第24話:亀の戦士、テンセイブラック

 まさか、俺の前世の敵である魔王トワイライトが転生していたとは思わなかった。

 正直、前世でどんな風に戦って倒したのか覚えてない。


 「前世が魔王だって言うなら、経験値とゴールドに変わて貰っても良いよね♪」

 「いや、黄河さん何言ってるの! 相手は人間だからね?」

 「ゲームの話だよ♪ そう、運命を賭けた命がけのゲームの!」

 「ちょ、虎のオーラが出てる!」


 黄河さんの笑みが獰猛なものになってる。

 いや、柔道の試合じゃないんだからね?

 何か教室で俺の周りだけ空気がおかしい。


 「まあ何にせよ、狙われているのはいつものように灯希か」

 「戦隊の風紀を乱さないでね?」


 ブルーとグリーンが冷たい!

 何だよ、その自分達は安全だって立ち位置は!


 黄河さんは何か知らないが、闇のオーラが出てるしイエローだろ?

 俺達の戦隊にブラックはいない!

 入る予定もないはずだ!

 博士がゴールドになって、俺達テンセイジャーは六人戦隊で平和を守る。

 あの魔王が追加戦士加入とかは、ないと思いたい。


 「ともせんぱい、どんだけ業が深いんすか?」

 「深くないよ! 俺、勇者だよ? 真面目にヒーローしてたよ?」

 「でも、今覚えてるのは最後の時だけなんすよね?」


 昼休みの中庭。

 皆で集まり昼飯。

 ピンクであるきびちゃんも、俺の事に関しては犬も食わないと言う顔だ。

 彼女がビーフジャーキーを食いながら、自分はどうでも良いと言う顔で語る。


 「ああ、ヒノエの方もそんなに覚えてないって言われた」

 「せんぱい、主従共々鳥頭っすね?」

 「酷い!」


 後輩の言葉に、俺は豆のパックを食いながら悲しむ。


 「赤羽君を他の子に取られないようにするには、どうすれば良いの!」

 「黄河さん、相変わらずおにぎりが大きいね?」


 人参スティックをかじる緑山さんが、黄河さんの巨大おにぎりに呆れる。


 「でも、家の学校に転校してきたりとかしないなら良いんじゃないのか?」

 「公開とかしてない、俺の家の場所を探り当てて来たんだよヤバいぜ?」

 「不味いな、僕の家にとばっちりが来るような事はやめてくれよ?」

 「ああ、それは勿論だそっちにも世話になっているしな」


 家が隣である清丸に告げる。

 俺としても、ご近所トラブルは起こしたくない。


 「でも、話からして人間としての生活も大事にしてるみたいだよね?」

 「ああ、前世が魔王とか言う割には人間性は強めだったな?」


 緑山さんの言葉に、俺が見た感じでのあいつ。

万年亀永遠さんの印象を答える。

 ミステリアスな感じがするアホの子だけど、悪人ではなさそう。

 チョロい感じが危ない、放置できない。


 「む~~~! 赤羽君、その人の事が好きなの?」

 「い、いや! そうじゃないけど、困った奴は放置できない的な?」


 そう、ではなくとして放置できない。

 前者はトラブルに難儀している人で、後者はトラブルの原因だから。

 どこかでデカい爆発を起こす前に、俺が受け止めるべきか?


 「赤羽君、抱え込まないでね? 最悪私が投げ飛ばすから♪」

 「いや暴力は駄目だって!」

 「そうだぞ、灯希は曲がりなりにも僕達の要なんだからな?」

 「うん、責任取り締まられ役だもんね♪」

 「まあ、デカい弟分っすね♪」

 「うん、酷いけど嬉しいよお前ら」


 仲間達の言葉はひどいけれど嬉しい。

 今世でも、良いパーティーメンバーに恵まれたな俺は。

 笑い合える仲間が力になってくれる。

 万年亀さんともそうなれる気がした。


 「……諸君、新たな仲間を紹介しよう」

 「初めまして皆様、万年亀永遠と申します♪」


 放課後、テンセイベースにて俺は万年亀さんと再会した。

 黒いスタッフジャケットを着た彼女の手首には、黒のテンセイブレス。

 彼女の右肩には黒い亀形のテンセイビーストが乗っていた。


 「驚く事ばかりなんだけど、宜しくな?」

 「はい、宜しくお願いいたします♪」


 微動だにせず、瞬時に俺との間合いを詰めて来た。


 「ちょっと! 距離が近すぎ!」

 「あら、あなたがイエローさんですのね♪」

 「黄河実です、赤羽君は独り占めさせないからね?」

 「ええ、平和になるまでは♪ でしたわね、灯希様♪」

 「赤羽君、どういう事? 私の家で柔道の稽古しようか♪」


 黄河さんが俺と万年亀さんの間に割り込む。

 いあ、どういう展開だってばよ!


