第二章:隣り合う君 第3話
よくある一人暮らしの1Kマンション。部屋の扉を開けると、君のいつものにおい。目の前に広がる部屋には君の好きなディズ〇ーのぬいぐるみたちが歓迎してくれる。女の子の部屋に初めて入った。違う世界に迷い込んだように僕は居場所を無くす。
「入って入って!!!」
「う、うん。お邪魔します。」
僕たちは手を洗い、さっそくカレー作りに取り掛かる。君はおもむろにエプロンを着始める。ただひとこと言わせてほしい。『かわいい。』心の中でこんなことを思ってしまう童貞な僕。こんなことを言ったらきっと笑われてしまうだろうな。
「似合う?」
「かわいい」
頭で駆け巡っていたことが声になって流れていく。
今何を言ってしまったのだろう。君のことを見ると僕でもわかってしまった。
「あ、あ、え、ありがとう、、。」
「い、いえ!こちらこそ、ありがとうございます、。」
僕の返す言葉はそんなにもおかしいのかな。君はいつも笑ってくれる。
「敦也くん、急にイケメンムーブするじゃん、。ひどーーーー。てかさ、、」
君は急に話を変え始める。どうしたのかな。少しだけその言葉に緊張する僕に君は天使の輪をかける。
「今日いつもよりかっこいいよね。なんか雰囲気も違うし、驚いちゃった。」
彼女に褒められた。かっこいいと。初めてだ。明日僕は花柳さんにどれだけの感謝を伝えたらいいのだろうか。そんなことを心に思うが、急な彼女の言葉に僕は声が出せない。固まる僕を見て、彼女は悪魔の姿を見せてくる。
「私に会うから?もしかして」
「そ、そうです。変ですよね。」
「ちがーーーーーーう!!!!!」
「すごくすごく嬉しい。ただのお買い物だよ。だけどね、私も敦也くんに会えるの楽しみで、すごく今日頑張ったの。だから敦也くんも楽しみだったことすごく嬉しくて。」
「僕もすごくすごく楽しみで緊張して、だけど頑張ってよかったって今思ってます。」
彼女が僕を見つめるその目には少しだけ涙が映っていた。
「さあ、やるよー!」
「玉ねぎ目に沁みますーーー泣」
「ほら気合い気合い!!頑張れ!」
「野菜切れました!」
「すごーーーい!お鍋そこにあるからだしてーー」
「任せてください」
「野菜から入れてーーー、」
君との楽しい時間がいつまでも続いてくれたらいいのにな。楽しいそんな気持ちがたくさん溢れてくる。
「敦也くんは料理するの?」
「僕は実家なのでいつも母がやってくれていて、自分ではあまり、、」
「え、じゃあ才能あるよ。とてもうまい切り方とかすごい上手!」
「いや、それは優梨さんの教え方が上手だからです。」
「えーー、照れちゃうよ。私天才だからね!師匠と呼びなさい!!」
「は、はい!師匠!」
「えへへへへ」
君の発する一音一音ぼくの心の奥の奥さらに深層に届いてくる。僕のこれまでの人生と今の僕。君に出会えたからかな。ただ今が幸せだ。この時間はいつまで続いてくれるのかな。
「できたーーーー!!!!!」
「おいしそうですね!!」
「たべよー!!!」
「食べましょう!というか、お米とかって、?」
「え、あ、、、、」
お米の準備を完全に忘れていた。君との時間に夢中で、カレーライスの命をどこかに置いてきた。
「僕、近くのコンビニでパックのお米買ってきます!待っててください。」
「だめ、一緒に行こ。で、デザート買おうよ。そしたら楽しみ増えるじゃん」
君はいつも僕の上を行く。いつだって僕のことを幸せにさせてくれる。こういうのって手を繋いで行くやつだよなとか思いながら少しだけ秋寒の街、手はポケットで進む。
「優梨さん、お米ですよ最初は」
君は真っ先にスイーツコーナーに走り始める。
「あちゃーー、きびしいんだからーーー、ぶーー」
少し不貞腐れた君の顔はどれだけフィルターをかけても消すことのできない可愛さを伝えてくる。
「だめです、最初はこっちです。後で一緒にみましょう。」
「うん!」
「敦也くんはこれにしてーーー、私はこれにする!」
「それ優梨さんがどっちも食べたいんでしょ。僕はこれがいいです!」
「えーーー、ひどいーーー。」
結局どっちも買う君。
帰り道僕たちに生まれたのは小っ恥ずかしさだった。
「ついたーーーー。お腹減ったね!食べよ!」
「う、うん、!」
『いただきます!』
「美味し!!!1番美味しいこれまでで!」
「めっちゃ美味いですね!僕もこれまでで1番です!」
「私たち天才だね♪」
「そうですね」
その後も君との会話は止まらない。君がおすすめのドラマランキングをしてくれた。ドラマに疎い僕。君はおもむろにテレビをつけて見せてくれる。恋愛ドラマでとても泣けるらしい。
再生して3秒君はもう大号泣。涙腺はもう壊れているらしい。
すっかり引き込まれてしまった。気づいたら3話が終わっていた。
「次みましょ!」
「待って待って、デザート持ってくる!」
すっかりのめり込んで気づいたら肩に温かいものを感じる。君が寝ている。あの時を思い出す。君と初めて話したあの日。あの日から始まった物語。君の寝顔はあの時みたいに小動物のように抱きしめたくなる可愛さをしている。
やらかした。すっかり夢中で彼女のことを全く考えてなかった。怒られたらもう呆れられてしまうよな。そんなことを思いながら君をソファーで横にさせて、毛布をかける。居場所のなくなった僕は部屋から出ようとしても出られない。テレビの明かりを消して部屋を見渡す。
「少しだけ借りるね。」
洗い物や片付けを済ませて君の前に戻る。ここじゃ寝られないな。怒られてしまいそうだ。そんなことを思いながら机に戻り、椅子に腰掛けながらそっと目を閉じる。
翌朝
「ぉはよー、ぉはよー、おはよー!!!おはよ!!!!!!!!!起きろーーー」
「は、はい!!!!!!!」
君の声で目が覚める。君の顔を見つめるとニコニコの笑顔で僕をみている。
「朝ごはんもうちょっとで出来るから準備して!」
トーストに目玉焼き、ソーセージにサラダ。よくある朝食メニューに安心する。
「敦也くん、目玉焼きには何をかける?」
「僕は塩コショウ派です。」
「え!一緒じゃん!私たち相性いいねえーーー」
「そうですね」
照れくさくなってしまう僕。そんな僕をみて君は追い打ちをかけてくる。
「嬉しいね。好きな子と一緒は。」
「ですね。」
「昨日気づいたら寝てたよね、ごめんね。あと敦也くん、君はスパダリだね」
「スパダリですか?」
「そー、スーパーダーリン!昨日ソファーで寝かせてくれたでしょ。起きた時ぬくぬくで起きられたの敦也くんだなーーって幸せ感じたよ。」
「そんなことないですよ。こちらこそ勝手に泊まってしまってごめんなさい。」
「ううん!いいの!!帰す気はあったからね!?最初からそんなことする人じゃないからね!?嫌いにならないでーーー泣」
君はマシンガンの口を開き僕に話してくれる。よかった。嫌われてなくて。
「さ!食べよっか!」
今日もまた一日が始まる。だけど今日はいつもと違うんだ。隣には君がいる。僕は君が好きです。心のノートに書いた文字はいつか花開く。だけどまだ閉まっておこう。
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