「解明」し「証明」する者 ②
異世界――
これならタネに気付かれることはない。そう思っていたのに。
(異世界対策課……だと!?)
聞いたこともなかった。察するに、こういうもの――世羅は『
(……あれを取り出すしか)
「何を企んでいてももう無駄だよ。さ、素直にそのバッグを渡してもらおうかな」
だが世羅との距離が近い。今バッグに手を入れても邪魔されてしまうだろう。しかし、彼女の提案は佐藤にとってチャンスだった。
「……わかったよ、ほら」
その筋書きは、彼女の後ろをとったあたりで崩壊した。しっかりつかんだつもりが逆に腕を
「っでぇ!!」
あんなに
「わかりやすいな……自分より大きな相手でも、いなすのは難しくないね」
「……ぐっ!」
なんとか気合で起き上がる。投げられてもバッグを手から放さなかったのは
(今なら取り出せる……!)
バッグの中に手を突っ込み、例のモノを探す。
ナイフ、変装道具、パン、仕事の書類、作業着、アルコール消毒液、スマホ、リュックサック、腕、財布、時計、タオル、女神の、
(……女神の?)
佐藤はとっさにそれをつかんで取り出した。
「『証明』、完了だ」
世羅がそう告げた。佐藤はとてつもなく嫌な予感がした。
「証明、だと?」
「そう、それが異流品で、あなたが犯人だという証明だよ」
「……は?」
佐藤は理解が追いついていなかった。世羅は先ほど、彼女のトートバッグから、つまりアイテムボックスの別の出入り口から女神の雫を取り出したはずだ。では、この手の中にある、世に二つと無いはずのこれはなんだ。
世羅はトートバッグから再び女神の雫を取り出す。
「そう、世に二つとない女神の雫――」
彼女の口元が、ニヤリと笑った。
「――これは、そのレプリカだ」
「……騙したな、てめぇ!」
全てを
「私の目的は、そのバッグ……アイテムボックスを直接回収するか、あなたに盗品を直接取り出してもらうのを記録することだった。それが立件する為の証拠になる。私の片目は
言いながら世羅は自らの左目を指さした。
「ちなみに、アイテムボックスの出入り口を増やすこと自体は可能なのだが、繋がる先の特定をしないといけないし、何より時間が掛かる。それに、この世界で可能かどうか……」
世羅がそれを言い切る前に、佐藤は拳銃をバッグから取り出して、銃口を彼女へと向けた。
「……防犯カメラでも見たけど、装弾数6発の
「うるせぇ! てめぇには関係ねぇだろ!」
「その銃、確かに当たれば無事では済まなそうだ……当たれば、だが」
世羅はバッグを持っている左手を自身の横に伸ばした。
「素人なら、この距離でも私に当てることすら難しい。このバッグなら
世羅の台詞は続かなかった。放たれた銃弾がバッグに命中し、世羅の手元から吹っ飛ばされた為である。
「やっぱ、銃声はいいな。何より音が
「……驚いた。自信のある方だったか」
佐藤が銃を構え直す。先程までの焦りは消えていた。
「お陰様で、冷静になれたぜ」
その照準は、今度は世羅の
「銃の扱いはどこで……まあ、今のご時世どうとでもなるか。それでも実弾の経験はないと思っていたけど」
「元々オレは銃が好きでね。まあ本物を使ったのはさっきが初めてだったが、サバゲーの感覚と大差なくて良かったぜ」
「ふむ、体格がいいとはいえ、銃の反動をもろともしないとは……いい射撃センスをしているな」
「だろう? さあ、お喋りはここまでだ。さっきのてめぇの驚いた顔でだいぶスカッとしたからな。心置きなくこめかみにぶち込めそうだ」
――だが、冷静になっていたのなら気付くべきだったのだ。世羅は危険な状況にも関わらず、一歩も動いていないことに。
「死ね!」
3発。連続で放った3発の弾丸は、しかし1発も世羅の額に届くことは無かった。
「……やはり、銃声はいいな。何より音が大きい」
これは、もう聞くことのないと思っていた世羅の声だ。
「お陰様で、こちらの状況を知らせられたよ」
3発の弾丸は、代わりに、世羅の前に突然現れた別の人間……青年の腕によって防がれていた。
(……何が起こった!?)
佐藤は混乱していた。何せ、一瞬の出来事だった。青年は
体格で言うなら世羅とあまり大差のない青年は、呆れたような声で後方にいる世羅を責めていた。
「……間に合ったから良かったものの、なんて無茶してるんですか世羅さん」
「間に合うように計算してたんだよ。大きな音でも出せれば、近くで見回っている君の耳に届くだろうって」
(……待て、じゃああの
――佐藤は、自分が銃を撃ったのではなく、撃たされたという事をここで理解した。
(いや、まだだ! 残り2発……リロードしてる暇はねぇが、1発ずつで仕留めればいいだけ!)
腕で防がれた仕組みは分からない。ならば頭を撃てばいい。佐藤はそう思ったが。
「すみませんが、銃はもう撃たせません」
その思考する時間が
「『
青年の手の平が佐藤の腹部へと当てられた瞬間、佐藤は5メートルほど後方に吹き飛び、地面に叩きつけられていた。
――手の平だというのにとんでもない力だった。佐藤は激痛で意識が遠のいていくのを感じた。
「てめぇは……誰だ……」
「……警視庁異世界対策課の、
その言葉を聞くより早く、佐藤は気を失った。
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