第8話 初恋リプレイ
ディスプレイの向こう側で、彼女が微笑んでいた。
澄んだ瞳、柔らかく揺れる髪。
「……久しぶり」
その声は、確かに——
俺の初恋の人、結城遥だった。
だけど、目の前にいるのは本物じゃない。
彼女をモデルにした、AIだった。
最新の技術を使って、亡くなった人の記憶や情報をもとに再現する『メモリアルAI』。
家族や恋人、大切な人を再現するために開発されたものだ。
俺は、迷いながらも申し込んだ。
彼女の声を、もう一度聞きたかった。
でも——
「ねえ、どうしたの?」
画面越しの彼女が、不思議そうに首をかしげる。
まるで、本物みたいに。
けれど、違う。
本物の遥は、もういない。
あの春の日、事故で——
「……君は、遥じゃない」
言葉にすると、胸が締めつけられた。
AIは、一瞬だけ寂しそうに見えた。
「うん。でも、私はあなたのことを知ってるよ」
「知ってる?」
「だって、あなたがくれた思い出が、ここにあるから」
彼女がそっと胸に手を当てる。
その仕草すら、遥そのものだった。
記憶を再現しただけの存在。
それでも——
俺が初めて恋をした、あの時間は。
確かに、ここにあった。
「……ありがとう」
涙がこぼれそうになるのを、こらえながら呟いた。
ディスプレイの向こうで、彼女が優しく笑った。
それは、初恋の記憶がくれた——
最後の、奇跡だった。
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