第127話 栄光の玉 3

 一通り装備は調えたものの、希咲はもう少し時間がかかるというので、少しだけダンジョン、ここでは仮にアスワド・ダンジョンとしておこうか、それの調査をしてみた。

 例えばアプリのマップ機能は対応しているのか、ダンジョン内部として通話などが利用できるのか、スキルは発動するのか、そう言った事を一つずつチェックするわけだ。

 で、結論から言えば、マップは機能しない、通話もだめと、先のカデンシス・タイドによってできたダンジョンと同じような独立ダンジョンという感じらしい。

 ちなみにスキルの方は、俺の手持ちスキルではチェックできなかったので希咲が試したところ、使えるようだ。


 で、食事の仕込みが終わったというので、さっそく探索と相成ったのだが、メンバーは希咲、ぴかり、ラヴァ、フィリソーズ、そして俺である。

 希咲だけは自分では中に入れず、ぴかりが抱っこして入るというトラブルもあったのだが、スキル的な問題なのだろうか。

 アスワド自身は、自分の中には入れないようだ。

 残る華は留守番して、引き続き料理の支度をするらしい。

 俺もそっちを手伝いたかったな。

 別に興味が無いわけじゃないんだけど、今日はイブだもんな、飲んで食ってHする日だもんな。

 まあいいけど。

 みんなの装備はと言うと、俺は白い刀のホワイトファングにグロック、希咲は先日の騒動で刀をなくしてしまったそうで、予備の脇差しである。


「吹き飛ばされたときに、落っことしたみたいなんですよね。刀を手放すとは不覚でした」

「あのダンジョンに取り残されたままなのかな?」

「どうでしょう、一応協会に紛失届は出しておいたんですが、地上の調査では出てきていないようですね。トラッカータグがついてるんで、地上にあればこっちでもすぐわかるはずなんですけど」

