第36話


アトリエ・シノハラへの復帰が決まり、有頂天になっている佐藤ひとみと田中直美。喜びもつかの間、ふと、自分たちの役割について、疑問が湧き上がってきた。


「ねえ、ちょっと待って。広報って、一体何するの?」佐藤ひとみが、田中直美に尋ねた。


「広報…?えーと、確か、アトリエの宣伝とか、PRとか、そういうことじゃない?」田中直美は、曖昧な答えを返した。


「宣伝とかPRとか…、具体的に、何をするのよ?私達、受付しかやったことないじゃん。」佐藤ひとみは、不安そうな表情を浮かべた。


「言われてみれば、そうだよね。私達、広報の経験なんて、全然ないもん。」田中直美も、心配そうな顔をした。


「デザインかな?あたしたち、デザインとかできないし。」佐藤ひとみが、呟いた。


「デザイン?いやいや、無理でしょ(笑)私達、絵心とかないもん。それに、デザインの知識なんて、全然ないし。」田中直美は、笑い飛ばした。


「でもさ、広報って言ったら、デザインとか、広告とか、そういうイメージじゃん?まさか、私達が、デザインすることになるなんて、ありえないよね?」佐藤ひとみが、念を押すように言った。


「ないない!絶対にない!だって、私達、デザイナーじゃないもん!受付のお姉さんだよ!」田中直美は、大声で笑った。


「だったら、何するんだろう?私達、受付しかできないのに、広報なんて、務まるのかな?」佐藤ひとみは、ますます不安になった。


「大丈夫だよ!きっと、なんとかなるって!菜々美社長が、私達を選んでくれたんだから、きっと、何か理由があるはずだよ!」田中直美は、楽天的な言葉をかけた。


「そうかな…?まあ、なんとかなるか!とりあえず、明日、アトリエに行って、菜々美社長に、色々聞いてみよう。」佐藤ひとみは、開き直ったように言った。


その時、田中直美は、ふざけて、佐藤ひとみの背中を思い切り叩いた。


「バカ言ってないでさ!明日から、広報として、バリバリ働くぞ!」「痛い!何すんのよ!いきなり!」


「ごめんごめん!でも、本当に楽しみだね!また、あの華やかなアトリエで働けるなんて、夢みたい!」田中直美は、目を輝かせた。


「そうだね!私も、楽しみ!でも、広報の仕事、ちゃんとできるかな…?」佐藤ひとみは、少し不安そうな表情を見せた。


「大丈夫!私達なら、きっとできるよ!菜々美社長のために、精一杯頑張ろうね!」田中直美は、佐藤ひとみの背中をポンと叩き、励ました。


「うん!頑張ろう!」佐藤ひとみは、笑顔で頷いた。


アトリエ・シノハラに戻り、新たな役割を担うことになった佐藤ひとみと田中直美。不安はあるものの、菜々美への感謝の気持ちと、新たな未来への期待を胸に、二人は、明日からの仕事に、心を躍らせていた。

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