33 わらしべ長者の珍道中
むかしむかし。
とても貧しいが、なぜか妙に前向きな青年がおりました。
彼の口癖は——
「まぁ、なんとかなるっしょ!」
という、根拠ゼロの楽観主義です。
ある日、お寺で拝んでいたら和尚さんにこう言われました。
「そなた、なにかひとつだけ持って旅に出よ。 それを大切にすれば、きっと大きな福になるじゃろう。」
青年は帰り道で転び、手にワラが一本ひっかかりました。
「あ、これでいっか」
そんな感じで旅がはじまります。
青年がワラを振り回して歩いていると、ハエが寄ってきて止まりました。
すると農家の女将さんが「まあまあ、ハエまで手なずけるなんて! お主ただ者じゃないね!」と感心し、
なんとそのハエをお菓子(謎のグミキャンディー)と交換してくれました。
青年は言いました。
「いや、手なずけてはいないっす。ただ止まっただけっす。」
ひもじい青年はすぐに食べようとしましたが、通りすがりの子どもが泣きながらあんドーナツを差し出して言いました。
「お母さんに落としたって怒られるの! 交換して!」
そこで青年は菓子(動物型グミキャンディー)を差し出しました。
子どもは大歓喜。
「すごい! 動くおやつだ!」
青年は(それは違う)と思いつつ、ドーナツを手に入れました。
青年がドーナツを持って歩いていると、ニワトリが全速力で突進してきました。
「コケーーーッ!!」
完全に奪う気満々です。
そこへ飼い主のおばあさんが登場。
「そのあんドーナツ欲しさに家出してしもうてねぇ……返してくれてありがとう!」
礼にと、おばあさんはそのニワトリをなぜか譲ってくれました。
青年はとりあえず受け取ることにしました。
ニワトリを連れて歩く青年に、武士らしき男が声をかけました。
「拙者、そのニワトリをずっと探しておった! 拙者の妻が“コケコッコーがないと朝起きられぬ”などと訳のわからんことを申してな!」
青年が引き渡すと、武士は深々と頭を下げ、こう続けました。
「礼に、我が家を丸ごとくれてしんぜよう。」
青年は叫びました。
「いや武士の家もらっても困るんですけど!? てか奥方どうやって住むの!?」
すると武士は言いました。
「明日からお寺に住むそうだ」
「どうして!?」
こうして、妙な偶然で家一軒を手に入れた青年。
しかし住みついてみると、押し入れから毎晩「コケ……コケ……」と謎の声が。
青年がそっとふすまを開けると——
あのニワトリがちゃっかり住みついていたのでした。
青年は肩をすくめて笑いました。
「ま、なんとかなるっしょ!」
そして本当に“なんとかなってしまう”のが、この男のすごいところ。
こうしてワラ1本から始まったドタバタ人生は、ふすまの奥にいるニワトリを見守りながら、
珍道中はまだまだ続いていくのでした。
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