「そういや、購入時に登録したな、じゃあ誰がどこに居るかとかダダ漏れなのかな?」

「いや、そこはさすがに誰でも見られるわけじゃないですけど。警察でも令状が無いと無理なんじゃなかったですっけ」

「そりゃそうか」


 で、他のメンバーは特に装備も無く普段着である。

 強いていうなら、靴を履いたぐらいか。


 俺と希咲はヘッドライトを付けているが、俺はさらにグロックのライトも点灯している。

 銃のライトって結構明るいと聞いていたのだが、思ったほど明るくなかった。

 ダンジョン用なので、技術的に光量が足りてないのかも知れない。


「もうちょっとライトを用意しとくべきだったな」


 五メートルぐらいは普通のライトでも届くらしいので、とりあえずそういうのでフォローすべきだろうかと思ったら、眼鏡巨乳のラヴァが俺に声をかける。


「ご主人様、光源が必要なら、魔法がありますよ」

「まじで! そういやスキルには魔法みたいなんもあるんだっけ、いっちょ頼むよ」

「かしこまりました。では……」


 そういって、すっと右手をかざす。


「光よ、我と我がはらからの元に、有れ」


 呪文と共に手を振ると、小さな光の玉が五つ指先からほとばしり、俺達全員の頭上に灯った。


「このライトは指向性がないのでおのおのの周囲を半径15フィート照らします」

「なんでフィートなんだよ!」

「さあ、この魔法を最初に使ったのがアメリカ人だったのでは?」

「いかんいかん、我が家はメートル法だ」

「では、5メートルになるように調整しますか」


 ラヴァがもごもごと何か唱えると、光源が微妙に明るくなった。


「これでどうでしょう。明るすぎても不便ですし、妥当な光量かと」

「うむ、実にいい塩梅だ。そういや、この通路の幅も1マス5フィートとかじゃないだろうな。いや、もうちょっとあるか」

「そうですね、幅はぴったり2メートルです」


 ラヴァは周りを一瞥してそう断言する。


「よかった、世界はメートル法でできてるんだ」

「遠くを見る場合は、その都度明かりを灯しますので、お言いつけを」

「ほう、すごいじゃないか、こんな実戦で役に立つ魔法があるとは」

「これぐらいは初歩の魔法なので、ご主人様でも少しの練習でお使いになれるのでは」

「まじで、魔法ってスキルで使うんじゃないの?」

「スキルはスキルでしょう。ライトというスキルは魔法のライトと同じ物をスキルで実現しているだけです。スキルであれば呪文も魔力制御も不要というだけで」


 ラヴァの説明をだまって聞いていた希咲が驚く。


「そんな魔法は聞いたことありませんよ! そういうのがあるんですね」

「まあ、そうでしたか。いえ、確かに呪文も魔力の練りかたも、手本無しでは難しいとはいえますね。ただ、私が認識している以上、すでに魔法を発見した人間はいると思いますよ」

「なるほど。で、その修行ってどうやるんです、今すぐできる物なんですか?」

「そうですね、まずは体内の魔力を練り、指向性を持たせて必要な場所に必要なだけ集め、さらに呪文を唱えてそれを発動させる。その過程を覚えればよいのですが、お二人は剣の修行で己の肉体の制御において、融通無碍の境地に至っておいでのようですから、その延長で魔力のコントロールもおそらくはたやすいのでは」

「魔力ってアレですよね、ダンジョンの中だけで感じる、体内のなんかモヤモヤしたものというか」

「おそらくはそれです。ただ、モヤモヤの状態では駄目で、もっと明確に力の塊に、さらにいえば極限まで小さな点に練り上げるのが理想です」

「ふむふむ、このモヤモヤはスキルを使うときにも体内を巡るような感じはあったんです。これはコントロールできる物なんですね」

「はい、ではちょっとお見せしましょうか。魔力を強めにして、体中から、こうして指先の一点に集めていきます」

「ああ、感じます。ってすごい魔力ですね。意識しなくてもビンビン感じますね」

「やはり希咲さんは慣れているようですね。ご主人様はどうです?」


 どうと言われてもよくわからんのだが、なんかよくわからんパワーみたいな物は感じる。

 ただ、どれぐらいすごいのかどうかまではわからんな。


「まあ、なんかようわからんが、わからん感じのそれっぽいパワーをコントロールしてやれて話だろう。気をぐわーって高めるみたいな」

「まあ、そうなのですが」

「意思でコントロールできるってことはなんだ、魔力って随意筋みたいなもん?」

「原理は違うと思うのですが、現象としては同じだと言えますね」

「珍妙だな、どうやるんだ?」

「原理が認識できていないので説明が難しいのですが、そもそも、ご主人様は魔力の制御ができていますよね」

「そうなの?」

「いつも均一に魔力が体に張り巡らされています。相当長い年月をかけて、鍛錬してきたのでは?」

「鍛錬っていうけど、スキルに目覚めたのはつい先月の話だぞ」

「スキルなどなくとも、この世界には魔力が充ちているでしょう。自然にも、生物にも、そしてもちろん人間の中にも魔力は充ちているのです。生まれたときから、共にあるのですよ」

「そうはいっても、ダンジョンができたのも10年前だろう。その頃にはすでに俺は20代の後半だぞ」

「ダンジョンが魔力を生むのではありません。元よりあった魔力、この世界ではカデンシスと呼ぶのでしたか、それはそれこそ、宇宙開闢の昔から存在しているではありませんか。ダンジョンはそうした魔力の一つの表れに過ぎません」

「え、そうなの? じゃあ、ダンジョン関係なく、魔力とかあるわけ?」

「でなければ、私どもがダンジョンの外で顕現できるはずがないのです」

「ははあ、それって大発見系のやつじゃね」


 そこまで黙って聞いていた希咲も頷いて、


「おおきなシノギの匂いがしますね、兄さん」

「なんかガッポガッポ稼げそうな気がしてきたぞ」

「そんなことよりさー、魔法の鍛錬をするか探索をするかぐらい、決めたら?」


 ギャルのぴかりがしびれを切らして急かす。


「あー、じゃあなんだ、その魔力のコントロールとやらを学びつつ、ちょっと探索してみるか」


 日和見がちな方針を決めたところで、俺達は謎のアスワド・ダンジョンの探索を始めたのだった。

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