルドリックから得た許可を胸に、決意を固めていた。
「ねえ、二人とも!」
サクラが声をかけると、ゴブ太とオークンはすぐに手を止めて振り返った。
「ん、どうしたんだサクラちゃん?」
「新しい飯か?」
オークンはエプロンの裾で手をぬぐいながら、期待に満ちた目を向けた。彼は、サクラの『新しい話』とは、『新しいうまいもの』と考えているらしい。
「ううん、今回は食べ物じゃないんだ。でもね、もっとすごいものを作るの!」
サクラは目を輝かせた。
「カッチカチに固まる不思議な泥で、雨の日でも荷車が楽に通れる、丈夫な道を作るの!」
「道!?」ゴブ太が目を丸くする。
「……食いもんじゃないのか」と、オークンがちょっと残念そうな顔をしたが、すぐに真面目な表情に戻る。
「でもまあ、でこぼこの道は食材運ぶのも一苦労だしな。丈夫な道ができりゃ助かるぜ」
「でしょ?」
サクラが微笑む。
「でもね、これを作るには実験が必要なの。素材の割合とか、乾く時間とか、現場で確認しないと」
「ならオイラたちの出番だねぇ!」
ゴブ太が胸を張る。
「オークンの怪力と、オイラの段取りで、ばっちりお手伝いしちゃうよ!」
「おうよ!で、何をすれば良いんだ?」
オークンが腕まくりを始める。
「材料を集めて混ぜて欲しいんだけど、水と混ぜたときにね、粘土みたいになって、けっこう重たくなると思う。混ぜるにも成形にも、すごい力がいるかも」
「よっしゃ、まかせろ」
オークンはすでに気合十分。
「その粘土飯……いや、コンなんとかってやつ、任せとけって!」
「じゃあ決まりね!まずは材料集めから手伝ってほしいの!」
「「おうっ!!」」
いつものように、サクラの新しい挑戦に、頼もしい助手二人が快く応じた。
サクラはまず、庁舎の倉庫を物色し、材料を混ぜるための古びた大きな樽、土を掘るためのシャベル、そして型枠に使えそうな廃材の木箱などを三人がかりで運び出した。
場所は、アルドリックに許可された庁舎裏の空き地だ。
材料集めは、これまでの3人の連携が生きた。
北の丘では、サクラの指揮のもと、ゴブ太が目ざとく質の良さそうな石灰岩を見つけ出し、オークンがその怪力で手頃な大きさに砕いて荷車へ。
東の古い火山の麓では、オークンが黙々と火山灰らしき黒い土を掘り出し、ゴブ太が軽石のようなものを器用に選り分ける。
川では、オークンが川底から大量の砂利を運び上げ、ゴブ太が慣れた手つきで砂と砂利を選別した。
「よし、これで材料は揃ったね!」
三人は汗をぬぐいながら、集めた材料を試験場へと運び込んだ。
未知の技術への挑戦は、確かな手応えと共に、次の段階へと進もうとしていた。
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