第1話
霧がかかった朝の街並み。金属と木材の建築物がごちゃごちゃと立ち並び、頭上には大小さまざまな歯車が無数に回転している。「ギィギィ」と金属が擦れる音や規則的な「カチ、カチ」という機械音が街中に響き渡り、そこに蒸気が勢いよく吹き出す「シュウゥゥ」という音が混ざる。その音は街の生命そのもののようで、途切れることがない。
通りの中央には細いレールが敷かれ、蒸気駆動のトラムが白い蒸気を引きながらゆっくりと走る。車両の側面には巧妙に設計された歯車が回転し、動力を伝えているのが目に見える。歩道を歩く人々の中には、ゴーグルを額にかけ、時には手をかざして漏れる蒸気を避けている人もいる。
市場ではパンを焼く炉から、香ばしい匂いが漂っている露天商の声が機械の音と交じり合い、活気あふれる街の雰囲気を作り上げている。
浮遊都市「アルシア」。それはまさに歯車と蒸気によって動く生き物のようだ。音と動き、そして漂う熱気が、住む人々の生活を満たしていた。
街の中心部から少し外れた細い路地にある、小さな工房「ギアスミス」。外壁には蒸気の痕が残り、金属製の看板に描かれた歯車の模様が薄く錆びている。中からは、金属を叩く「カン、カン」という音と、蒸気が漏れる「シュウゥゥ」という音が絶えず聞こえてくる。
工房の奥にある作業台で、一人の少年が額に汗を浮かべながら、小さな部品と向き合っていた。短い茶髪に薄汚れた作業着を着崩している。これが見習い職人、エイデンだ。
彼の手には特殊な形をしたドライバーが握られ、その目には真剣な光が宿っている。自分で組んだのだろうか、歪な形をした炉からは赤い火がメラメラと燃え、隣のふいごが自動で空気を送り続けている。
「くそっ。またうまくはまらないな……」
エイデンは小さなパーツを歯車に接合しようと試行錯誤していたが、どうにもうまくいかない。近くのパイプから漏れ出す蒸気がさらに熱を加え、イライラが募る中、彼は一度深呼吸をして一度手を止めた。
「まぁいいや。ひとまず冷やして考え直すか。」
エイデンは作業台上部のレバーを下げ、近くの冷却装置にパーツを置き、ポケットから取り出した布で顔を拭った。
周囲には彼の手で作られた未完成の発明品が積み上げられている。動かなくなった小型ドローン、歯車が飛び出してしまったオルゴール、そして蒸気エネルギーで駆動すると思われる見慣れない装置。
「これで今度はうまく行くはずなんだけどな……」
そのとき、工房の扉が勢いよく開き、外からの風とともに賑やかな市場の音が流れ込んできた。
「エイデン、また妙なもの作ってるのか?」親方が顔を覗かせて冗談を飛ばす。
「親方、もう少しで成功するんだって!見ててくれよ!」
エイデンは意気揚々と笑いながら、再び作業台に向かった。その姿勢には、まだ未熟ながらも誰よりも強い好奇心と挑戦心が見て取れる。
親方は微笑みながら肩をすくめた。
「まあいいさ、その情熱は見習いにしては十分だ。蒸気の女神様が味方してくれるといいな。」
「当たり前だろ。俺はこの都市一の発明家になって、この世界をもっと良くしたいんだ。」
そう言ってエイデンは作業台の上部のレバーを上げる。「カタカタカタ」と作業台の仕掛けが動き始め、ふいごから新鮮な空気が次々と送り込まれる。
「あぁ、そうだ。作業がひと段落したらベックのところにちょっとお使いを頼まれてくれないか。蒸気圧バルブを三個と、あとはこのリストのものを頼んでくるんだ。」
親方が手渡した紙には、細かい部品名がびっしりと書かれている。エイデンは眉をひそめながら紙を受け取り、「またこんなにたくさん。これ全部持てるかな……」と苦笑いをした。
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