第5話 穀物倉庫に魔物の巣!緊急対応クエスト発令
🧭 導入の書:この物語のはじまりに
収穫されたばかりの穀物を保管する、ギルド指定の大型倉庫。
だがその内部で、穀物が“腐り”“動き”“鳴き始めた”との通報が入る。
調査に向かった農協職員・風間が見たのは、穀物に寄生して巣を作る“魔属虫”の巣窟だった――
輸送ルート、物流、そして食の安全を守るため、今、封鎖と殲滅のクエストが始まる。
🌾 本章:農地に立つ者たちの記録
「中から……音がするんです。
バサバサって、羽音みたいな……あと、何かが、喋ってる……みたいな……」
倉庫管理員の声は、震えていた。
ここはアースル地方最大の保管倉庫。王都に向けて出荷されるコメ
「……入るしかないですね。魔物が繁殖してるなら、食害どころか疫病の可能性もある」
俺はギルド農協の防疫チームから《害虫感知石》と《対魔胞子マスク》を借り、倉庫内へと足を踏み入れた。
*
異臭。
鼻を突くのは、発酵とも腐敗ともつかない、ぬめっとしたにおい。
「風間さん……見てください……!」
穀物袋が破られ、中身が蠢いている。
その上に群がっていたのは――小型の
「ウジョ、ウジョ、マモレ、ココハ、ワレラノクラ……」
うわ、喋ってる。しかも低レベルの言語魔法を使ってくる個体もいる。
「……あんたらの“巣”にした覚えはないんだがな」
俺は《虫避け火晶石》を倉庫の四隅に設置。火ではなく“魔力熱”を発し、魔属虫の繁殖を抑制する。
「応援部隊が来るまで、時間を稼がないと……!」
*
襲い来る虫たちを、備え付けの魔除スプレーとハエ叩き(強化済)で迎撃。
人間一人と、数百匹の虫との戦い。異世界って、やっぱバカだと思う。
それでもなんとか時間を稼ぎ、ギルド防衛班が到着。
倉庫内は結界封鎖され、残った虫は“集団駆除結界”で一網打尽にされた。
……だが。
「風間さん……倉庫の半分、使用不能です……」
《ウジュリア》が産卵していた区画の穀物は、すべて廃棄対象。
被害は大きかった。
*
「原因は……?」
「裏山の魔晶岩採掘です。地中魔力のバランスが崩れて、虫が地上に這い出した可能性が」
俺はそれを聞いて、苦笑した。
「つまり、また“人間側の都合”ってわけだな」
俺たちは、自然と共存して農業をしているようで――実際は、常に均衡の上に立ってるだけなんだ。
*
数日後。防疫と清掃が完了した倉庫の片隅に、ルッカが立っていた。
「風間さん。虫、苦手だったんじゃないんですか?」
「うん、まあ……苦手だよ。
でも、虫より怖いのは――『誰も気づかなかった』って事実だろ」
どこかで誰かが気づき、動かなきゃ。
農業を守るってのは、そういうことだと思ってる。
🌱 収穫のひとこと
畑の外にも、戦いはある。
倉庫の中でも、食は生きてる。
守るべきものは、目に見える作物だけじゃない。
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