ダンジョン

 日の出が出る前に起きる。今は誰も起きていない。まだ夜のように暗く肌寒い風がふいている。慎一郎は置き手紙を書く。


「ごめんなさい。僕はこれから大事な用事があるので少しの間家にはいません。心配はしなくていいのでいつも通りの日常を送ってください」


 そう拙い文字でそう書き出した。この世界では文字が書けないものが大勢いるがなんとか書けるよう練習を慎一郎はしていた。喋りの時は最初から日本語だったので苦労はあまりしなかった。あの神の仕業なのだろう。


 「行ってきます」


 そう呟き玄関を出る。慎一郎は心臓の音が聞こえるくらい緊張した。この緊張は受験以来の緊張である。何度も今まで練習をしてきたことを道中シュミレーションをし、あっという間にリネフォーゼ家の屋敷に着き、そこにはアカリにセバスチャン、そして2人の子供がいた。


「どうも兄のアキと言います」

「私は妹のキアと言います」


2人は小学2年生くらいの身長をしていて、顔は双子か、と言うくらいには似ていた。兄の方が1年歳上らしい。顔が子供らしく可愛い顔立ちをしている。目は純粋な水色、髪は綺麗な茶髪である。そして口が猫を連想させるような口をしていた。


「ねぇセバスチャン、子供を連れてくの?」


 セバスチャンに耳打ちした。


「ああ、大丈夫ですよ。実力は私を抜いたら一番強い方々ですから」


 そうセバスチャンは言い、慎一郎は疑心暗鬼だったかがセバスチャンの言うことを信じてみることにした。


「あぁ、2人ともよろしく。アキ、キア」


 軽い自己紹介を行い馬車に乗った。馬車の中で自分の戦い方や今回の作戦、いつまでに決着をつけるかなどを話し合い、遂にダンジョンに到着した。


「ここがダンジョンか」


 ダンジョンま普通の洞窟と違い、禍々しいオーラを放っており魔力をすごく感じていた。このダンジョンは8階まであり、比較的小さめなダンジョンである。


「では、行きましょう」


 慎一郎がそう言い、4人が入っていきそれをセバスチャンは見送っている。慎一郎たちがダンジョンの中に入り緊迫した状況の中で進んでいった。前衛のアカリと慎一郎で中堅は魔法使いのアキ、後衛が治癒魔法使いのキアという体制をとっていた。すると前から気配がしてくる。


「ゴブリンが現れたわ」


 そしたらアカリが前に出て戦闘を開始したが、慎一郎は中々前に出られない状態だった。そしたらアカリが戦闘をもう終わらせていた。


「ちょっと何してるの?私1人だけじゃ今後のことも考えたらキツいんですけど!」


 慎一郎は前の変異種のゴブリンに足を切り取られたのがトラウマになっていた。アカリと慎一郎の実力は同程度だが、経験が違くそこで差ができている。前へ前へと進み、全然慎一郎は戦えないでいた。


「ここらで少し休憩にしましょうか」


 2階まで進め攻略は順調だったが、慎一郎の様子がおかしく、アカリが怪訝な様子で声をかけた、


「どうしたの?テレ。いつものあんたらしくないわ」

「うん、、ごめん」

「なに、その弱気な態度?いつものテレはどこいったのよ。ただ突っ立てるだけじゃお荷物なんだけど?頑張ってくれない?

「うん、、できるだけ頑張る」

「だから、その弱気な感じやめて。気持ち悪くて体がゾワゾワするから」


 アカリはそう伝え、また慎一郎は落ち込んでしまった。慎一郎はトラウマを克服できない今の状況に嫌気をさしていた。すると


「大丈夫ですよ。そう落ち込まないでください。テレンさんが戦えないで分、僕が埋めますから」


 そうアキに言われ、年下に気を使わせたという劣等感に押しつぶされ、さらに落ち込んだ。元々の作戦は前衛の2人が前線を維持し、

サポートや決めきれない一撃などをアキが、怪我などをしてしまったら、即座にキアが回復魔法を使うという作戦など様々な作戦を決めていたがこの作戦が一番安定するという感じで話し合っていた、しかし今や慎一郎が動けない状態なのでアカリが前線を維持し、足りない分をアキが補う形になっている。そしてどんどん進んで行き4階まで辿り着く。4階までも行くと魔物もそこそこ強くなってきたが、ゴブリンの変異種はまだ出てきていなかった。


「少し休憩を挟みましょう」


 休憩の回数が増えてきている。セバスチャンの言っていた通り2人の実力はかなりすごく、順調に進めていけたのはこの2人がいたからとも言える。だが進むに連れ魔物が強くなり、増えもしてきている。


「あんた!少しは動きなさいよ。アキはもうすぐ魔力切れだし!私だって体力もうないのよ!だから休憩を挟む回数が増えて攻略が遅れてるの。本当にどうにかしてくんない?今あんたお荷物だからさ、さっさと覚悟決めろや」

「う、うん。ごめん」


 慎一郎はそのようなきとは自覚はしていたが、中々一歩が踏み出せないでいる。今すぐ逃げたい、お荷物にならないようにないと、など様々な感情込み上げてくる。その時、


「テレンさん。もし怪我を負っても私が治してあげますから!足や腕がなくなっても繋ぎ止めもす!まぁ首は無理かも知んないけど...」

「ありがとう...」


 そんな何気ないキアの一言で慎一郎は少し気が楽になる。そう、あの変異種ゴブリンにやられた怪我がトラウマなのだ。もし足が消えたらどうしよう、もし腕がなくなったらどうしよう、などのことがトラウマで戦闘ができないでいる。そして慎一郎は覚悟を決め立ち上がる。持ってきたリュックに魔力ポーションをアキ飲んだりアカリが干し肉を食べ次動けるくらいの体力まで休憩し、攻略が進む。


「来たわたわよ。次は、ホブゴブリンだわ。中々に手強い敵ね」


 そうしアカリが前へ出ようとした瞬間、慎一郎が前へ出て隙を付き攻撃を仕掛け一体を倒す。


「やるじゃない!」


 あとに続きアカリも前へ出て戦闘を行う。この2人は中々にコンビネーションがよくアキが出る幕もなかった。


(よし!)

「あんたやればできるじゃない!見直したわ。さっきまで最悪だったけど」


 そう慎一郎の背中を叩きながら話すアカリ。その後慎一郎にキアが近づく。


「怪我してるじゃないですか。ちゃんと気をつけてくださいね!」

「大丈夫だよ〜、こんなのただのかすり傷だよ」

「もう!こういうのが命取りになるんですからね!」


 と頬をふくまらせ怒る。


(可愛いな)


 そして慎一郎が戦闘に参加しアカリとのナイスコンビネーションで順調に進んでいった。

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