第24話 第3章 ロックにさほど知能は要りません。要るのは根気と感情です(6)
―ロックン・ロール部の部室―
「ふぁーん。まだ眠いな‥」
昨日は帰宅後、早く寝ようと思ったが、明日先輩達に作った詩を見せることを考えると思うように寝付けなかったからか大きなあくびが出た。
昨日の疲れと睡眠不足から来る眠気を振り払うながら、正午過ぎに部室の扉を開けるとそこにはノースさんを除く、部の先輩方がそこにいた。南川さんは、ギターを持ち弾き、西郷さんと東ノ宮さんは、椅子に座って机の上のお菓子を頬張っていた。
「お疲れ様です」
『お疲れ様!歌詞は完成した?』
3人とも同時にこちらを振り向き同じ言葉を言った。
「一応、見せれるぐらいには完成させてきました」
「ほう、それは良かった。言い出しっぺのこっちが言うのもなんだが、時間が急ピッチで書いて大変だったな。歌詞の方を早速見てみたいな。あ、コピー機あるから使うか」
西郷さんは、前のめりになって自分の書いた歌詞について聴いてきた。書いてきた歌詞がよっぽど気になるようだ。西郷さんの勢いに押されて、スマートフォンのメモに書いた歌詞を急いで、先輩方にメッセージで送った。
「あ、今先輩方に歌詞を送りました」
『ピロリン♪』と部屋の中にあるスマートフォンの通知音がなった。
「本当だね!じゃあ早速、歌詞の方を見させてもらうね」
東ノ宮さんは、コップに入れてある紅茶を飲み干してから、一息をついてスマートフォンの画面を見始めた。
「私も楽しみにしてたから、早速見させてもらうわね」
南川さんは、持っていたギターをそっと机の上に置き、メモ用紙を近くに置き、ボールペンを手に取ってから、スマートフォンの中を覗き始めた。西郷さんの方を見ると、何も言わずに黙って歌詞を読み始めていた。
それから南川さん達は、真剣な表情で昨日書き上げた歌詞を読んだ。南川さんは、途中で持っているボールペンでメモ用紙に何か書いていた。その書いている内容がとても気になるが、静かに固唾を飲みながら、先輩方が読み終わるのを待った。
歌詞を読み終わり、スマーとフォンを置いて、一番初めに口を開いたのは南川さんだった。
「全部読んだわ。まず初めに言わせてほしいのは、この短期間で正直書き上げてくるとは思ってなかったわ」
「あ、あ、ありがとうございます」
「だいたい、音楽やっている人間って時間を守ったり、約束ちゃんと果たすの苦手な人が多いから、少しびっくりしちゃったわ。まぁ、それはさておき、歌詞の方なんだけど、だいぶ良い感じに仕上がったわね。私は歌うのは藤田くん本人だし、このままでいいと思うけど、西郷と東ノ宮さんはどうかしら?」
「俺も、まぁ良いと思う。この歌詞はアップテンポの曲をイメージして作ったのか?」
「そうですね。そこまで考えてなかったけど、アップテンポの曲の方がイメージに近いと思います」
「なら、もう少し歌詞に尖った感が欲しいかなと思った。この辺の歌詞とか特に‥」
西郷さんは、歌詞の一部に指を当てながら、変えた方がいい箇所を教えてくれた。
「西郷にしては、中々まともな意見ね」
「俺は、普段からまともだぞ。音楽のことになるとガチだ。それにお前の方こそ、何も意見を言わずに、鵜呑みにするなんて珍しいじゃないか」
「そうかしら、まぁ処女作だしね。荒削りなところ、もっと言えば、まだ改良点があるところも愛おしいと思ったのかしらね。むしろ、その不完全なところが藤田くんの心情をよく表しているのかもって思ったのよ」
やっぱり、改良点はいっぱいあったんだな。あのメモもきっとそんなことが書かれてたんだろう。ただ、南川さんがその不完全さを含めて受け入れてくれたのは、普通に嬉しかった。
「なるほどな。まぁ俺も全面的なダメ出しはするつもりはないから、とりあえず手直しして欲しい所は後でしてくれたらいいから、これで作曲の方に移っても良いと思うぜ。東ノ宮さんはどう思いましたか?」
「そうねー。私も真美ちゃんと同じでこのままでいいと思うよ。メロディーをつけていくのが楽しみだよ。ただ聴いておきたいことがあるかなー」
「なんでしょうか?」
「この歌詞とっても良いと思うんだけど、何かテーマとかあるのかな。できれば共有しときたいなって思ってさ‥。あと、この詩のタイトルは書かれてないけど、まだ決まってないのかな?」
「確かに、テーマを共有しておくのは、大事そうだし、この詩にはタイトルがないわね」
「テーマは、挑戦することや努力することに対する他人の目など気にするなって感じです。タイトルについては、まだ決まってないです」
「なるほどねー、確かにこの歌詞からは、そんな感じの意味を感じるね。でも本当にそれだけ?」
東ノ宮さんは、真っ直ぐ目を見て、回答するまで逃がさないと言っているようだった。おそらく言っていることも真っ直ぐそのままの意味だろう。この歌詞のテーマは、正真正銘、挑戦することや努力することに対する他人の目など気にするなってことだ。
「なぁ、東ノ宮さんが何を考えているか分かるか?」
「全然。でも何も考えなしに行動する人じゃないから、見守るとしましょう」
西郷さんと南川さんは、小さな声で東ノ宮さんの邪魔をしないように話をしていた。
「質問を変えましょうか、この歌詞はおそらく藤田くんの体験から作られているんじゃないかしら?」
「そうですね。友達と遊んでた時に馬鹿にされた時に、そんな言葉を気にしなくて良いと友達に言ったことがきっかけです」
「なら、その時の気持ちは?」
「気持ちですか‥。はっ!」
そうか、東ノ宮さんが言いたいことがわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます