第27話 ここは私の家ですよ。
1
校舎の周りに人が集まってきた。
屋上からなる衝撃波を聞いたらしい。
清水は、見て見ぬふりをしていた。
屋上に、何人かの先生が上がってきた。
「何やっとるんだ!!君たち!!」
先生は、河合と黒島に向かって叫んだ。
しかし、取り押さえようとする、先生たちを黒島と河合は振り払った。
「お兄ちゃん!!」
取り押さえられようとしながら、黒島は叫んだ。
「中元先生!!何をやっておられるんですか...」
「前途ある若者に、賛辞のを呈しております。」
「どう見てもバケモノですよ...警察!!警察!!」
通報しようとする先生たちの首の裏を、チョップして気絶させた。
「落ち着いてくださいよ。これのどこがバケモノなんですか...」
中元は倒れた先生たちに告げた。
「俺が、バケモノじゃないと?」
芳樹は、中元に問う。
「ええ。あなたはまだ間に合います。だからこうして、対話しているのですよ。間に合わなかったら、そこのイヤリングを使ってあなたを倒しているところです。」
「俺はこうして、怪人になったんですよ!!血反吐を吐く努力をして!!」
芳樹は中元に叫ぶが
「許してやりなさい。」
「え?」
「弱かったあの頃の自分。何もできなくて、動けなくて、惨めな思いをした自分を許してやりなさい!!」
「何を言ってるんだ!!俺は、弱い自分を認めたくなくて、ここまで強くなったんですよ。空手で一番強いと言われている高校に通って、無理な仕打ちに耐えながら2年も頑張った!!他の根性なしよりも努力を重ねたんだ!!」
芳樹は泣き叫びながら、連打していった。
「あなたが頑張ったことは、私も、そこにいる藍那さんも、阿部さんも、みんな知っています。でも、今のあなたは間違っています。無理に怪人にならされた私が言うのですから。もう自分を許してやるべきです。」
「俺は、これからどうやれば...」
「それが、知を探求するということです。さっきも言ったことをまた繰り返しますか?」
「いいえ、頭ではわかっています。」
「心で分かるまで、しっかりと、身に刻んでください。今から私があなたを解放します。じっとしてください。」
芳樹は、攻撃をやめて、じっと止まった。
「何をするんですか?」
中元は構えた。
「藍那、ありがとう!!」
「お兄ちゃん!!」
芳樹は無防備だった。
そして、中元は、芳樹に渾身の発勁を叩きこんだ。
すると、怪人と芳樹が分離した。
芳樹は力尽きたようにその場に倒れた。
そして、芳樹の体を離れた怪人は、砂になって消えた。
「どうしてですか?」
河合は中元に言った。
「彼は、ラジット教に完全に洗脳された訳ではないので、もしかしたら、救うチャンスがあるんじゃないかと思いました。他の人は、イヤリングの力を使ってでも、倒すしかなかったんですがね。」
藍那は芳樹を泣きながら抱擁していた。
2
ラジット商会は、中元碧清を、要注意人物として、偵察衛星で監視をしていた。
すると、屋上で、中元と黒島芳樹が戦っている映像が届いたのだ。
ラジットたちは衝撃の瞬間を目の当たりにした。
「黒島芳樹の洗脳を...?」
ラジットは、日本支部の坂口に連絡を取った。
「ミスター坂口。さっき送った映像を見たか?」
「ええ。あの、黒島芳樹の変身をスーツの男が、分離させた映像ですね。」
「そうだ。黒島はラジットの考えに心酔していたんだよな。」
「ええ。指示通りのことは全て致しました。彼には、空手の才能があるから、聖水を飲ませて、目が開くのを待つだけだと。」
「何が起こったんだ...あの中元とやら....もう一度、中元とコンタクトを取るしかないな。あの時の雪辱を果たさなければ。」
ラジットは、持っていたマグカップを壊した。
3
芳樹は、病院に入院した。
生徒たちは、騒いでいたが、教師たちが、体育大会の準備を催促した。
文句を言いながらも、準備を進め、時間通りにそれを終わらせた。
屋上では、気を失った先生がいた。
「何で屋上で寝ているんだ?」
直前の記憶がないらしい。
穴だらけの屋上で、寝ていたのだ。
「気が付きましたか、先生。」
「中元先生...私は何でここで寝ているのかね?」
「さあ?垂れ幕を下ろすのを3階からにするか、屋上からにするかで迷って、寝抽象で倒れたんじゃないですか?」
「そうか...で、何で穴だらけなのかね?」
「知りません。元からこんな感じじゃありませんでした?」
「柵が穴だらけじゃないか!!」」
「修理すればいいじゃないですか。それより見てくださいよ。グラウンドを。」
「おお。ここから見れば、生徒たちはよく頑張ってるじゃないか。」
「一人一人に注目すれば、問題も出てきますが、調和としては、上手く行ってると思いますよ。」
「そうですね....で、何で中元先生はここに?」
「ここは、私の家ですよ。」
「勝手に家にしないでください。」
4
放課後
河合と黒島は、部活だ。
体育大会の準備があったのにもかかわらず、河合は全力疾走だった。
しかし、いつもなら、追いつくボールが追いつかなくなっていた。
疲れているからだろうか。
中元の声が脳裏によぎる。
しかし、今日見たように、洗脳されていなければ、怪人になることはないのだろうか...
河合は自分の力を過信せずに今日も全力でプレイしようと決めたのだ。
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