3話 Keep an eye on you
教会を後にしたジャックは、揚々と歩を進めていた。
嗚呼、そうだったんだ。そうだったんだ!
やっぱり俺がおかしいと言う訳じゃなかったんだ。俺ではなく、俺を生んだ者……つまり俺の親が原因だったんだ。
道理で、世界の異変が止まらなかった訳だ。道理で、真っ白なアルバムの中にある写真を見る事が出来ていた訳だ。
「でも、これでようやく解決出来るぞ」
ニマリと歪むジャックの口元から、意気軒昂とした独り言が紡がれる。
人通りがあるなかにも関わらず、彼は羞恥に悶える事なく堂々と言い放った。
「解放されるんだ、奴から……この狂気的な世界から」
俺は元に戻る!
ジャックの内心が、パーッと清々しい程に晴れ渡る。いや、禍々しく囲う檻を壊す力を得た、と言うべきだ。
そうでなければ、ただ家路についている足から勇ましさを感じる事はあるまい。狩人が獲物を狩るが如く目を爛々と光らせている事もないだろう。
彼は、変わったのだ。
「両親を止める。つまり、今の両親の息の根を止めればこの世界はまた戻るんだ!」
よぅし、よぅし! やるぞ、やってやるぞ! と、彼の口から猛々しい誓いが飛ぶ。
その快哉を受け止めた天には……ふわんふわんとまろやかな形を作る積乱雲が、悠然と揺蕩っていた。
とある人物が一人、清々と吹っ切れた様に歩いて行く背を見送っていた。
「自分を生んだ者が両親だとは、断言していないのですがねぇ」
老齢の割にはまっすぐ、シャキッと伸びた背筋で見送る彼は、意味深に独り言つ。
「しかし、ですよ。これでまた、新しい筋道が作れましたかねぇ」
どうでしょうかねぇ。と、語り口調は穏やかな老人のままであるものの、入り口の前で佇む彼の声音は朗々と跳ねている。
そればかりか、彼を見つめる眼はニタリと意地の悪い三日月の様に細められ、言葉を朗々と紡ぐ口元はフフフと禍々しく歪んでいた。
「はてさて、彼は一体どうなる事やら」
期待に満ちた独り言をボソリと零してから、彼はまたフフフと笑みを零す。
「見守ろうか、最後まで」
物語を始めた者としてもね。
意気軒昂と歩む背が角に消えると同時に、ゆらりと老人の背は消えた。
それはまるで、この世界に溶け込んでしまったかの様に。
・・・
本日はこの後にあと一話、公開しております!通知が来ないやり方で大変申し訳ございません🙇♀️😭
もうラストですので、今後の公開予定としましては「一話を二個に分割した話」を明日、「めちゃ短めの二話とあとがきみたいな話」を明後日に……と言う形で公開した後、完結を押させていただきます(´∀`*)
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