半妖のムクロ『追放された半妖精、凄腕の我流剣術で吉宗を守って、ロリ巨乳の忍と共に魔剣士たちと魔剣を巡って果たし合いをする』

鷲巣 晶

序章

第1話 エルフの姉弟


百年前、島原で天草四郎がバテレンの妖術により、異界の扉が開かれた


その日より、日本という国は現世と異世界の間に閉じ込められて『エルフ』『ドワーフ』『ドラゴン』『オーク』と言った亜人が存在する世界となった


そして、時は流れ現在、八代将軍『徳川吉宗』の治世である




青白い光を放つ月が夜空に輝いた


木の影からその男の赤色の瞳は奴らを捉えている


その俺の名はムクロ。今は、賞金稼ぎをしている


歳のころは20歳前後


背丈は中肉中背に、赤いコートを羽織り、背中に変わった形の剣を背負っている


褐色の肌、ボサボサの黒い髪、ピアスをつけたエルフ耳


その出立は彼がエルフと人間の間に生まれた半妖精ハーフエルフであることを示している


ムクロは顎に手を添えながら、口を歪ませてその様子を見つめていた


彼の視線の先には夜の闇の中で焚き火を燃やし、4人のオーク族の盗賊が酒や、獣の肉で一杯やっている光景が見える


鬼族オークとは緑色の肌と屈強な体をした種族だ


基本的に粗暴であり、悪事に対する抵抗が少なく盗賊稼業や人攫いなどに手を染める者が多い


「ヒャハハハ、俺たちもついているな。行商人をぶっ殺したついでに、希少種族の小人族ハーフリングの娘を捕まえられるなんてよ」


奴らは木に縛り付けている小人族ハーフリングの女を見ながら下卑た笑みを浮かべる


小人ハーフリング成人しても子供のような姿をしている奴らだ


どう見ても、6、7歳くらいの背丈だが、この種族は見かけの年齢では、実年齢がわからない


栗色の長い髪を後ろで縛り、桃色の着物を着ていた


顔つきも、アーモンドのようなクリっとした瞳に、色白で頬をピンク色に染めた整った顔をしている


「しかし、わかんねえなあ。こんな食っても上手くなさそうな小人ハーフリングが裏では高値で売れるなんてよ」


「世の中には好事家が多いってことよ」


「まあ、見かけは子供みてえだが、乳だけは立派なものをお持ちなようだしな」


オルグ族の男は下卑た笑みを浮かべながら。縛られた小人族ハーフリングの女の豊かな胸をもみしだく


「この、痴漢!」


女は顔を赤くして叫ぶ


「可愛い声で叫びやがる。ムラムラしてきちまったな。ちょいと味見するのも悪くねえ」


「そうだな。縄を解くから逃げねえように押さえつけとけよ」


鼻息を荒くするオークたち


「いやあああ!!」


オルグたちに抑えられながら小人族ハーフリングの女が叫ぶ


ズドン


ムクロは空中に向かって一発、剣に備えられた銃をぶっ放しだ


「おうおう、その辺にしておけよ。てめえら、そんなションベン臭そうな女を相手に寄ってたかって、見てられねえなあ〜」


「なんだ、てめえは」


闇から現れたムクロに向かって4人のオークたちは俺に向かって銃や、刀や槍を構える


「そこのてめえ」


ムクロはエルフ文字が刻まれた赤い刀身の片刃の剣の切先をオークの一人に突きつけた


「『不動のゴウラ』だな。その首にかかった50両、俺がいただくぜ」


「『賞金稼ぎ』か!てめえ」


銃を構えたオークの銃が銃声と共に弾き飛ばされる


ムクロの剣の鍔の部分に銃が融合してあり、柄についてある引き金を引くことで銃弾を発射できるのだ


「『銃』と『剣』が合体しているだと!?」


不動のゴウラが叫ぶ


しかし、ただの銃弾程度では再生能力があるオークは倒せない


銃などで怯む鬼族オークはいないのだ


しかし、大量に出血させたり、一撃で致命傷を与えてくる武器を前にしては話は別である


「だああああああ」


ムクロはそのまま、地を蹴ると剣を振るってそばにいたオルグの首を刎ね飛ばす


残された胴体から吹き出した血が夜空に噴き上がる


「よくも兄弟を!!」


ゴウラは巨大な槍を構え、連続で突きを繰り出してゆくが、ムクロは、その槍を紙一重でかわしてゆく


ーーこ、こいつ、俺の槍を見切ってやがる!!


