転生したら鍬だった……ってここ、異世界農業ゲーム・リガイアかよ!? だとしたら、俺は絶対にヒロインを守るんだ……悪徳貴族や魔獣の餌になんか絶対させないぜ!!
蒼井星空
第1話 転生したらしい……
「おりゃ~~~~!!!!!」
威勢のいい可愛らしい声が聞こえたと思ったら、高く舞い上がり、そして地面に打ち下ろされたのは……
ザク!
……俺……。
えっ?
なんだこれ、どういうことなんだ?
俺の困惑をよそに、ゆっくりと上がっていく視線……。
待って! ねぇ!? 俺、高いところ怖いんだよ?
「もういっちょーーーー!!!!」
ザク!
俺の足の方が地面にふり降ろされ、埋まる……。
「ふぅ~~~~」
次に持ち上げられることはなかったから、頭にはてなマークをいっぱい浮かべつつも周囲を見ると俺の首のあたりをしっかりと握っている可愛い女の子……。
こんな子に使われるなら本望だ~~~~~♡
なんて、思考を飛ばしている場合ではない。
その女の子が握っているすらりと長い持ち手。
先っちょについた滑らかで大きな刃。
飾りっ気のないそれは、間違いなく……
『なんじゃこりゃ~~~~~!?!?!?!?!?』
「えっ?」
どういうことなんだ?
なんで
待て待て待て待て。
落ち着け至誠!
これは夢……もしくはきっと幻覚……いや、悪夢?
誰か嘘だと言ってくれ!?
いや、こんなときは落ち着いて記憶を思い出すんだ!
……えぇと。
俺は日本と言う国で生まれ育った藤本至誠……27歳。どこにでもいる普通のサラリーマンだったよな?
のんびり仕事をして、帰ってゲームをしながらお酒を飲むのが好きな独身男……だった……。
なんで
なぁ、意味わからないだろ?
俺にもわからないわ。
目もないのになぜか周囲が見える……ってなんで360度見えるんだ?
それに口もないのに今叫んだよな俺?
それにそもそも脳もないのに何で考えてんだ俺?
意味わからん……。
でも、事実として俺が俺の体だと認識してるのがこの立派な
「もしかしてあなたが喋ったの?」
女の子が俺に話しかけてくる。めちゃくちゃ俺好みの美人さんだ。
『お前、俺の声が聞こえるのか?』
「えぇ、本当に? 本当にあなたの声なの? 凄い! 凄いよ!!! 信じられない!?」
『どういうことだ?』
なぜこの子は喜んでいるんだ?
俺はこんなに困惑しているのに?
「だって、農具が喋り出すなんて、言い伝えにある伝説の農神さまみたい! 凄いわ! ちょっと鑑定させて!」
鑑定?
それはゲームとかでよくあるやつか?
もしそうなら俺の方からお願いしたい。
もしかしたら俺の状況が何かわかるかもしれないから。
---
<
[種族] 農業用具・
[レベル] 1(レベルアップによって強く、魅力的になっていく)
[所有者] 農民コハル
[ステータス] 攻撃力+100、スキル"
[耐久性] 999
[特徴] リガイアへの転生者の魂が宿った
<討伐歴>
なし
---
「すご~い♪ ……見たことないステータスにスキルよ!」
読み上げられたけど意味が分からない。なんだよ"
女の子……コハルっていうらしい……も初めて聞いたスキルらしいけど。
ただ、最も衝撃的だったのはそこじゃない。
特徴として読み上げられた中にあった"リガイア"という名前だ。
えっと……この世界ってもしかして異世界農業シミュレーションゲーム"リガイア"の世界なの?
ってことはつまり、コハルはプレーヤーが動かすキャラってこと?
それで元プレーヤーだった俺好みの外見をしているのか?
う~ん。そうだとすると……まずいな……。
なにせこのゲームは異世界農業なんていうほんわかした名前とは裏腹の鬼畜ゲームだからだ。
プレーヤーはキャラを操って様々な農業イベントをこなしていく。
上手くいけばどんどん発展する一方で、何かに失敗するとすぐに死ぬ。それも悲惨な目にあって。
どうしよう……。
コハルが魔獣や悪徳貴族の餌にされるなんて、絶対に防ぎたい。
でも、俺、
俺に何かできるのか……?
「凄い! 凄いよ、
コハルの見た目はどうしようもなく素敵に見える。今も俺のことをめちゃくちゃ喜んでくれている。
彼女は美しく整った顔立ちをしていて、それでいて女の子らしい仕草が可愛く、頑張り屋さんで……って、なんで俺はそんなことを知ってるんだ?
もしかして
だからその記憶が薄っすらとあるとか……?
まぁ、そこはどうでもいいけど、俺はこの一家の、そしてコハルの力になりたいと思った。
こんなにも喜んでいる美しく可愛い彼女を見て、よくわからないけど、そう思うんだ。
何を隠そう、俺はこのゲームをやり込んでいた。
それこそ、会社なんて毎日定時ダッシュし、数少ない友人の誘いもすべて断ってこのゲームに打ち込んでいた……は言い過ぎってこともない。
お手軽なゲームだったから、毎日お酒を飲みながらプレイしていたけどね。
ゲーム内で友達を作って攻略用のオプチャ(注:オープンチャットの略)を作ってゲームの内外のことをだらだらと毎日喋っていた。
まぁ、中には頭のおかしいお邪魔プレーヤーがいて、俺も一度だけ殺し合ったことがある。
ネットゲームあるあるだからひかないでくれよな。
そんな感じでとても楽しんでいた。
そこの人、だから独身貴族まっしぐらなんだとか言わないように!
この家を改めて見渡す。
なんで
まだ農地は狭く、設備も建物も少ない。
間違いなくリガイアの初期状態だ。
つまり、今からいろんなことが起こる。
ほのぼのとしたプレーヤーキャラであるコハルでは予想だにしないような過酷なイベントの数々が。
まぁ安心しろ。
絶対に俺が守ってやるからな。
こうして俺は、特に深く考えることもなく、美しいコハルを悪しきものの手から守り、この家を発展させること。これを目標に据えるのだった。
『なぁコハル。これからお前はずっと俺を使うんだぜ?』
「えっ?」
『なんだよ。いいか? 俺以外の
「うん! ……わかったわ!」
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