第14話 農協ギルドから融資を受けるか、自力で頑張るか
🧭 導入の書:この物語のはじまりに
「借りたら、負けだと思ってるんです」
そう言い張るのは、若き農家・クレア。
今年の春、天候魔害で収穫が半減。ギルドの緊急支援融資の対象となったが、彼女は首を縦に振らなかった。
そんな彼女に、ギルド職員・風間は問いかける。
“借りない強さ”とは何か――“借りる覚悟”とは何か――
🌾 本章:農地に立つ者たちの記録
「うちは大丈夫です。来年も、自分でやります」
畑の隅で、クレアはきっぱりと言った。
彼女はまだ25歳。祖父から受け継いだ小さな農地を一人で守っている。
ギルドが提示したのは、返済猶予3年の“魔道資本融資”。
新しい灌漑魔具を入れれば、来年の収量回復も見込める――
それでも、クレアは頑なだった。
「ギルドの融資って、便利すぎるんです。
でも、使ったら最後、自分の農業じゃなくなる気がして」
俺は思わず聞き返した。
「“自分の農業”って、どんな農業ですか?」
クレアは答えなかった。
*
翌日、風間はギルド内でクレアの“資本管理履歴”を調べた。
すると、出てきたのは「補助金・融資ゼロで5年連続黒字」という記録。
「……この人、本当に、独力でやってきたんだな」
だが、同時に現れた赤い警告マーク。
《慢性的な労働過負荷/病気リスク極大》――
「これじゃ、農業は続いても、“農家”が潰れる」
*
その週末、風間は再び畑を訪ねた。
「来年も、このままなら――正直、倒れると思います」
「……わかってます。でも、借りるって……
誰かに頭を下げるってことですよね。
“やっていけてない”って、自分で認めることですよね」
「クレアさん。融資って、“失敗の証”じゃなくて、
“続けるための決断”ですよ」
「……え?」
「たとえば、作物が水を欲しがってるとき、
あなたは“乾いたまま我慢しろ”って言いますか?」
「――言いません。水をやります」
「じゃあ、人間も同じです。必要な時に支える。それが農業ギルドです」
クレアは、ふっと笑った。
「……じゃあ、その水、借りてみますか」
*
数ヶ月後。新しい魔法灌漑線が引かれた畑に、クレアの姿があった。
「風間さん。あの時、貸してくれたのは――金じゃなくて、“選択肢”だったんですね」
「“続ける農業”のための、選択肢です」
風にそよぐ若葉の音が、やけに静かに、まっすぐに届いた。
🌱 収穫のひとこと
借りることは、負けじゃない。
助けを求めることは、弱さじゃない。
それは、“続ける覚悟”を持った者だけが選べる、強さなんだ。
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