マグリット流小説構成といった感じでおもしろいです。解説まで読ませて頂いて楽しめました。
哲学的な示唆も興味深く、ミステリーを紐解く要素もおもしろく、また知らずとも偶発的に正しい助言をしているという構成も驚きがありました。
だからこそもう少しヒントを頂きたかったなという気持ちもあります。解説読まずに物語の中で全員とは言わずともしっかり読み込んだ人には伝わるようなフリが物語の序盤にあると嬉しいかなと感じました。
ただ最初にマグリット流と言ったように、テーマを鑑みると理解されないこと自体が目的のようにも感じます。他者の観測をもって自己を認識できるのであれば私のような本文だけを読んで正しく理解できなかったというリアクションがあってはじめてこの物語が完成するという認識も成り立つ気がします。その場合私は物語の外側にいるのですがそういった形もおもしろいです。
何が言いたいのか私の中でも漠然としてきましたので具体化します。簡単に手段で言うととにかく振り切るべきなのかもという気がしました。エンタメに振り切るなら本文冒頭に解説で書かれている内容の示唆を置いて読者にはじめに十分な手がかりを与える、またはより内的振り切るなら本文まったくこのままで解説をやめて理解できない観測者をそのままにして哲学的完成をとるか。
またはある種の矛盾を強調するべきなのかもとも感じました。本文をもっと難解にして、そこにこれでもかと緻密で詳細な解説をつける。そうすることで哲学的な示唆を自ら打ち壊し矛盾を強烈に強調することで読者に焼き付けて、その混乱をいっそのことみんなで楽しむ形にする。
みたいな思い切りが必要なのかもと漠然と感じました。あれこれ申し訳ないです。今のままでも十分な完成しています。でもそのうえで独り善がりに語りたくなるような密度のある物語でした。おすすめです。