プロローグ 四章
三十畳ほどの空間に、ジリジリとプロジェクターの作動音だけが響いていた。
彼はスクリーンの横で直立不動のまま、正面を向いて待っている。
円卓を囲む年配の男女がスクリーンに映し出された風景に心を揺さぶられていた。
あと数分で解説の時がやってきくる。十二年もの間一緒に暮らした親友の目的が、こんなにも簡潔なものであったと伝えてくる。
指を動かすだけで壊れてしまいそうな張り詰めた空気の中、オレはガムテープで口を塞がれ、縄で椅子に拘束されている。
目の前で繰り広げられる光景を、歯を食いしばりながら眺めることしかできなかった。
友人。父親。恋人。お隣さん。ラーメン屋の店主。社員たち。オレと直人の親しかった人たちがスクリーンの映像で次々と映し出される。
「——では、この機銃要塞・囚われの街の調査報告を始めます」
暫くして、彼は無機質な声でそう告げた。
その聞きたくもない宣言に、オレは耳を塞ぐことすら出来ない。
カコ、カコ、カコ……。
「ここに住む人間の……」
父が残した手紙には自分が外に出られないことへの後悔と調査報告書に嘘を記したことが書かれていた。
「およそ三割が……」
直人への手紙には何が書かれていたのか。
カコ、カコ、カコ……。
「もう既に外に出てしまって……」
ごめんなさい。君の十二年を無駄にしてしまうみたいだ。
天井を見上げ、不気味に刻む時計の音に耳を傾ける。
どうしてこうなったのか原因を探していた。
今思えば、自分の存在が誰かのためになったことなど一度もなかった。
カコ、カコ、カコ……。
会議が終わる。
世界は自分が思っている以上に複雑で。
人生は君が考えている以上に難解で。
彼の話は間違っていると、オレは心の中でしか反論できなかった。
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