第3話「桜と真理の覚醒」
2025年4月20日、アメリカの解放が世界に衝撃を与えた頃、日本でも静かな変革が始まっていた。ソ連の衛星国家「東方人民連邦」として、長年抑圧されてきた日本。しかし、桜の花が咲き乱れるこの春、意外な勢力が立ち上がった。かつて1995年に地下鉄サリン事件を起こし、解散したはずのオウム真理教が、姿を変えて復活していたのだ。
私はアレクセイ・ドミトリエフ、モスクワから日本の動向を監視する任務に就いていた。画面に映るのは、東京の地下で活動する「新生オウム」の姿だった。彼らは過去の過ちを悔い、教義を「真理と自由の探求」に改めていた。リーダーの麻原彰晃は既に亡くなっていたが、その後継者である佐藤真理子は、驚くべき提案を日本政府に持ちかけていた。「我々はソ連の支配を終わらせる力になる。共に戦おう」と。
日本政府は当初、警戒した。オウムの過去は暗い影を落としていたからだ。しかし、ソ連の圧政下で疲弊した国民感情と、アメリカの成功に触発された機運が、異例の協力を後押しした。新生オウムは、かつての化学兵器製造技術を応用し、ソ連の監視システムを無力化するEMP装置を開発。政府はこれを黙認し、秘密裏に支援を始めた。
4月25日、作戦が実行された。新生オウムの信者たちは、全国のソ連軍基地近くに潜入し、EMPを一斉に起動。通信網が麻痺し、赤軍の指揮系統は混乱に陥った。同時に、日本自衛隊が蜂起し、東京、大阪、北海道でソ連の駐留軍を制圧。佐藤真理子はテレビ放送をジャックし、国民に呼びかけた。「我々は過去を償う。今、日本を自由にするために立ち上がる!」彼女の言葉に、かつてのテロ集団を憎んだ人々さえ、心を動かされた。
ソ連は反撃を試みた。極東艦隊が日本海に展開し、東京へのミサイル攻撃を準備したが、ここで新生オウムのもう一つの切り札が炸裂した。彼らは旧教団の隠し資産を使い、サイバー戦部隊を組織していたのだ。ソ連のミサイル制御システムにハッキングを仕掛け、発射命令を無効化。艦隊は立ち往生し、自衛隊の反攻で壊滅した。
5月1日、東京の空に桜が舞う中、日本政府は「日本共和国」の再独立を宣言した。国会議事堂には、日の丸と並んで新生オウムの旗が掲げられた。異様な光景だったが、それは和解と再生の象徴でもあった。佐藤真理子は演説でこう語った。「我々は罪を背負った。それゆえに、自由の価値を知った。日本の未来を共に築こう。」
モスクワの監視室で、私は呆然としていた。ソ連の支配は次々と崩れ去り、世界は新たな秩序へと突き進んでいた。画面に映る日本の桜を見ながら、私は思った。過ちを犯した者さえ、変われるのなら、この世界にも希望はあるのかもしれない。
ソ連の赤い夢は終わりを告げ、日本は桜と共に自由を取り戻した。
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