第10話 口封じ
1
清水は、放課後学校に残っている生徒に、異形の姿を見られたのだ。
「思ったより、生徒の人数が多いですねえ。」
生徒だけでなく、教師にも目撃されたのだ。
今は、姿を変えるわけにはいかない。
しかし、生徒たちは格好から、清水であることを見抜いていた。
「何やってんだ、清水先生...」
清水は、手を校舎につけ、ボルダリングのように登り始めたのだ。
顔は蛇、手は、ワニのような形、尻尾も生えていた。
しかし、体を覆う布は清水の普段着だった。
清水は、鍵のかかっている、窓を無理やり開けた。
清水が生徒たちをにらむと、生徒たちは一瞬で石化した。
それを、清水は次々と砕いていった。
「さて、次はだれが見たのかな。」
清水は教室をで、廊下を歩きだした。
ぺた、ぺた、ぺた、と足音が鳴る。
屋上から落下した際、靴はもう使い物になっていなかったのだ。
生徒たちは危機を察して、教室のどこかに逃げていた。
だが、清水は獣の嗅覚でそれを察知し、生徒たちを石化させ、粉々にした。
「ち。こんなところで能力を使いたくなかったのだが...」
清水の目的は、中元から、河合の居場所を聞き出したうえで、中元を消すことだった。
しかし、中元はその前に逃げたのだ。
「中元!出てこい!」
中元は出てこなかった。
2
中元は清水を、屋上から落とした後、すぐさま病院に向かった。
清水が生徒たちを襲うことは分かっていたが、河合のゴールデンイヤリングの救出が先である。
清水を落としたのはグラウンド側だ。
中元は、裏庭側から、脱出することを決めた。
3
河合は朝から、夕方まで、黒島のそばにずっといたのだ。
そして、数分後慌てた様子の、中元が病室に入ってきた。
「君たちのところにもうすぐ、清水先生がやってきます。理由はそのゴールデンイヤリングを狙うためです。」
中元は、これまでのことを、話した。
「じゃあ、校舎側にいた人は...」
「ええ。ほとんどやられているでしょう。今日は、小野君のこともあって、猛暑日は、運動部は活動中止ですからね...」
中元は河合に催促した。
「あとで、ちゃんと返します。すいません。大切なイヤリングを何度も。」
「い、いえ...」
中元は窓から出ようとしたが、
緑の影は病院をよじ登っていた。
患者たちは悲鳴を上げている。
中元は、耳にイヤリングをセットした。
そして、窓から飛び降りた。
清水は、中元を蛇の目で見たが、中元は石化しなかった。
中元は、清水の頭を空中でとらえ、壁から引きはがした。
そして、地面に落下させた。
「並の人間なら、石化するのですが、あなたはそこまでのパワーを引き出しているのですね。」
黄金の鎧に包まれている、中元は、清水に攻撃した。
しかし、清水には当たらなかった。
途中で清水は消えたのだ。
「驚いたでしょう?私が突然消えたことに。」
中元は、清水に体を打たれた。
見えない攻撃だ。
ボディーブローを次々と重いパンチを決めていく。
装甲がボロボロになっていった。
「そろそろ、石化できますかね。」
清水は、蛇の目で、睨んだ。
しかし、清水はその瞬間に姿を現して倒れていた。
すると、清水の後ろに男が立っていた。
阿部俊三である。
「なんだ、中元じゃねえか。」
姿が変わった、中元を見てそう言った。
「何してらっしゃるんですか?」
「そりゃあ、弟子の見舞いだよ。」
清水は立ち上がった。
「邪魔しないでください!!」
清水は阿部を蛇の目で睨むが、効かなかった。
阿部は、廻し受けをしていたのだ。
「いきなりびっくりするじゃねえか。」
阿部は、清水の股間を蹴り上げた。
「ぎゃああああああ!!」
阿部は病院の入口に行った。
清水は股間を抑えて悶えていた。
「今日のところは引き揚げます。」
清水は透明になって消えた。
4
翌朝、教室から大量の人間が消えていた。
教師は外にいたものがほとんどだったので、消えたのは数人だった。
清水は、何事もなかったように教室に来ていた。
記憶の改竄だろうか...
違和感を持っていたのは、中元と河合だけだった。
清水は、河合と黒島に接触してこなかった。
今日は黒島がいない中、学校に来て授業を受けていた。
黒島と違って成績に余裕がないからだ。
一年の時は、英語の点数が16点しか取れなかった。
6限を終え、放課後は、部活を行った。
今日は少し気温が下がったそうだ。
10月に近づくにつれて、少しずつ気温が下がっていく。
もうすぐ体育大会だ。
夕日に照らされながら、テニスボールを打っていた。
日が沈むのも早くなっていく
秋分の日を境に、日が沈むのが早くなっていくのだ。
後、1年もすれば、引退だ。
河合は黒島のことを思いながら、汗を流していった。
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