第10話 口封じ

 清水は、放課後学校に残っている生徒に、異形の姿を見られたのだ。

「思ったより、生徒の人数が多いですねえ。」

 生徒だけでなく、教師にも目撃されたのだ。

 今は、姿を変えるわけにはいかない。

 しかし、生徒たちは格好から、清水であることを見抜いていた。

「何やってんだ、清水先生...」

 清水は、手を校舎につけ、ボルダリングのように登り始めたのだ。

 顔は蛇、手は、ワニのような形、尻尾も生えていた。

 しかし、体を覆う布は清水の普段着だった。

 清水は、鍵のかかっている、窓を無理やり開けた。

 清水が生徒たちをにらむと、生徒たちは一瞬で石化した。

 それを、清水は次々と砕いていった。

「さて、次はだれが見たのかな。」

 清水は教室をで、廊下を歩きだした。

 ぺた、ぺた、ぺた、と足音が鳴る。

 屋上から落下した際、靴はもう使い物になっていなかったのだ。

 生徒たちは危機を察して、教室のどこかに逃げていた。

 だが、清水は獣の嗅覚でそれを察知し、生徒たちを石化させ、粉々にした。

「ち。こんなところで能力を使いたくなかったのだが...」

 清水の目的は、中元から、河合の居場所を聞き出したうえで、中元を消すことだった。

 しかし、中元はその前に逃げたのだ。

「中元!出てこい!」

 中元は出てこなかった。

 中元は清水を、屋上から落とした後、すぐさま病院に向かった。

 清水が生徒たちを襲うことは分かっていたが、河合のゴールデンイヤリングの救出が先である。

 清水を落としたのはグラウンド側だ。

 中元は、裏庭側から、脱出することを決めた。

 河合は朝から、夕方まで、黒島のそばにずっといたのだ。

 そして、数分後慌てた様子の、中元が病室に入ってきた。

「君たちのところにもうすぐ、清水先生がやってきます。理由はそのゴールデンイヤリングを狙うためです。」

 中元は、これまでのことを、話した。

「じゃあ、校舎側にいた人は...」

「ええ。ほとんどやられているでしょう。今日は、小野君のこともあって、猛暑日は、運動部は活動中止ですからね...」

 中元は河合に催促した。

「あとで、ちゃんと返します。すいません。大切なイヤリングを何度も。」

「い、いえ...」

 中元は窓から出ようとしたが、

 緑の影は病院をよじ登っていた。

 患者たちは悲鳴を上げている。

 中元は、耳にイヤリングをセットした。

 そして、窓から飛び降りた。

 清水は、中元を蛇の目で見たが、中元は石化しなかった。

 中元は、清水の頭を空中でとらえ、壁から引きはがした。

 そして、地面に落下させた。

「並の人間なら、石化するのですが、あなたはそこまでのパワーを引き出しているのですね。」

 黄金の鎧に包まれている、中元は、清水に攻撃した。

 しかし、清水には当たらなかった。

 途中で清水は消えたのだ。

「驚いたでしょう?私が突然消えたことに。」

 中元は、清水に体を打たれた。

 見えない攻撃だ。

 ボディーブローを次々と重いパンチを決めていく。

 装甲がボロボロになっていった。

「そろそろ、石化できますかね。」

 清水は、蛇の目で、睨んだ。

 しかし、清水はその瞬間に姿を現して倒れていた。

 すると、清水の後ろに男が立っていた。

 阿部俊三である。

「なんだ、中元じゃねえか。」

 姿が変わった、中元を見てそう言った。

「何してらっしゃるんですか?」

「そりゃあ、弟子の見舞いだよ。」

 清水は立ち上がった。

「邪魔しないでください!!」

 清水は阿部を蛇の目で睨むが、効かなかった。

 阿部は、廻し受けをしていたのだ。

「いきなりびっくりするじゃねえか。」

 阿部は、清水の股間を蹴り上げた。

「ぎゃああああああ!!」

 阿部は病院の入口に行った。

 清水は股間を抑えて悶えていた。

「今日のところは引き揚げます。」

 清水は透明になって消えた。

 翌朝、教室から大量の人間が消えていた。

 教師は外にいたものがほとんどだったので、消えたのは数人だった。

 清水は、何事もなかったように教室に来ていた。

 記憶の改竄だろうか...

 違和感を持っていたのは、中元と河合だけだった。

 清水は、河合と黒島に接触してこなかった。

 今日は黒島がいない中、学校に来て授業を受けていた。

 黒島と違って成績に余裕がないからだ。

 一年の時は、英語の点数が16点しか取れなかった。

 6限を終え、放課後は、部活を行った。

 今日は少し気温が下がったそうだ。

 10月に近づくにつれて、少しずつ気温が下がっていく。

 もうすぐ体育大会だ。

 夕日に照らされながら、テニスボールを打っていた。

 日が沈むのも早くなっていく

 秋分の日を境に、日が沈むのが早くなっていくのだ。

 後、1年もすれば、引退だ。

 河合は黒島のことを思いながら、汗を流していった。

 

 

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