十三

 突然スマホの着信音がして俺は思わず声を上げてしまった。辺りを見回すと地面に俺のスマホが転がっていた。拾って相手を確認すると会社からだったので慌てて出ると相手は上司だった。

 無線で何度呼び出しても繋がらず、電話にもでないから事故でもあったかと心配したぞ、と不機嫌な声でドヤされた。

 俺は平謝りしながら、山の中で車のトラブルで立ち往生したこと、通信障害で連絡がつけれなかった事をアタフタと説明した。

 そん訳ないだろと上司は叱責してきたが、とりあえず無事なら良かったと言ってくれた。


 今何処にいると聞かれたので、〇〇の道の駅の近くですと言うと、一瞬妙な間があってから、ああ、あの辺か、と上司は変に納得した声を出した。そして車は動くかと聞かれたので、えぇっと、と首を回して車の方を見た。

 エンジンはかかっており、普段の車の様に見えた。車の近くに例の女性が立ち上がっていて、俺と視線が合うと少し微笑みながら頷いた。

 何故かそれを見て、あぁ、車は動くんだなと俺は思った。上司に解決しましたと言うと、もう帰社時間だぞ、早く帰ってこいと言って電話は切れた。

 

 女性にお待たせしてすみませんと言うと、ドアを開けて乗車を促した。ドアは何の抵抗もなく普通に開いた。

 女性が後部座席に着くのを確認すると、俺は運転席に回って座った。

 白んで来た風景を見回すと自分がいる場所が道の駅に程近い、本来の道にいる事に気がついた。あの酔客を乗せて走ってきた道をちゃんと戻っている事になるので、心の中でしきりに首を傾げた。


 不思議な事続きだったが、冷静になった途端、接客中だったこと思い出した。慌てて振り返ると、

「大変申し訳ありませんでした。お客さんは大丈夫ですか?」

 と尋ねた。帽子を脱いでシートに座った女性は私は大丈夫ですと言った。


「どちらかと言うと私があなたを巻き込んでしまった様です。本当に申し訳ありません。」

 と彼女は頭を下げた。


 何がどう巻き込んだのかさっぱり分からなかったのでアレコレ聞きたかったが、お客を運ぶ必要もあるので、

「駅までの道中、何がどうなってたのか教えてください。」と女性に言って俺は車を発進させた。


 以下、女性が解説してくれた内容だ。彼女は、まだぼうっとしながら運転している俺に優しい声で解説してくれた。

 ただ説明を聞いたところで俺も全ては理解できなかったので、できるだけ簡単な言葉に要約してみる。


 

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