レギュレーション設定

 自主企画を立ち上げるにあたって重要なのは、企画内でどのようなルールを設定するか……所謂レギュレーションの設定だ。


 そりゃ、「春をテーマにした作品を募集したい!」というのにそれをレギュレーションとして明記していなければ、集まるものも集まらない。


 特に、今回のように「主要キャラクターの名前にこだわりがある」という主観的で曖昧な括りでは、自己申告次第でどんな名前でも通ってしまう。


「つまり、レギュレーション側で『こだわりを感じられる名前』の条件をがっちり固めて定義づけしてやる必要があるっちゅうことやな」


 お疲れ気味の情シス氏は先に「お一人様一作品まで」という、名前の定義とは無関係のレギュレーションを設定し、その下に「こだわりを感じられる名前」の条件を書き連ねていった。


 それと同時に、NGとなる名前の条件も併記しておく。


 これは、彼なりの配慮というやつだった。


 True条件だけでなくFalse条件も書いておくことで具体性が増し、よりふさわしい作品が登録されるようになり、条件外の作品が登録されにくくなる……との考え方である。


 おそらく、True側の条件だけ書けばいいと思う人もいるかもしれない。


 しかし、人によって判断や解釈の幅がぶれる内容である以上、条件はなるべく厳密にしておく必要があるし、何より人というのは時にとんでもないレベルのアホが出てくるものである。


 それこそ、同じ国の言語を話しているにもかかわらず、互いの理解力に大きな隔たりがあり、意思疎通が困難になるレベルの相手まで想定しないといけない。


 ネットは広大だ。


 普段そういう存在と出会う事はないかもしれないが、邪悪なるインタアネッツには、悲しきかな、この手の魔物は一定数存在するし、そういうやつに限って声がでかくて目立つのだ(多分可燃物なのだろう)。




「とりあえずこんなもんでええやろ」


 条件を書き終えたお疲れ気味の情シス氏は、続いて新規の近況ノートを立ち上げ、今まさに企画中の自主企画に関する内容を書き始める。


 というのも、現状ではレギュレーション通りに作品を登録しているかどうかが完全に自己申告制で、「実際に企画主催者が作品に目を通してみるまでレギュレーションを守れているかの確認ができない」というチェック体制での非効率性が問題であることが明白なのだ。


 となれば、レギュレーションを順守できているかどうかを作品の作者自身にきちんとプレゼンしてもらった方が効率が良い。


 しかし、カクヨムの自主企画には作品を登録する場所はあれど、企画の登録者同士で交流を行うフォーラムとしての役割・機能は存在しない。


 あってもよさそうな機能なのだが。


 そういうわけで、近況ノートへの誘導という方法を使って、作者にキャラクター名とその由来のプレゼンを行ってもらうという一連の流れを整備したわけである。


「で、この近況ノートのURLをこっちに貼り付けて……レギュレーションに『こちらの近況ノートで、主人公を含む複数名の主要キャラの名前と、その由来についてのご説明をお願いします』……っと。あとはまぁ宣伝も兼ねて、例としてワイの作品で『こんな感じですー』っていうのを出しときゃええやろ」


 一仕事を終えたお疲れ気味の情シス氏は、ふと時計を確認した。


「やっば、もうこないな時間かい。寝んね寝んね」


 翌日も休日とはいえ、深夜三時もとおに過ぎている中寝ずにぶっ続けで自主企画の立案作業を行っていたお疲れ気味の情シス氏は、うーんと大きく伸びをした後……そのまま人間のスイッチが切れるかのようにぷつっと脱力し椅子にもたれ込み、寝落ちした。


 彼が再びカクヨムを確認するのは、それから約九時間後の事である。

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