第11話 狙う者たち

 日本から遠く離れた異国の地。

 地下のようなところで、スーツを着た者たちが、パソコンに向かって、何かを打っていた。

 画面には、地図が表示されていた。

 GPSだ。

 そこに、日本がマップされている。

 しかし、正確な位置がつかめないらしい。

「清水からの報告は?」

 ひげを生やしたエジプト人の男が、作業しているものに向かって話しかけた。

「現在、イヤリングの場所を突き止めたとのことです。」

「そうか。しかし、なぜ、すぐに、取り返さない?」

「分かりません。」

「あいつには、一つ容疑がかかっているんだ。裏切者は絶対に許してはならぬ。他の密使たちは?」

「すでに、何人かやられています。」

「誰に?」

「中元碧清と言う男です。」

「そうか...日本では、あまり派手な動きは取れない。しかし、そうも言ってられなくなった。進化の日が近づいているからな。」

「はい。」

 男はそう言ってコーヒーを飲んだ。

 体育大会まで2週間を切った。

 夏休み前から、着々と準備を進めてきたのだ。

 ダンスも徐々に形になってきた。

 しかし、やる気のないやつもまだいた。

 特に男子である。

 気怠そうに踊るのがかっこいいと思っているのか...

 と、河合は心の中で漏らした。

 河合は行事ごとになると熱中するタイプだった。

 普段からその熱量で勉強すればいいのに、と、黒島達から言われる。

 しかし、自分が輝けるのは、運動だけなのだと、河合は思った。

 だから、絶対に失敗したくなかった。

 河合は全力で何度も踊った。

 周りの目を気にせず、男子の鼻の下を延ばした顔も気にせず、踊った。

 他の女子もそうなのだが、果実が動くたびに、男子の目線はそちらに動く。

 しかし、そんなことを気にしても仕方がないと、河合は思った。

 晴天の日も雨天の日も、毎回全力で踊る

 体は徐々に、回復が追い付かなくなってきた。

 疲労がたまる一方である

 体育大会が近づくにつれて、体育の頻度が一時的に増えるからだ。

 曲のリズムに合わせてアクティブに踊っていく。

 河合はそこで全力を尽くすせいで、そのあとの授業はずっと寝ているのであった。

 体育の後は、社会だった。

 中元の授業である。

 しかし、寝ている河合を見ても、中元は何も言わなかった。

 そして、授業が終わり、中元は河合に近づいた。

「河合さん。」

 普段どんだけ叩かれて起こされようとも、なかなか起きない河合であったが、中元が一声かけただけで起きた。

 周囲の者は、ざわついた。

「どんな魔法使ったんだ?」

 河合は眠たそうな顔で、中元を見た。

「今日のノートを黒島さんに見せてあげてください。河合さん仲良かったですよね?」

 それを言われてハッとした。

 呑気に寝ている場合ではなかったのだ。

「何で起こしてくれなかったんですか?」

 河合は中元に叫ぶが

「ものすごく疲れていそうだったので。」

 そう言って中元は教室を去った。

 河合は、友達にノートを写させてもらった。

 昼休み。

 この日の中元は珍しく、社会科準備室にいた。

 清水は、あれから、なかなか接触してこない。

 何かあったのだろうか。

 中元が推察するに、今は動けない理由があるのだ。

 あれだけ、派手に動き回りながら、なぜ、今になってそれをやめたのか...

 分からない。

 それを、やれば何かまずいことがあるのだろう。

 そういえば、連中に関しても変だった。

 なぜ、今になって、怪物をよこしてきたのだろうか...

 何かを恐れているのか?

 早急に、イヤリングを回収しないと何かまずいことがあるんじゃないか?

 中元は思考を巡らしていく。

 あらゆる歴史書に目を通していくが、その答えは見つからなかった。

 しかし、変に古びた本に、その答えを見つけた。

「なんだ?預言書か?」

 やけに、古い字体だった。

 しかし、本に使われている紙は、比較的新しいものだった。

「11/24、進化の日?」

 中元は、穴が開くくらいその本を眺めた。

 とある古物商は、部下たちに土下座をさせていた。

「例のイヤリングを追って、何年経ちますか?」

 男は高価なスーツを身に着けていた。

「もう、6年になるかと...」

「そう...6年です。まあ、価値と言うものは、日に日に増していくのですから、構わないのですが、問題は、それを他の者に横取りされるということです。」

「はい...」

「その、例の少女...何度もさらおうとしましたよね。」

「はい...」

「そこですよ。頑固なばあさん、じゃなくて、少女がそれを持っているのですよ。あの貴重なものを。豚に真珠じゃないですか。」

「はい。」

「あそこの親子関係は?」

「テキストでやり取りするだけで、普段は会話をしないそうです。」

「そうですか...日本は何て動きにくい国なんでしょうね。」

 男はとあるものに電話をした。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る