第48話 どっかの学園の文化祭(前編)

文化祭当日


「クラス長、間に合ってよかったな。」

「いやー、誠に申し訳なかったね。」


俺がコンソメスープを看板に溢したせいでギリギリになったが、無事完成に間に合うことができた文化祭本番当日。


「ですからね、無事迎えられまして......」


教室右上のテレビから流される、校長のながったらしい話にあくびを隠しながら話を聞く。


「......そんなこんなでね終わりまーす。」

「......んあ、終わったか。」


ボーッとしていた担任はいつの間にか聞こえなくなった校長の声にハッとして自我を取り戻し、教卓のリモコンでテレビを消すと切り替えて席を立つ。


「さ、お前ら盛り上がる準備できてるか?」

「「おー!」」


担任のその一言でクラスメイトも同様目を覚まし、楽しむ準備をはじめる。


「それでは各自仕事の時間には戻ってくるように!解散!」


廊下から聞こえるザワザワで、文化祭がはじまったのを実感しながら廊下に飛び出す生徒の後ろ側をついていく。


「仲田と二釈はさ、行きたい場所ある?」

「俺りんご飴とメイド喫茶!」

「まあ一時間後に仕事だからまずは近くのお店とか......。」


去年の文化祭は仲田と二釈それぞれが他の人と回る予定をしていたため一人で大変困っていたのだが、今年は文化祭の話が出た瞬間に予定を付けた。


「よし、じゃあとりあえず近いりんご飴からにするか。」


朝配られた手作り感満載の文化祭マップを開き、行きたい場所に丸を付ける。

りんご飴のあるグラウンドにひとつ、近くの射的場にひとつ、そして同じく別校舎にあるメイド喫茶には大きな丸でひとつ。


「クラス長もメイド喫茶行きたかったのかよ!」


――それからしばらく歩いてたどり着いたりんご飴屋に並び、無事購入を終えた俺たちは大きな後悔をすることになる。


「いやー、ミスったね。」

「なんで誰もこの状況を想像できなかったんだろうか。」


左手のリソースが完全にりんご飴で使われている事態に気が付かなかった俺たち三人は校内のロビーにある椅子に座りこみ、しばらくの間りんご飴を食べきるためにそれぞれ集中する。


「しかしあれだな......りんご飴初めて食うけど、静かになっちゃうな。」

「いやクラス長、カンジャンケジャン食ってるときじゃねえんだから.......。」

「蟹で良いだろ、なんで美味しいタレに漬け込んじゃうんだよ。」

「あ、そう言えばカンジャンケジャン屋無いのかな。」

「仲田さ、文化祭で蟹は出ないと思うぞ?」


ガリガリと歯でアメを削りに行くが、分厚いコーティングで中々リンゴにたどり着けない俺たちは少しだけ焦りを覚える。


「なあ、このまま俺たちりんご飴を食いきるだけで文化祭終えるのかな.......。」

「そこまでじゃねえだろ.......まあ、にしても結構かかりそうだけど。」

「カンジャンケジャン食えねえまま終わるのか。」

「だからカンジャンケジャンはねえって!」


――十数分後。


「よし、食い終わった!」

「おお、早いな仲田。」

「俺まだ半分以上あるぞ.......。」


仲田はべたべたの口を洗ってくると言い近くのトイレまでかけていった。


「これあれだな.......外側の飴だけでいいな......。」

「そんなこと言うな。」


隣でため息をつく二釈は明らかに次かじるまでのクールタイムが増え、代わりに愚痴の量を増やす。


「あとあれだな......りんご飴以上に歯を壊す食べ物無いな......。」

「だからあんまマイナスな事言うなっての。」

「これは食用ってより食べることもできる武器って感じだな.......。」

「もうあんま喋るな!」

「それに比べてカンジャンケジャンはさ.......」

「カンジャンケジャンは分かったってもう!」


口の中が甘ったるくて仕方なかったところにようやくリンゴの酸味が現れて美味しく中和してくれたが、にしても一人で食べるにしてはこれは多い。

二釈が愚痴を吐くのも少しわかる。


「ただいまー、って二人ともまだそこ?」

「逆によくあんなスピードで食べきれたな。」


仲田は俺たち二人に自慢するように鼻で笑ってニヤッと口を開ける。


「ま、俺は経験者だからさ。」

「りんご飴用の歯にしてるってことか......。」

「いやそこまではしてねえけども。」

「本当だ......よく見たら前の歯にAppleって彫られてる。」

「彫られてる訳ねえだろ!」


仲田は一応歯をハンカチで隠し、俺たち二人がちまちま食っているのを見届けながら俺のポケットに入れていたマップを無理やり取り出し開く。


「じゃあ二人が食い終わるまでに次の場所決めていいか?」

「おう、てか俺も射的やりたいかも、射的の口になってきたわ。」

「あんま飯以外でその表現しねえよ。」


仲田は口をとがらして鼻との間にペンを挟み、次の行き先を考える。


「久々にそのペン乗せるの見たわ。」

「嘘、俺結構これやるよ。」

「マジで、週何回くらいで?」

「そんな数え方はしないけど、授業中とか。」

「マジで?」

「でも前委員会の時にやってたらさ、湯瑠川さんに凄い顔で見られてあんまりやってない。」

「え、マジで!?」


眉間にものすごいしわを寄せ、目を閉じた湯瑠川さんはとやめてほしいと言わんばかりにゆっくり横に首を振ったらしい。


「それ以降湯瑠川さんの前ではやってないけどたまにやっちゃうんだよな。」

「確かに、仲田さっきりんご飴でもやってた......。」

「やってねえよ!!」

「てか仲田さ」

「いいから喋らず早く食えや!」


結果何も出来ずに仕事時間になる俺らであった。

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