第7話 消えた文化祭の願い
秋の空に、風が吹き抜ける。
校庭の片隅で、俺はスコップを握りしめていた。
ここにあるはずなんだ。
——三年前。
文化祭の最後に、クラスのみんなでタイムカプセルを埋めた。
未来の自分たちに宛てた手紙や、思い出の品を詰め込んで。
「三年後、みんなで掘り返そうな!」
あの日、そう誓い合った。
なのに——
今年の文化祭の日。
掘り返そうとしたら、カプセルが消えていた。
「誰かが持ち去ったのか?」
「先生が撤去しちゃったんじゃ……?」
みんながざわついた。
でも、俺は諦めきれなかった。
だって、あの中には——
俺の、大切な想いが詰まっていたから。
タイムカプセルに入れた手紙。
そこには、ずっと言えなかった言葉を書いた。
『ずっと好きでした』
同じクラスだった、彩花へ。
だけど、彼女は卒業と同時に遠くへ引っ越してしまった。
もう、会うことはないかもしれない。
だからこそ、せめてこの手紙を——
未来の俺が、覚えていてくれればいいと思った。
なのに、肝心のカプセルが消えた。
諦めずに、俺は掘り続ける。
そして、ついに。
スコップが何かに当たる感触。
「……あった!」
土を払うと、錆びた缶が顔を出した。
開けると、中にはみんなの手紙が詰まっていた。
そして——俺の手紙も。
だけど。
その横に、一枚の便せんが入っていた。
『手紙、読んだよ。ありがとう。私も——』
そこまで書かれた文字。
でも、その先は、滲んで読めない。
「……彩花?」
彼女が、これを読んだ?
でも、どうやって?
答えはわからない。
ただ、一つ確かなこと。
あの日の俺の想いは——
ちゃんと届いていた。
秋風が、静かに吹き抜ける。
文化祭のざわめきの中で、俺はそっと空を見上げた。
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