第11話 狙う者たち
1
日本から遠く離れた異国の地。
地下のようなところで、スーツを着た者たちが、パソコンに向かって、何かを打っていた。
画面には、地図が表示されていた。
GPSだ。
そこに、日本がマップされている。
しかし、正確な位置がつかめないらしい。
「清水からの報告は?」
ひげを生やしたエジプト人の男が、作業しているものに向かって話しかけた。
「現在、イヤリングの場所を突き止めたとのことです。」
「そうか。しかし、なぜ、すぐに、取り返さない?」
「分かりません。」
「あいつには、一つ容疑がかかっているんだ。裏切者は絶対に許してはならぬ。他の密使たちは?」
「すでに、何人かやられています。」
「誰に?」
「中元碧清と言う男です。」
「そうか...日本では、あまり派手な動きは取れない。しかし、そうも言ってられなくなった。進化の日が近づいているからな。」
「はい。」
男はそう言ってコーヒーを飲んだ。
2
体育大会まで2週間を切った。
夏休み前から、着々と準備を進めてきたのだ。
ダンスも徐々に形になってきた。
しかし、やる気のないやつもまだいた。
特に男子である。
気怠そうに踊るのがかっこいいと思っているのか...
と、河合は心の中で漏らした。
河合は行事ごとになると熱中するタイプだった。
普段からその熱量で勉強すればいいのに、と、黒島達から言われる。
しかし、自分が輝けるのは、運動だけなのだと、河合は思った。
だから、絶対に失敗したくなかった。
河合は全力で何度も踊った。
周りの目を気にせず、男子の鼻の下を延ばした顔も気にせず、踊った。
他の女子もそうなのだが、果実が動くたびに、男子の目線はそちらに動く。
しかし、そんなことを気にしても仕方がないと、河合は思った。
晴天の日も雨天の日も、毎回全力で踊る
体は徐々に、回復が追い付かなくなってきた。
疲労がたまる一方である
体育大会が近づくにつれて、体育の頻度が一時的に増えるからだ。
曲のリズムに合わせてアクティブに踊っていく。
河合はそこで全力を尽くすせいで、そのあとの授業はずっと寝ているのであった。
3
体育の後は、社会だった。
中元の授業である。
しかし、寝ている河合を見ても、中元は何も言わなかった。
そして、授業が終わり、中元は河合に近づいた。
「河合さん。」
普段どんだけ叩かれて起こされようとも、なかなか起きない河合であったが、中元が一声かけただけで起きた。
周囲の者は、ざわついた。
「どんな魔法使ったんだ?」
河合は眠たそうな顔で、中元を見た。
「今日のノートを黒島さんに見せてあげてください。河合さん仲良かったですよね?」
それを言われてハッとした。
呑気に寝ている場合ではなかったのだ。
「何で起こしてくれなかったんですか?」
河合は中元に叫ぶが
「ものすごく疲れていそうだったので。」
そう言って中元は教室を去った。
河合は、友達にノートを写させてもらった。
4
昼休み。
この日の中元は珍しく、社会科準備室にいた。
清水は、あれから、なかなか接触してこない。
何かあったのだろうか。
中元が推察するに、今は動けない理由があるのだ。
あれだけ、派手に動き回りながら、なぜ、今になってそれをやめたのか...
分からない。
それを、やれば何かまずいことがあるのだろう。
そういえば、連中に関しても変だった。
なぜ、今になって、怪物をよこしてきたのだろうか...
何かを恐れているのか?
早急に、イヤリングを回収しないと何かまずいことがあるんじゃないか?
中元は思考を巡らしていく。
あらゆる歴史書に目を通していくが、その答えは見つからなかった。
しかし、変に古びた本に、その答えを見つけた。
「なんだ?預言書か?」
やけに、古い字体だった。
しかし、本に使われている紙は、比較的新しいものだった。
「11/24、進化の日?」
中元は、穴が開くくらいその本を眺めた。
5
とある古物商は、部下たちに土下座をさせていた。
「例のイヤリングを追って、何年経ちますか?」
男は高価なスーツを身に着けていた。
「もう、6年になるかと...」
「そう...6年です。まあ、価値と言うものは、日に日に増していくのですから、構わないのですが、問題は、それを他の者に横取りされるということです。」
「はい...」
「その、例の少女...何度もさらおうとしましたよね。」
「はい...」
「そこですよ。頑固なばあさん、じゃなくて、少女がそれを持っているのですよ。あの貴重なものを。豚に真珠じゃないですか。」
「はい。」
「あそこの親子関係は?」
「テキストでやり取りするだけで、普段は会話をしないそうです。」
「そうですか...日本は何て動きにくい国なんでしょうね。」
男はとあるものに電話をした。
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