第3話 G系ラーメン

 G系ラーメン、つまりガッツリしたラーメンなのだが不意に衝動に駆られて食べることがある。


茹でたもやしとキャベツ、背脂、豚肉から取った出汁に鋭い醤油スープ、そしてドカッと分厚い茹で豚、ワシワシ系の厚めの麺──


構成される要素が暴力的なのがG系……というか二郎リスペクトのラーメンだ。


気分によってトッピングを変えられるのも特徴の一つ。

店にもよるが「ニンニク、入れますか?」と聞かれたら「野菜多め」とか「アブラマシで」とか「カラメで」とか答えるとスムーズ。


この辺りのトッピングで詰まると店員さんがイラッとするが、初見の客にイラッとする店員さんが狂っているので「まぁ……そんな事もあるよな」と心の中でサックリ処理するといい。



G系とか二郎を食べると食べた後に必ず後悔するのだが、時間を経つと食べたくなるのがG系の魔力だ。

やはり白い粉(うま味調味料)をスープの中にドカドカっと入れてるを入れているから禁断症状を起こしてリピートしてしまうのだろうか?



ちなみに、俺の母親はうま味調味料アンチ(何度さとうきびやとうもろこしの糖蜜を発酵させたものだと説明しても信じず、やべぇ化学物質で精製されてると信じ込む)だから食べさせられない。

もう歳だからお腹壊すだろうし食べないほうがいいけど。



冗談はさておき、俺が初めてG系ラーメンを食べたのは、10代ラストの歳だったと思う。

ラーメン二郎というすごいラーメンがあると知り、チェーン店なら行きやすい店舗もあるだろうし〜とノコノコと食べに行った。

当時働いていた仕事場の最寄駅から電車を乗り継げばそんなに時間をかけずに行けると分かった。


確かその日は冬に差し掛かり、季節外れの雨も降っていたにも関わらずまぁまぁな店外行列が出来ていた。

地下アイドルのゲリラ握手会とかよりは遥かに並んでいた。


やはり人間色気より食い気なのだろう。女の子よりガッツリした食べ物の方が心を手軽に満たすことが出来る。



女の子で心を満たそうとしたら心に火傷を負うこともあるしな。



食券を買ってしばらく店の外で待機しているが、周りを見渡すと大学生くらいの男子と巨漢の男性、初老の男性、若い女性と顧客はバラエティに富んでいる。


(二郎って、脂と糖と塩の余分三兄弟をガツガツ摂取するものだから若い女の子とか嫌うものじゃないの?)


とか考えながら20分ほどが経過すると店員さんに招かれて店内へ。

小雨も降っていたからホッとしたが、取り敢えず飲み水を確保しながらコミュ障には難しいコールを考える。


店内に招かれたら調理も進んでいるはずなので、そろそろ来るはずだ。ニンニクコールが。

野菜は迂闊に「マシ」にすると完食しきれなくなる。



「お残しは、許しまへんでぇ〜〜〜〜!!!!」



そんな風に怒鳴られたくはない。いや、怒鳴ったりはしないと思うけど。

当時から二郎の豚ダブル大ラーメン全マシにして「こんなん食いきれるか〜!」とか言ってヘラヘラ笑いながら半分以上残すモンスター客が問題視されていた。


そんな一見さんにはなりたくないので慎重に考える。

注文したのは通常のラーメン。大ラーメンや豚ダブルは初見では避けた方がいいと言われたので回避した。



・二郎に来たからにはアブラ感を楽しみたい。

・俺は野菜ではなく麺を食いたい。

・二郎はニンニクを食べるところだと聞いた。

・あまりスープの味を弄りたくない。



「お客さん、ニンニクどうなさいますか?」

「ニンニクとアブラで」



ニンニクの臭いにはリンゴジュースが効くんだっけ?

などと考えながらラーメンの着丼を待つ。



「はい、ニンニクとアブラマシね」

「ありがとうございます」



脂が浮いてテカテカしたスープ、こんもり盛られた野菜、見えない麺、異様にデカい肉。



(これが、二郎。ネットで見た通りだ。本当にニャルラトホテプっぽい)



野菜が多かったので天地返しはせず、黙々とアブラのかかった野菜をスープに浸しながら食べ進める。



「なんか普通に美味いな……」



野菜を食べ進めながら肉を食い、野菜をやっつけたら麺をすすり、肉を挟んで麺を食う。

そんな感じで普通に食べ進め、特に苦もなく完食。



「美味かったな……でも、しばらく食べなくていいかな」



満腹感、というか充足感?

脂と、やたらと味の濃いスープと、デカい肉と、盛られた野菜で体が満たされたあの感じ。

栄養補充をしたはずなのに、疲労感がすごい。すげぇ疲れる。



「二郎ってさァ、食べたくなるのに食べた後にこんなん食わなきゃ良かったってなるよなァ」



俺の目の前を歩いてた大学生くらいの男子二人組の会話が聞こえてくる。

脳裏に過ったことを代弁された気分になる。

敢えて言おうとしなかったのに──



「なんで俺、こんなの食おうと思ったんだろう?」





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