第5話 穀物倉庫に魔物の巣!緊急対応クエスト発令

🧭 導入の書:この物語のはじまりに

収穫されたばかりの穀物を保管する、ギルド指定の大型倉庫。

だがその内部で、穀物が“腐り”“動き”“鳴き始めた”との通報が入る。

調査に向かった農協職員・風間が見たのは、穀物に寄生して巣を作る“魔属虫”の巣窟だった――

輸送ルート、物流、そして食の安全を守るため、今、封鎖と殲滅のクエストが始まる。


🌾 本章:農地に立つ者たちの記録

「中から……音がするんです。

バサバサって、羽音みたいな……あと、何かが、喋ってる……みたいな……」


倉庫管理員の声は、震えていた。


ここはアースル地方最大の保管倉庫。王都に向けて出荷されるコメ系作物キリグミ穀が、毎年数十トン単位で保管されている。


「……入るしかないですね。魔物が繁殖してるなら、食害どころか疫病の可能性もある」


俺はギルド農協の防疫チームから《害虫感知石》と《対魔胞子マスク》を借り、倉庫内へと足を踏み入れた。



異臭。


鼻を突くのは、発酵とも腐敗ともつかない、ぬめっとしたにおい。


「風間さん……見てください……!」


穀物袋が破られ、中身が蠢いている。

その上に群がっていたのは――小型の羽根虫ウジュリア。ダンジョン由来の魔属虫で、穀物に寄生し、群体で知性を持つ。


「ウジョ、ウジョ、マモレ、ココハ、ワレラノクラ……」


うわ、喋ってる。しかも低レベルの言語魔法を使ってくる個体もいる。


「……あんたらの“巣”にした覚えはないんだがな」


俺は《虫避け火晶石》を倉庫の四隅に設置。火ではなく“魔力熱”を発し、魔属虫の繁殖を抑制する。


「応援部隊が来るまで、時間を稼がないと……!」



襲い来る虫たちを、備え付けの魔除スプレーとハエ叩き(強化済)で迎撃。

人間一人と、数百匹の虫との戦い。異世界って、やっぱバカだと思う。


それでもなんとか時間を稼ぎ、ギルド防衛班が到着。

倉庫内は結界封鎖され、残った虫は“集団駆除結界”で一網打尽にされた。


……だが。


「風間さん……倉庫の半分、使用不能です……」


《ウジュリア》が産卵していた区画の穀物は、すべて廃棄対象。

被害は大きかった。



「原因は……?」


「裏山の魔晶岩採掘です。地中魔力のバランスが崩れて、虫が地上に這い出した可能性が」


俺はそれを聞いて、苦笑した。


「つまり、また“人間側の都合”ってわけだな」


俺たちは、自然と共存して農業をしているようで――実際は、常に均衡の上に立ってるだけなんだ。



数日後。防疫と清掃が完了した倉庫の片隅に、ルッカが立っていた。


「風間さん。虫、苦手だったんじゃないんですか?」


「うん、まあ……苦手だよ。

でも、虫より怖いのは――『誰も気づかなかった』って事実だろ」


どこかで誰かが気づき、動かなきゃ。

農業を守るってのは、そういうことだと思ってる。


🌱 収穫のひとこと

畑の外にも、戦いはある。

倉庫の中でも、食は生きてる。

守るべきものは、目に見える作物だけじゃない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る