第22話 表ヒロミチ総統の渡井
「次はお前だ、表ヒロミチ」
ショウは腰に提げていたホルスターから銃を抜いた。
「自らの利益のためだけにクローン技術を濫用し、あまつさえ危険分子を造り出すとは……」
銃口がヒロミチに向く。
「生かしては、おけない」
ダブルアクション・リボルバー・コルト357マグナムが火を吹いた。
大口径のブレッドがヒロミチめがけ飛んでいく。
しかし、ヒロミチは自分の指からリングを引き抜いた姿勢のまま、微動だにしない。
ブレッドはそのままヒロミチの頭部にヒットし――なかった。
「何?」
ショウが呟く。
想定外の事象だった。ヒロミチの姿が一瞬にして消え失せたのである。
ブレッドは空を切り裂きながら、壁に当たり砕けた。
ショウは上に気配を感じた。見上げると、ヒロミチがショウに拳を向けている。
「波動激震破!」
ヒロミチの拳から不可視の衝撃波が発生する。
「フッ」
ショウは飛び退き、ヒロミチと同じ高さまで上がった。
ショウのいた場所が衝撃波によって潰れる。椅子は砕け散り、床はへこみ、破れた。
「大した威力だ。だが、当たらなければどうと言う事は無い」
ショウは空中でさらに二発のブレッドを撃ち出した。滞空しているヒロミチの左腕に一発がかすった。
「はあっ!」
ヒロミチは空を蹴り、ショウとの距離を一気に詰める。
ショウが銃口を向ける。しかし、ヒロミチは気にせず接近した。
「クローンがどうしたって? お前も人の事言えた義理かよ!?」
ヒロミチの光る拳がショウの胸にめり込む。
吹き飛ぶショウ。
回転して壁に着地し、ショウはさらに三発のブレッドを放った。
ヒロミチはあくまで軽くかわす。
ショウはすぐさまリロード。シリンダーをスウィングアウトし、エジェクターロッドを押し込んで排挾。スピードローダーを使用し再装填する。そしてシリンダーを元に戻す。
この動作、僅か0.005秒。
「死ね、表ヒロミチ」
ショウがヒロミチに銃口がを向け、トリガーを引く――直前に、ヒロミチが銃を上から掴み、シリンダーを固定していた。
「お前も、殺されるのか恐いのか?」
「く!」
ショウは銃から手を離し、蹴りあげた。
ヒロミチの手から銃が放り出る。
「まともに生を受けたお前に何がわかる、表ヒロミチ……片腹痛いわ!」
ショウの右手の指先から稲妻がほとばしる。
「解らねぇな。別に解りたくもねぇ」
ヒロミチはそれを体を翻して簡単にかわしていく。
「つまりお前は死ぬんだよ! 渡瀬ショウ!」
ヒロミチの光る拳が、ショウの腹を刺した。
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