第31話 ライバル組織登場!? 買取業者 vs ギルド農協
🧭 導入の書:その男、風のように現る
「ギルドなんて、もう古い。
今は“早い者が勝つ”、それが市場ってもんさ」
軽薄な笑みとともに現れたのは、民間流通組織〈ザ・マーケットリンク〉の営業主任・スヴィン。
魔導馬車で鮮度即納、価格はギルドより高め。さらに契約も自由裁量――
農家にとって魅力的な条件を並べ立て、ギルド農協の契約農家を次々と奪っていった。
「自由に売りたい」「高く買ってくれる」――
農家の“正直な声”が、ギルドの理念を脅かす。
🌾 本章:信頼と効率の綱引きの記録
「……また一件、解約か」
風間は静かに報告書を見つめた。
ここ1ヶ月で、アースル支部の契約農家数が10%以上減少していた。
一方、マーケットリンクの勢力は急拡大中。
・全自動価格査定魔道具による即時見積もり
・収穫日当日に引き取り・即金払い
・作物のサイズや規格を問わない独自流通網
確かに“魅力的”だった。
だが風間は、こうも感じていた。
「速すぎる取引には、“想い”が残らない気がするんだよな……」
*
そんな中、ある小規模農家・ロナが風間を訪ねてきた。
「うちはギルドの規格に合わないって言われてきたけど、
マーケットリンクは“味だけでいい”って……どうすれば……」
風間はしばらく黙った後、答えた。
「君の野菜は、甘さが出るのに少し時間がかかる。
でも、それを“待てる”市場を、俺たちはつくってきたつもりだ。
――もう一度、“誰に食べてほしいか”考えてみてくれないか」
*
風間は対抗策として、“農家直営型小規模市”プロジェクトを立ち上げた。
・規格外品を「味重視商品」として販売
・小ロットの個性野菜を“顔が見える直販形式”で流通
・村の子どもたちによる収穫エピソードを添えた“物語付きラベル”
少量・高品質・温度あり。
スピードや価格では敵わないが、“関係性”では負けなかった。
その市に並んだロナの野菜は、王都のレストランバイヤーの目に留まり、
「この味、いつもの流通品と違うな」と高評価を得た。
🌱 収穫のひとこと
速さだけが価値じゃない。
“誰が、どんな想いで作ったか”――それを運ぶのが、農協の仕事だ。
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