第118話 同棲 3

 借りたキャンピングカーは希咲に運転して貰い、家に帰る。

 先に連絡してガレージを片付けておいて貰ったのだが、ベースが10人乗りのハイエースなので、だいぶでかい。


「なにこれデッか、買ったの?」


 車を見るなり驚くギャルのぴかり。


「いや借りたんだよ、年明けの4日か5日まで。せっかくだからどっか行こう」

「いいじゃん、中見ていい?」

「いいぞ、っていうか俺も見よう」


 テーブルは4人掛けで、奥に横向きにギリギリ3人ぐらい寝れそうなベッドがある。

 ベッドは車幅の都合で長さが170センチ弱なので、俺やフィリソーズはちょっと無理だな。

 天井は上げていないので中腰にならないと動けないが、まあ、生活できなくもない。

 試しにみんな呼んできて6人全員で入ってみる。


「さすがにちょっと、きついですね」


 座敷童子の華が言うとおり、二人がベッドに寝転んで、4人がテーブルに腰を下ろすと、あとはもう余裕がない。


「このテーブル部分もベッドにできるらしいんだけどなあ。試してみないとわからんな」


 俺の向かいに座って、電源周りのスイッチをいじっていた希咲が、


「オートキャンプでテント併設とかになるんじゃないですか?」

「テントとか持ってないぞ。っていうかこの寒さでテントは無理では?」

「実家には古いのがあった気もしますが、最近流行のエアフレームのテントにしましょう。こう言うの」


 そう言ってスマホで動画を見せてくる。

 ポンプで空気を入れると膨らむ、ゴムボートのテント版みたいな奴らしい。


「最近はこういうのがあるのか、結構でけえな」

「このサイズがあればゆったりできますよ」

「しかし、さすがに冬は寒くねえか?」

「暖房は薪ストーブが流行らしいですけど管理が大変そうなので、石油ストーブとかでいいんじゃないですか? 兄さん、持ってません?」

「もうエアコンしかつかわないからなあ。近所のスタンドが潰れて灯油買うのも面倒になってたんで、何年か前に調子悪くなったときに捨てちまったよ。つか、そこは無理してでも薪ストーブでは?」

「ロマンはありますよね」

「それより晴男さん。この冷蔵庫は小さすぎませんか?」


 呑兵衛エルフのフィリソーズが冷蔵庫を開けて苦情をのべる。

 50Lぐらいだろうか。


「二箱ぐらいは入るんじゃね?」

「別にビールの話をしているわけではありませんよ。6人分の食料を詰めるのでしょう」

「なるほど、お前が酒以外のことを考えてるとは思わなかったものでつい」

「愚かなことを。よいつまみがなければ、お酒の楽しみも半減するではありませんか」

「はい」


 まあでも、ポータブル冷蔵庫を一つぐらい足さなきゃ駄目かな。

 冬場はどうとでもなるかもしれんが。


「細かいことは、行けばわかるっしょ、さっそく行こうよ」


 ベッドでゴロゴロしていたぴかりがそう言って体を起こす。


「そりゃそうだ、行くか!」


 キャンプに行くのはいいが、さすがに後ろに4人座ってちゃんと走れるかぐらいは確認したほうが良さそうだ。

 買い出しも兼ねて全員乗せてちょっと遠くの大きいホームセンターまで向かうことにする。

 運転するのはやはり希咲で、俺は後部に座るのだが、低速ならともかく、ちょっとスピードがでると結構ゆれてケツに来る気がする。

 いやでもハイエースでこれならマシな方か、長田のやることなので、足回りもいじってるのかもしれない。

 それでもまあ、追加で座布団ぐらいいるかなあ。


「ビールを通常の倍のペースで摂取すれば耐えられる、と言ったラインですね」


 隣に座っていたフィリソーズは真顔でそんなことを言っているが、向かいに座る長乳眼鏡のラヴァは特に不満はないようで、無言でスマホをポチポチいじっている。

 尻肉に余裕があるからかもしれない。

 その隣に座る座敷童子の華も、体重が軽いせいかどうにかなっているように見える。

 ギャルのぴかりは助手席なのだが、


「いいじゃんこの車、視点が高くて見晴らしいいよ」

「俺は高いと落ち着かなくて運転するの怖いんだけどなあ。風にも煽られるし。ボンネットが無いのも相まって、バンは落ち着かん」

「ハレっちは苦手なこと多いよね」

「誰だってそんなもんだけど、俺の場合は素直に自分の苦手に向き合えることが美徳になってるんだよ」

「欠点でも美徳だと思い込めるのは、兄さんの長所でもあり短所でもありますね」


 運転しながら希咲がそんなことを言う。

 自分を再評価する必要が出てきたので、隣に座るフィリソーズの柔らかいところを揉んでみる。

 希咲がいてもこういうことができるようになったのは、人類にとって偉大な一歩を歩み出したと言えるなあ。

 などと考えているうちに、店に着いた。

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