アスタク

 フレンシアは髪を掻きながらアスタクへ回線を頼むと、酔っ払いが現れた。

『何だよ』

「お願いがあるの」

『緊急は高いぞお』

「言い値で。わたしの会社関連の株式を調べてくれない?合法違法問わない」

『どこにかければ?』

 フレンシアは店の名を告げた。

 カウンターに戻ると、ボトルからアルコールを流し込んだ。

「何なのよ」

 アマンダが尋ねた。

「シュミットがわたしに召喚獣退治をしろと脅してきてるのよ。ロペ、この手紙いつ?」

 ロペはぐでんぐでんだ。

 コイツは……!

「軍動かさないから会社がやれと。シュミットもわたしのこと考えてくれてるのね」

 アマンダは泣いた。

 フレンシアは、

「泣きたいのはわたしよ!」

 バーテンダーが伝えてきた。

 ボックスに入ると、

『ギャハハハハハ!』

 アスタクが笑い転げていた。

 フレンシアは深呼吸した。

「話して」

『おまえんところの送還装置製作してる会社あるのか?』

「わたしんところじゃない。OEMよ。作らせてエンブレムはわたしんところ」

『◯✕製作所、✕△研究の送還装置の欠陥情報流れてるぞ。隠してるんじゃねえか?』

「誰が流してるのかわかる?」

『聞いてどうするんだ?』

「訴えてやる」

『ムリだ。欠陥は間違いねえ。製造段階の図面で指摘までされてる』

「当初の欠陥はありえない。シルクたちが管理してたのよ。シルク以上の魔法技術……」

 フレンシアはアマンダにもたれた。

 どうした?

「情報流した奴捕まえてやる」

『ムリだ』

「言い値で。早ければボーナス!」

『俺だ』


 フレンシアはいつもの定宿に戻ると、アマンダの豊かな胸で泣いた。

 慰めてと泣いた。

 ベッドに腰を掛けて水を飲んだ。ほとんどこぼれたので、アマンダが飲ませてくれた。

 なぜかバスタブにロペが寝ていてた。

 どうでもいい。

「聞いてよお。シュミットがわたしの会社を乗っ取ろうとしてる」

「よしよし」

 アマンダは笑いをこらえていた。

 製作関連の株は朝には下がるはずだ。アスタクが潤沢な資金で買い占める。

「シュミットがいぢめる」

「もうやるしかないんじゃない?」

「うん。やるの」

「よしよし」

「お水」

 ボトルを持たされた。

 フレンシアは口移しを求めた。

「しようがないわね。今夜だけよ」

「うん」

 アマンダは口移しで飲ませると、二人でベッドに倒れ込んだ。

 慰めて。

「フレンシア、今も一人?」

「アマンダも?」

 胸からヘソまで指でなぞられた。

 絶妙な痛さとやわらかさ。

 昔と変わらない。

 唇と舌が追いかけてきた。

「あー飲みすぎた。おれ?誰もいないの?てかここどこ?寒っ」

 濡れたロペが布団に潜り込んできた。

 アマンダとフレンシアを押し退けるようにして掛け布団を一人占めして寝た。

「飲みすぎたあ」

 アマンダは興ざめた。

 フレンシアはロペをぶん殴ると、

「くそっ。誰よ、石投げつけてくる奴は」

 そのまま床に蹴落とした。

 アマンダへ甘く求めた。

 ロペが天井に一発ぶっ放した。

 アマンダとフレンシアはベッドの陰に飛び退いて隠れた。

「誰だ!出てこい!」

 コイツも酒乱だ。

 

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