そして歯車は廻りだす

猿丸アズキ

プロローグ

 都市の外縁部。捨てられたものが行き着くゴミ捨て場。工場地帯が近いこともあり、常に白い排煙で覆われている。都市部の人間はまず立ち寄らず、いるのは排水に流されてきたドブネズミぐらいだろう。


 その時、辺りを漂っていた煙がその場で渦を巻いた。荒れ果てた金属の山々の間に突如、何かが「歪む」ような音が響いた。まるで空気そのものが引き裂かれたかのように、音のない波が辺り一帯を満たし、金属片が微かに振動する。


 次の瞬間、空間が裂けた。裂けたと表現するしかないだろう。何もない空間に突如現れた裂け目は縦に細長く、不気味に青白い光を放っている。

 光はまるで胎動のように明滅し、排煙が裂け目に吸い込まれたかと思えば、次の瞬間には逆流する。


 このまま広がるかと思われたその時、裂け目の縁を取り囲んでいた不安定な光がぎゅっと縮まり始めた。「ギギギ……」と金属がねじれるような音があたりに響き、空間全体が収縮する圧力を感じる。


 青白い輝きは次第に薄れ、裂け目の縁の歪みが揺らめきながら狭まり続ける。その速度は加速し、周囲の蒸気が逆流して吸い込まれる様子が視覚的な異様さを強調していた。裂け目の中心から、断末魔のような鈍い音が放たれ、最後の瞬間、裂け目は一気に収縮し、小さな点に凝縮された。


 そして――「ポン」という音を残して、その存在は完全に消失した。そこに残されたのは、静寂と異様に冷たく感じる空気だけだった。

 廃材置き場は再び通常の姿を取り戻したかのように見えたが——


——そこには先ほどまでいなかったはずの人影が立っていた。人影の右手は淡い緑色の光を放っており、それは先ほどの裂け目の色に酷似していた。しかし、光には温かみがあり裂け目の色とは何かが違った。だが突然、影は糸が切れた人形のように廃材の山に倒れ込んだ。

 静寂が辺りを包み込み、辺りを白い煙がまた覆いつくしていく。


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