 他のメンバー達は傍観してるし。


 「まあ、彼女はブラックとしてスポンサー令嬢兼株主として加わってくれた」


 博士が株主と言いう点を強めに言う。


 「株主様っすか! 宜しくお願いしまっす!」

 「はい、せいぜい十パーセントほどですが♪」


 きびちゃんが万年亀さんに近づき、大家の犬になりかけていた。


 「うん、ぐぐってみたけど彼女の家の経済力あるな」

 「そうだね、万年亀グループって凄いね?」


 清丸と緑山さんが呆然となる。

 スマホでブラックの実家を検索したらしい。

 社会的な戦闘力があるのはヤバいな、魔王汚い。


 「ああ、ご実家も含む経済力もだが戦闘力も期待できる逸材だ」


 博士が苦い顔で告げる。

 元魔王なだけでなく、なんかやってる人だ。


 「ロボの方は準備中ですわ、お楽しみに♪」 

 「まあ、思う所はあるが宜しくなブラック」

 「ええ、レッド様♪」


 俺は追加戦士となった魔王の手を取る。

 こうなりゃ呉越同舟だ、飲み込むぜ。


 博士より先に追加戦士となった元魔王、万年亀永遠。

 加入から三日後に、彼女のデビュー戦の時が来た。


 「前世は魔王、今世はブラック! テンセイブラックです♪」

 「何だあ? また増えやがったのか!」


 戦場となったのは魚市場。

 マグロを強盗したタタキアンを広めの場所に追い詰めた俺達。


 「シバッキー! 四度目の人生がそんなので良いのかよ!」


 肩にマグロを抱え、胸に四と書かれた黒い戦闘員のスーツを着た男。

 かつて俺と相打ちになり、前世の世界を滅ぼしたシバッキーに叫ぶ。


 「復活するたびに下っ端から、出直しっすか?」


 ピンクが呆れる。


 「みじめな生き方だな、そんな組織抜ければ良いのに?」


 ブルーはマスク越しに憐みの視線を向ける。


 「やかましい! 成り上がりこそがロマンよ!」

 「その向上心、別の所で生かしなさいよ!」


 シバッキーから、ブルーへの反論に対してグリーンが怒る。


 「戦闘員達も使って市場の人達を襲い、お魚を奪うなんて許せない!」


 イエローは激おこだった。


 「イエローさん、怒りは敵ですわ!」

 「イエロー、終わったら皆で寿司パーティーだから!」


 俺とブラックがイエローを宥める。


 「テンセイレッド、テメエだけはあの世界みたいに滅ぼしてやる!」

 「……お前、マジで更生の余地がないな?」


 黒い蛇を模した装甲の怪人となったシバッキー。

 奴に対し、俺はフェニックスカリバーを構える。


 仲間達は、戦闘員達に奪われた魚の回収に向かった。


 「レッド様、あの怪人がファインアースを滅ぼしたんですの?」


 ブラックが黑い亀の甲羅型のシールドを装備して俺に尋ねる。


 「そうだ、お前も狙い俺が守ったあの世界はこいつらに滅ぼされた」


 俺は重々しく告げる。


 「何だ? そっちの黒いのもお前と同じ世界の生まれ変わりか~♪」


 シバッキーが大型の黒いナイフを取り出し、俺達を嘲笑う。


 「不快ですわね。 レッド様、共にあのゲスを滅ぼしましょう!」

 「ああ、魔王と勇者のコンビ技で行くぜ♪」


 勇者と魔王と言う、前世の関係を越えて俺とブラックが背中を合わせる。


 「しゃらくせえ! くたばれ、負け犬共!」


 シバッキーが巨大な黑蛇のオーラを俺達に放出する。


 「笑止千万です、タートルプロテクション!」


 ブラックが前に出て手を構える。

 すると、亀甲模様のバリヤーが展開され黑蛇のオーラを弾く。


 「まむしなら串焼きだ、レッドミーティア!」

 「うぎゃ~~~~!」


 俺の必殺技でシバッキーが燃え尽き、奴の魂が天に飛び出す。


 「させません、ヴぉイドプリズン!」


 ブラックが叫び、空に黒い穴を開きシバッキーの魂を吸い込むと穴を閉じる。


 「げ、あれはまさか?」

 「ええ、復活させないように虚無へ魂を追いやりました」

 「いや、サラリとえぐい事するな?」

 「悪党に利用される生からの開放です、虚無の中でいつか生まれ変わるでしょう」


 ブラックのヒーローデビューは地味な形で終わった。

 味方だけど、思考がまだ魔王だわこいつ。

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