スタリング
アマンダはロペの話を聞いた。
「アホぬかせ。ツルマイの状況は誰もが理解してる。だがあんなところに軍なんて出してみろ。対岸のスタリングと一触即発だ」
「でも北街道から港街へ繋がれば貿易はできるわよね。わたしたち商人としては……」
「戦争になれば商いどころじゃない」
ロペはボトルごと頼んだ。
待て。
「誰が払う」
「アマンダよね」
「政治資金は使い放題よね?」
領収証のいらない資金だ。
飲み代には払えん。
「てか、いちばん高い酒かよ」
「ごち!」とロペ。
「わたしも」とフレンシア。
「伯爵様は健全だ」
ロペは懐を探した。
あったあった。
封印を施した封書を見せた。
「これがフレンシアへ」
お?
封印はシュミットだ。
アマンダは、
「わたしへは?」
自分のスラッとした鼻を指差した。
ロペは肩をすくめた。
いやいや。
「何で?シュミットは国の賢者、わたしは国の議員。封書はわたしにじゃね?」
「知らないわよ。シュミットからフレンシアへと託されたんだから」
フレンシアはアマンダにニヤッとした。
諦めたようで、
「開けろ」
フレンシアはナイフで開封した。
匂いを嗅いだ。
シュミットの匂い。
「貸しなさいよ。減るもんじゃないんだし」
「減るわよ」
「早く読んでみ」
ロペはグラスを干した。
フレンシアが動きを止めた。
「ロ、ロペさん……」
「ん?」
「内容は聞いてる?」
「聞いたわ」
フレンシアへ
ツルマイ港に支店を出すための調査を希望する。調査後すみやかに港湾を整備、スタリングとの交易の拠点とすること。
シュミット
「できるかっ!」
アマンダが手紙を取り上げた。
笑い転げた。
「拒否するわ」
「何か株?わかんないけど、シュミットが買い占めてるみたいよ。鍋でもするのかな」
ロペが話した。
フレンシアは店の隅のボックスに飛び込んでシルクに魔法通信をかけた。
『どした?』
ルルを抱っこしていた。
アマンダも割り込んだ。
「ルル、幸せそうね」
『アマンダ様』
慌てて画面から逃れた。
『フレ姉、今何時だと』
「株見て」
『どこの?』
「うちのところの」
『昨日は過去最高値だよ。ラマル族送還装置のトラブルが影響しなくて……』
「何でトラブってるのに高値なのよ」
『ロペ商会が買い付けてる。相場の一・五倍で公開買い付けしとる』
「ロペ商会て?」
『わからないけど。ダルツ取引所で取り引きされてる。まだ全体の十五%くらいだし』
「いかん……」
フレンシアは通信を切った。
アマンダはニヤニヤしていた。
「やるしかないの?」
「ロペ商会!?」
アマンダはロペを見た。
酔っぱらいだ。
「あなたの会社なの?」
「あ?わたしはしがない賞金稼ぎよ。ロペ商会はずっと前にシュミットが……旨っ」
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