第11話 出荷イベント!

[至誠 ]ふんふんふ~ん♪

[農民D]どうした? やけにご機嫌だな? 死ぬぞ?

[至誠 ]なんでだよ!? たまには俺にも気楽にゲームを楽しませろよ!

[農民D]それは運営に言ってくれ

[至誠 ]無駄に決まってんじゃん……

[農民D]わかってるじゃないか。それで? 農作物は売れたのか?

[至誠 ]クズが出て来てクズなこと言ってる……

[農民D]あ~ダメだったか。まぁ、ほぼ全てのルートで商会は役に立たんから仕方ないな

[至誠 ]そんな商会意味ねぇよ。で? なんかないの方法?

[農民D]もちろんある

[至誠 ]kwsk

[農民D]台風倒した?

[至誠 ]ん? 倒せねぇよ、あんなの!?

[農民D]まぁそっか。だったらこっちだな。ちゃんと救済ルートがある。

[至誠 ]それは本当に救済ルートなのか?

[農民D]……

[至誠 ]なぁ?


 懐かしいな。

 俺はまた、リガイアをやり始めた頃のやり取りを思い出していた。


 あの頃は何も知らなくって、やたら死ぬキャラに警戒心と猜疑心マックスになってたな。


 あれからひたすらやり込んだ結果、今では激レアな裏の裏ルートまで知ってるほどになった。

 なんてことを思い出しているのは、もちろん現実逃避だ。


 


「く~っくっくっく。威勢よく愛人にならないと宣言していたのにいいざまだなぁ~」

「くっ……」


 ぶっ飛ばしたい。

 今俺の中の全ヘイトを一身に集めているこのクソ貴族をぶっ飛ばしたい。


 "耕魂ソウル・テイル"さえ打てればそれをあっさりと実現できる。

 だから、もう撃とう?


「残念だったな。セイドウ商会は台風で橋が壊れたせいで来れなかった。だから私が半値八掛け五割引くらいでなら買ってやってもいいと言っているんだ。優しいだろう? まぁ、それでは納税は無理だろうから、その娘は貰っていくがなぁ!? あ~っはっはっはっはっは」


 こんなムカつく顔をしている奴が一人くらい世界からいなくなっても誰も悲しまないどころか、褒め称えられるまであるよ?


 な?



 そもそも、正道商会なのか聖堂商会なのかわからんけど、もっと頑張ってくれよ。

 お前たちに農民たちの命がかかってんだぞ?


 って言っても、たいていは馬車で移動するこの世界の商会では橋が壊れたら無理か。

 目の前のクソ悪徳貴族が修理をケチったり延期させたりしてそうだけど、ほんとクソだよなこいつ。



 ということで、行け! "耕魂ソウル・テイル"!


 コハルには意識が滑ったとか言っておけばいいだろう。


 もちろんクソ悪徳貴族は気付いていない。


 適当に立てかけられているようにしか見えない農具であるくわがスキル発動とか、普通考えないだろうしな。


 黄色と緑の光が沸き起こり、悪徳貴族に向かって発射される。

 とりあえずどっか行け。


「なっ……!?」

 

 しかしそこで俺が予想だにしなかったことが起きた。

 なんとクソ貴族がレイピアを抜き、俺の耕魂ソウル・テイルを切り払ったのだ……っていうか、なんか振ったというより振り回されたよな、今。

 

「誰だ!? 今の攻撃を放ったのは誰だ!!!?」

 

 まさか防がれた。

 

 まずい……警戒しているのかゆっくりではあるが俺の方に近寄って来て、俺を持ち上げた。


 やめろ、汚いアレを弄りまくった手で触るな!

 鼻もないのに臭いだろ?


「何のへんてつもない貧相なくわだが……どういうことだ?」


 貧相な鍬だと!?

 ふざけんなよ、この野郎!!!!!?


「すっ、すみません。"暴風の化身"の力がまだ残っていたのかもしれません」

「ふん……そんなバカな話をこの私が信じると思うのか?」


 なんだ?

 なんでコハルは俺に目配せして……そうか。そうだよな。あいつの注意をコハルがひいてるあいだにもう一発か……。


 わかったよコハル。今度は背後から至近距離でだな!

 "耕魂ソウル・テイル"!

 

「ぐわぁぁぁあああぁぁぁああああ!!!!!? きっ、貴様!?」

『力を感じるがまさかな……おい、ラグラン。今は帰るぞ! ここは危険だ』

「おっ、覚えてろよ!!!!!?」


 ふん……とっとと帰っておけばお尻の穴は無事だっただろうに……。


 どうせお抱えの治癒術師に治してもらうんだろうけど、帰りの馬車の間くらい悶絶しとけよ、クソ貴族!




 しかし、あの声はなんだったんだ?

 まさかあのクソ悪徳貴族も俺みたいな道具を持っているのか?

 それももしかしてあのレイピアか?


 う~ん、謎が尽きないな。


 でもまぁ、今はとりあえず農作物を売らない事にははじまらない。


 正規ルートが潰れた今、どうにかして納税と来年の農業の準備と越冬の資金を稼がないといけない。


 どれかが足りないとそれぞれ、悪徳貴族の大人のおもちゃ、餓死、餓死という結果に終わる。


 やっぱり死に過ぎだろクソ運営め!!!!!?



 しかし泣き言を言ってはいられない。

 すでに橋は落ちて俺たちは窮地に立たされている。


 それでもクソ悪徳貴族に売るのはなしだ。

 なんだよ半値八掛け五割引って。正規の値段の2割じゃねーか!

 ぼったくりもいいとこだ。


 さらにコハルも奪っていくとか、そんな選択肢を選ぶわけがないだろうが!!!?



くわさん……どうしよう……」


 勢いで悪徳貴族を追い払ったものの、代わりにお金を手に入れる手段を知らないコハルたちは項垂れている。

 当然だ。


 このままいけばコハルを生贄に差し出すしかないのだから。


 しかし心配はいらない。


 俺がいるからな。


 このゲームをやり込んでいる俺はこんな時のお助けルートも当然知っているからな。

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