第7話「北の火種」
2025年6月25日、日本が南洋の小国家の支援で自由を取り戻した頃、ソ連内部でも崩壊の兆しが広がっていた。チェチェン共和国を始めとするコーカサス地方の反ソ勢力が、モスクワの支配に抗う動きを見せ始めたのだ。私は監視室で、暗号化された通信を傍受し、事態の深刻さに息を呑んだ。ソ連の赤い帝国は、外からの圧力だけでなく、内からの爆発に直面していた。
チェチェンの指導者、アスラン・ドゥダエフは、グロズヌイの地下で同志たちに呼びかけた。「我々は長年抑圧されてきた。ソ連の鎖を断ち切る時が来た!」彼らは1990年代のチェチェン戦争で失った独立の夢を再び掲げ、武器を手に取った。チェチェン人は山岳地帯を拠点にゲリラ戦を展開し、ソ連軍の補給線を次々と攻撃。モスクワからの命令が届く前に、地方の駐留軍を混乱に陥れた。
この動きはチェチェンだけに留まらなかった。ダゲスタンやイングーシ共和国でも反ソの声が高まり、コーカサス全域が火薬庫と化した。さらに、シベリアの先住民族やウクライナ東部の親ロシア派でさえ、ソ連中央への不満を募らせていた。ソ連は衛星国家の統制に力を割きすぎ、内側の結束が脆くなっていたのだ。
6月30日、チェチェンの反乱が本格化した。アスラン率いる部隊が、ソ連軍の石油パイプラインを爆破し、コーカサスからモスクワへのエネルギー供給を断った。燃料不足に陥った赤軍は、朝鮮統一帝国への支援を縮小せざるを得ず、日本とアメリカへの圧力が弱まった。私は画面に映る炎と、チェチェンの旗を掲げる戦士たちを見た。彼らの瞳には、自由への渇望が宿っていた。
モスクワの指導部はパニックに陥った。大統領府では、「コーカサスを焦土と化せ」との過激な命令が飛び交ったが、軍内部にも亀裂が生じていた。一部の将校がチェチェン側に寝返り、極秘情報を流出。ソ連の核ミサイル基地の位置が反乱軍に漏れ、アスランは大胆な作戦を立てた。核兵器を奪取し、モスクワに突きつける——それは狂気じみた賭けだった。
7月5日、革命の火はさらに燃え上がった。チェチェン部隊が北コーカサスの軍事拠点を制圧し、ダゲスタンやイングーシの反乱軍と合流。ソ連軍は内戦状態に突入し、シベリアでも暴動が頻発した。私は監視室で、上司が絶叫する声を聞いた。「反逆者を潰せ!ソ連は不滅だ!」だが、その言葉は空虚に響いた。画面には、崩れゆく赤い星の旗が映っていた。
日本では、佐藤真理子とパラオの大統領レメンゲサウがこの動きを注視した。「ソ連が内側から崩れるなら、我々の勝利は近い」と佐藤は言った。アメリカのエリザベス・ハドリーも、チェチェン反乱軍への支援を検討し始めた。世界の自由勢力が手を結べば、ソ連の終焉は目前だった。
7月10日、チェチェン反乱軍がモスクワ郊外に迫った。アスランはラジオで宣言した。「我々は奴隷ではない。自由は我々の血の中にある!」ソ連軍は最後の抵抗を試みたが、兵士たちの士気は崩壊していた。シベリアやウクライナでも反乱が拡大し、ソ連は四面楚歌に陥った。
私は監視室を去り、窓からモスクワの空を見上げた。赤い曙光は薄れ、チェチェンの叫びが風に乗って聞こえた気がした。ソ連は外部の敵に打ち勝ったかに見えたが、内なる火種に飲み込まれようとしていた。
北の火種は、帝国を焼き尽くす焰となりつつあった。
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