次の瞬間、ゴウラの目からムクロの姿が消えた


上である


ムクロは地を蹴って天空に向かって飛び上がると担ぎこんだ剣をゴウラの脳天に向かって振り下ろした


「ぐあああああ!!」


凶悪なオークの断絶魔の声が響く


頭を真っ二つに斬られて賞金首『不動のゴウラ』は絶命する


「つ、強い」


小人族ハーフリングの女はムクロの野生的な強さに声を感嘆の漏らした


「ゴウラの兄貴が斬られちまった」


「に、逃げるぞ。死ぬのは嫌だ」


残された二人のオークはその場から逃げようとする


しかし、その二人の首が同時に切断される


倒れた彼らを踏みつけて一人の女が現れる


長く伸ばした銀色の髪、透き通るような月のような白い肌、整った顔立ちに切れ長の青い瞳


青い着物にミスリルの鎧を身につけた女が青い刀身のエルフ文字が刻まれた両刃の剣を持って現れた


「フェイ!」


「久しぶりだな。ムクロ」


「へっ、てめえ、いきなり現れて、人の獲物、勝手に斬ってんじゃあねえよ、なんのようだ!姉貴様よお!」


剣を突きつけながらムクロが姉に向かって尋ねる


「昨日、父上が死んだ」


一瞬、ムクロは渋い顔をしたが、すぐに口元をニヤリと釣り上げて笑う


「へっ、それがどうした。俺を『エルダール』から追放した張本人だ。死んで清々するぜ」


「父上は殺されたのだ」


「あの、親父がか!?」


二人の父『ムソウ』は妖精族エルフの都『エルダール』の領主であり、徳川家光の時代より、代々の将軍家に仕えた剣術指南役だ


その完成された剣術と、手にした魔剣の力から天下無双の剣客と広く知られている


半妖だから、忌子だからと言う理由で自分を捨てた父を憎んではいたが、その実力はムクロも認めていた


父『ムソウ』を倒せるものなど、考えられない


「父を倒せるとするならば、同じく『天下七魔剣』を要する魔剣士と考えるのが必定」


純血の妖精である姉フェイはムクロの赤い剣を自分の青い剣で指した


「私の剣『蒼き獅子王のエクセリオン』と同じく『赫き獅子王のギルセリオン』は『天下七魔剣』の一振りであろう」


それを聞いて、ムクロはハッとした


そして、赫き獅子王のギルセリオンを構えて姉を睨みつける


「てめえ、俺が親父を斬ったと疑ってやがるのか!」


ムクロはフェイに向かって斬りつける


フェイは蒼き獅子王のエクセリオンでムクロの剣で受け止める


「そうは言っておらん」


「言っているも同じだろうが!」


赤い剣と青い剣二つの剣が目に止まらぬ速さでぶつかり火花を散らしてゆく


剣の動きが見切れなければ、どちらかの頭が割られる


ハイレベルな剣技が繰り広げられる


「剣筋が見えない。なんて腕なの!この二人!」


小人族ハーフリングの女は自分の常識を超えた剣技の数々に驚愕する


剣の腕は互角?


否、少しずつであるが、ムクロはフェイに押されている


舌打ちをするとムクロは後ろにバク転で飛び下がってフェイとの距離を取る


フェイに向かって剣に取り付けられた銃を構えて引き金を引く


ズガガガガガガ!!!


連続して銃声が響く


しかし、その銃弾を全てフェイが眉一つ動かさずに剣で叩き落としてゆく


姉には弾道は全て見切られている


「相変わらず銃などに頼ろうとは恥を知れ」


フェイは地を蹴りムクロの距離をつめた


フェイは横薙ぎに剣を振るう


ムクロは剣でその一閃を受けようとした


「すり抜けよ、蒼き獅子王のエクセリオン


次の瞬間、魔法のようにフェイの青い剣はムクロの赤い剣をすり抜ける


ムクロの腹に剣が叩き込まれる


斬ってはいない


剣の腹でムクロの腹を殴りつけたのだ


「ぐはあ!!」


腹を抑えて苦しむムクロの額を剣の柄で殴りつけた


「眠れ」


そのまま、仰向けに倒れてムクロは意識を失った

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