第2話 開墾は危険がいっぱい?

[至誠 ]おぉ~始まった。この世界ってなんかほっこりするな。

[農民D]最初だけな。心してイベントにかかれ!

[至誠 ]えっ、なんで?

[農民D]やってみればわかる。ちゃんとキャラデザインせずに開始しただろうな?

[至誠 ]え~と、ちょっとやってしまいまして……。

[農民D]はぁ? あれほど最初は課金するなと言ったのに!

[至誠 ]だって見てよ。華やかな金髪ゆるふわショートに愛らしいお顔。スタイルも良くて、健康的。最高に可愛いだろ?

[農民D]めちゃくちゃ弄ってるじゃないか、バカが……。

[至誠 ]えぇ~酷くない? やるからには気合入れないと。

[農民D]もういい。とりあえず開墾してこい。

[至誠 ]どうやるの? あれっ? なにこの仰々しいブサメン……って、えぇ? なんかラグランとかいう人が出てきたよ?

[農民D]終わったな。ナムナム……

[至誠 ]はっ?

[農民D]特定のタイミング以外でその貴族が出たら終わり。

[至誠 ]えっと、なにが? ……って、あぁーーーー!?!? 俺のお気に入りのが!?

[農民D]残念ながらお前のキャラは死んだ。

[至誠 ]この! 放せ! なに下半身露出してんだよ!? ふざけんな、これエロゲじゃないだろ!?!?

[農民D]それも非道な方法で。

[至誠 ]最低だ……ちくしょう、リセットだ! って、なんで? デザインしたキャラがいなくなってる!?

[農民D]セーブせずに死んだら最初からだ。だから課金するなって言ったのに。しかもそれ、プレーヤーキルだ。誰かに邪魔されてる。

[至誠 ]なっ……許せない。許せないぞ!? 絶対にそいつを突き止めて報復してやるからな!


 週末の夜に友人とチャットしながら農業ゲームをスタートした俺は、既にお酒を飲んでいた。

 だから課金し、あっさりと殺された俺はわかりやすくプチンと切れた。


 再度ゲームを開始した俺は、前回とほぼ同じ地点を選んで開始する。今回は邪魔は入らなかったらしく、ある程度育てたところで邪魔しに来たクズを特定し、魔獣と契約してそいつの動かしている農民一家を全員喰い殺させた……。


 このゲームはそんな鬼畜ゲーだ。

 

 だから気を抜いてはいけない。

 俺はこの可愛らしいコハルを守るんだ。はじめて作ったあの俺好みの女の子と瓜二つのコハルを。


 絶対にラグラン・グラードとか言うクソ悪徳貴族になんか負けない。

 魔獣にも、盗賊にも渡さない!

 災害にも負けない!


 農業を発展させ、強くなっていく必要がある。

 そのためには、まず開墾だ。


 このゲームは農業シミュレーションゲームだからな。

 開墾して、畑を耕して、害虫害獣悪天候から守り、収穫して、販売して、税金を納め、また来年農業を行う。


 その繰り返しで発展し、畑や村を拡張し、場合によっては軍を備えていく。


 

 今はゲームの冒頭……。


 まずは開墾のためにくわである俺はコハルに何度も振られながら昔プレイしていたゲームのことを思い出していた。


『だいぶできてきたじゃないか』

「あなたのおかげね! 昨日までは頑張っても頑張ってもなかなか進まなかったのに、今日だけで全部終わりそうよ。凄いわ♡」

 コハルはそこそこの広さのある農地を見渡しながら楽しそうにしている。

 これだけで単純な俺は転生してよかったなと思ってしまうな。それくらい強力な笑顔だ。


『攻撃力+100の効果かな? "耕魂ソウル・テイル"使ってみる?』

「嫌よ。もしそれが攻撃スキルで、せっかく開墾した土地を破壊したら最悪よ」

『確かに……』


 そんなことを話したあと、再びコハルはひたすら俺を振り上げて振り下ろす。

 何度も何度も。


 その度にどんどん土地が開墾されて行くのは見ていて気持ち良い。

 ただふられているだけの俺は楽なものだ。


「あっ……何か出て来たわ」

『あぁ、野ネズミか。雑魚敵だな。サクッと俺で叩けばいちころだな。攻撃力5の初期キャラでも倒せるんだから』

「本当ね。サクサク殺せるわ」

『うん……まるで豆腐みたいだ』

「とうふ?」

『あぁ、知らないか。また作り方を教えるよ。豆から作れる、柔らかい食べ物で美味しいんだ』

「豆か。それが作れるのはまだ先よね、きっと。まずは麦をいっぱい作ってしっかり稼がなきゃ」


 コハルは真面目だ。

 というか、この世界の大半の人は真面目に働いている。

 おかしいのは悪徳貴族とか、盗賊とか、一部のバカだけだ。


 俺は一生懸命におれを振る可愛いコハルを見つめて心を満たす。

 コハルのおかげで鍬に転生したのに特に不満を感じない。


 そしてそろそろ頃合いかなと思っていたら、出て来たわ。

 あれはラージボアだ。


 お肉が美味しいから、なるべくサクッと傷つけずに殺したい。


『コハル構えて』

「えっ? こうかしら?」

『そうそう、上手だな。で、あのボアが突っ込んできて、俺が良いと言ったら振り下ろしてくれ』

「えっ無理……怖い……」

『大丈夫だ。俺を信じてくれ』

「えっ、うん……」

『ほら来るよ。もう逃げ場はないし、覚悟を決め……よし!』

「えぇ? おりゃあ! うわっ~~~~~~」

 

 ごめん……コハルが吹っ飛ばされちゃった。大丈夫かな?

 一方で、ちゃんと俺の刃はラージボアに当たったみたいだ。


『大丈夫か?』

「いたたたたた。む~」

『ほら、痛いの痛いの飛んでいけ』

「なんか楽になったかも」

 マジで?


『でも、ちゃんと倒せたみたいだ。やったな!』

「えっ? 本当だ……って」


 ……ギュウゥゥゥウウウ。

 

 大きな音が鳴り響いた……


 コハルのお腹だ。


『美味しそうだな。ルーダを呼んで血抜きをしよう』

「うん、わかったわ!」


 ラージボアは数日後、コハルたち一家の貴重なご飯となったのでした。


 今のところこの世界は平和だ。


 それもそうだよな。

 序盤から邪魔をしてくるなんて、頭のおかしい転生者がいない限りないよな?

 もしやってもたいして報酬は得られないし、ただ弱者をいたぶるだけだから。


 開墾は成功だ♪


 さすが俺。

 

『コハル、次は農地を耕すんだ! 腰を入れてガンガン振って、俺を満足させるんだ。いいな!』

「えぇぇぇ!? ……ちょっと言い方が変じゃない!?」

『失礼だな。くわは振り回され、打ち込まれるものだ! 俺を信じるんだコハル!』

「なっ、なんか冷や汗が……」

『いいからいいから。ファイト―♪』




---イベントクリア!---

<くわ>

[種族]    農業用具・くわ

[レベル]   8(レベルアップによって強く、魅力的になっていく)

[所有者]   コハル

[ステータス] 攻撃力+320

[付与スキル] "耕魂ソウル・テイル"、"ビーストスラッシュ"、"身体強化"

[耐久性]   908

[特徴]    リガイアへの転生者の魂が宿ったくわ


<討伐歴> ※名前:レア度:討伐数:備考

new ラージボア:2(アンコモン):1体:なし

new 野ネズミ:1(コモン):12体:なし

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