第二章 隣り合う君 第1話
「おはよう!!」
一件のLIMEの通知で目が覚める。君からの連絡が入っている。
「おはようございます!」
こんな経験初めてだ。気になっている人から連絡が来た。嬉しい。
「今日も学校?同じ電車乗れるかな!」
おいおい、どう言うことだ。昨日話すことができた彼女がこんなにも嬉しいことを言ってくる。
「いつもの電車に乗るつもりです。」
「待っててね。」
たった五文字が僕の一日の始まりを彩り始めた。
朝ごはんをかき込んで今日も行って来ます。
【次は星海丘、星海丘、、、】
君が乗ってくる。手を振る君と僕。
「おはよ!昨日ぶりだね。」
ニコニコの君。もうゼロ距離だよ。少し童顔な君の幼なげな笑顔とそれに似合わない身体。僕は目線が定まらず現在進行形で君をみられない。
「今日はね、発表なんだーーー。緊張しちゃってもーやだーーー。」
なんだか、クスッとなってしまった。隣にいる君は僕に色々な顔を見せてくれる。
「なんで笑うのーーー、、!」
ムスッとした表情に変わった。まずいまずいと思い、「ごめんね」の言葉を添える。
「ちがうーーー、応援して!!」
異性関係が全くない僕に彼女の要求がフルスロットル。ギアチェンジができない僕に求めてくる。
「が、頑張ってください!!、」
「えへへ、ありがと!」
「実は僕は中間テストなんです。」
僕も少し自分を曝け出してみる。なのに君は無表情。どうして、、。
「え、?、?」
静寂が耐えられなかったのか君は吹き出す。
「さっき笑って来たからお返し!!」
「ひどいです!」
「頑張ってね!!応援してるぞーーー。」
肩をトンっと叩かれる。初めての感覚だ。こんなにも近くに異性の人がいる。だけど、君といるとなんだか素直な気持ちになれる。まだ緊張してるけど。
【次は花屋敷、花屋敷、、、】
「着いちゃいました。あっという間でした。」
「そーだねーーー、寂しいよ。頑張ってね!」
「はい!ありがとうございます。」
「私も頑張るから!淳也くんもね!またね!!あと!敬語もうきんしーーー!わかったね!!?」
「え!!わかりまし」
扉が閉じてしまった。最後の言葉なんだって?どういうこと。敬語になっていたことにも気づかなかった僕。ダメだって言われてしまった。だけど嬉しかった。こんなにも君と話せた。朝から君に会えた。その日のバスはなんだかルンルンで席にも座らず立っていた。
P.M.5:00
テストも終わって、復習を図書館でしていた。今日は少し早く帰ろう。そう思ったのは今日の夜ご飯が僕の好きな唐揚げだからだ。お腹もぺこぺこで、今日の終わりを迎えようとしている。
いつもの五番ホーム、僕の定位置。扉が開くと満員電車。そうだった。この時間帰宅ラッシュなんだった。残暑が残るこの時期はまだまだ地獄が続く。1日頑張った社会人の汗の匂いと、沢山の香水の匂い。電車の中には沢山の香りが充満して僕には居心地が悪すぎる。
【次は草加之宮、草加之宮、、、】
やっとついた。満員状態がずっと続いて身動きも取れず地獄を見た。やっとの思いで電車を出て、スマホの画面に目を向ける。
「電車乗ってたのにーー、気づいてくれなかったでしょ!」
え??え!!、?いたの、、!!知らなかった。なんかすごく勿体無い感じがした。
「いたんですか!?気づかなかったです。すみません。」
「敬語禁止だよ!!」
「ごめんなさい!」
「いいよいいよ、喋りたかったなあーー、けど人いっぱいで凄かったね。私も久しぶりにこの時間乗ってビックリしちゃった。」
「僕もです!もう乗りたくないですあれは凄すぎました。」
「だね!ねねね!明日さ!!帰り何時ーー?」
突然そんなことを聞かれる。どうしてだとは思いつつ、いつも通り自習してから帰ることを伝える。
「付き合って欲しくて。」
なんて言ってる。付き合ってほしい?画面を見つめる僕は動揺しすぎてスマホを落としてしまった。
幸い傷はなかったが、周りからしたら気持ちが悪い人だろうなと思った。
「どういうこと、?」
「あれ?言葉足らずだった!!ごめんね!明日ね、お米買いたくてーー、だけど重いからさ、淳也くん暇だったら一緒にお買い物ついて来て欲しくて。」
そういうことか。ただの荷物持ちかと落胆したが、君とプライベートで会えるチャンスには変わりない。もちろん即答
「是非!行きたいです!」
「ええ!?喜ぶところ!??」
驚く君に正気に戻る。やらかしてしまった。これじゃあ下心が丸見えだ。
「ごめんなさい。」
またいつも通り謝ってしまった。
「ビックリしただけ!私と会えて嬉しいってことでしょー??」
多分君は笑っているんだろうな。揶揄(からか)われた僕は言い当てられてしまって返す言葉が見つからない。
「実はそうです。」
「え。ごめんからかっちゃった。それほんとに?私も会いたいから誘ったの。」
君の答えは僕の斜め上をいく。僕と会えることを喜んでくれる人がいる。初めてのこと。君は僕の存在価値を作ってくれている。
「一緒です。嬉しい。」
素直な感情をLIMEにのせる。この気持ちは伝わるのかな。
自転車を引きながら家に帰る道。母からの「まだ帰らないの?」のLIME。今日は唐揚げだった。早く帰ろう。明日は君に会える。また楽しみが増えた。今日は栄養補給だ。そんなことを思いながら自転車にまたがる。
お風呂にも入って。ベットに倒れる。今日も一日が終わる。だけど君との会話は終わらない。
「髪乾かないー泣」
「頑張れ。もー寝ちゃいますよ」
「乾くまで待って!そうだ!それまで寝ないように通話してよ!」
女の子と電話?それはなんですか?今は現実ですか?夢じゃないの?眠く擦っていた目は、その事実を忘れるように閉まらなくなる。
「いいんですか?」
ついそんなことを聞いてしまった。
「もちろん!かけちゃうね!」
君との通話は君が乾かし終わってもしばらく続いた。
「それでねーー、○○がーーー、こんなこと起きたのー、ビックリだよねーー。そいえば!、、」
君からの話は止まることを知らない。だけどそれは嫌な気持ちになることはなく、居心地の良さを覚える。君の声を聞くこと心が温かくなる。もっと話したいと思える。この時間がずっと続くことを期待してしまう。
気づいたら君の声は吐息に変わる。寝落ちしてしまった。だけど通話のまま。これが寝落ち電話ってやつか。よく周りが言っていたその言葉が現実になった。スマホの画面をそっと閉じ僕も目を閉じる。また明日がやってくる。明日もし繋がってたら、自分からおはようって言おう。今日はいい夢が見られそうだ。
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