石焼き芋
人という字は、人と人とが、うんたら。
なんてことはなく。
人という字は、土の中に石があるから、二股なのだ。
大根ニンジンさつまいも。
スーパーなんかで見られるそれらは、どいつもこいつも、イケメン美人。
まっすぐしゃんと、綺麗な見た目。
けれどそれは、農家さんの努力の賜物。
ブスは間引かれ、ブサイクは規格外。
味や栄養。中身なんて関係ない。
売れる野菜は、見栄えが良い野菜。
人というのは、見のみ、見のまま、見た目で判断する。
はーあ。
おっといけない。
劣等感横断鉄道が暴走機関車。
話のレールから外れている。
「っっっきゃああああああああっっっっっ」
キングコングがエンパイア・ステート・ビルディングにスタンディング。
右手にむんずと、セクシーさつまいも。
ただ、この、セクシーさが、いけなかった。
少なくとも、中二には。
又根のまたに、また、根。
だんの、こんが、ぶらり途中下車の旅。
だんのこんがキングコングが、他の女子の悲鳴によって、これに気づく。
県大会決勝で、ハーフライン前からのブザービートを決めたという、ゴリラゴリラゴリラの豪速球。
きゅうきゅう、きゅうきゅう、き ゅ う
き ゅ う、き ゅ う
き ゅ う
き ゅ う
き ゅ
ゅ
ゅ
ゅ
ゅ
ゅ
一日千秋スローモーゾーン。
いや、これは。
死ぬ瞬間、周囲の景色が、ゆっっっくりに見えるってやつだ。
迫り来る、セクシーさつまいも。
剛腕からの豪速球が止まって見える。
球の棒がはっきりと見える。
眼前に、顔面に、完全に、芯をとらえた、フルスイング。
さつまいもの擬音といえば、ほくほくだが、生のさつまいもの擬音は、撲撲だ。石裂き芋だ。
あっ、そういえば、固いよね、いもけん、
「ぴっ」
薩摩示現流は一撃必殺。
これ、っがっ、芋剣。
ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっーーーーーーーー。
「このイモっ。生きてるんっ、だけどーっ」
私を指す言葉。
くすくすくすと、周囲のクラスメイトも私を嗤う。
くすくすの間に、ブス、とか、ブサ、とか、シネ、とか。
私を刺す言葉。
かさかさの心の柔らかい部分をぐさぐさと刺していく。
熱い。苦しい。
なのに、みんなは私を囲んで楽しそう。
私は、石焼き芋じゃないっ。
火の中で、弾ける。栗より上手い、十三里。
心拍を取り戻した私は、保健室のベッドの上。
良かった。全部、悪い、夢。
……じゃなかった。
枕元で、全裸のセクシー薩摩藩士が、タオルを硬く、絞っていた。
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