第11話 新しい影

高校生活が始まってもなおみの姿は完全には消えなかった。

彼女は違う高校へ進んだはずなのに通学のバスで時々鉢合わせる。

そして、会えば決まって薄気味悪い笑みを浮かべ

大声で罵声を浴びせてきた。


「ブス!」

「さっさと死ね!」


そんな酷い言葉を周囲の乗客が振り向くほどの声で叫ぶ。

私は反応しないようただ前を見つめてやり過ごした。

「無視するしかない」

私は、同じレベルに成り下りたくないという気持ちともう関わりたくない。

そう言い聞かせながら。


けれど、学校の中にも新しい影が待っていた。

クラスで目立つ4人組。

その中でもリーダー格のちえとマリは

初日から私を冷たい目で見ていた。


彼女たちの視線には、興味というよりも敵意に近いものが含まれていた。

笑って話しているのに目だけが笑っていない。

その冷ややかさはすぐに私の肌に突き刺さった。


「ねえ、あの子なんか暗くない?」

「なんか、よく分からないけどキモくない?」


小声のつもりなのだろうがわざと聞こえるように言っている。

そのたびに、心臓が小さく跳ねた。


ちえやマリのささやき。

二つの影が私の新しい生活を少しずつ侵食していった。

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