【悲報】カクヨムユーザー、日本語が読めない

お仕事中の情シス

プロローグ カクヨムで自主企画を企画したった

「なんやねんこのキャラ名!」


 溜息ともやっとした感情が入り混じった声で白髪交じりの男が唸る。




 彼は「お疲れ気味の情シス」、カクヨムにて平日日中に仕事をしながら作品を投稿しつつ、他ユーザーの作品も読むという一般的なカクヨムユーザーである。


 仕事をしながら「カク」も「ヨム」もするのか、という疑問を思い浮かべる人も多いかもしれない。


 しかし、彼は実際の所、日中暇な部署なのだ。


 田舎企業の情シスというのは、消防士と同じで、基本的に忙しくない方がいいお仕事である。


 必要とされる時というのは、何か困りごとが発生した時がメインなのだから。




 そんな彼が不快感から唸り声をあげた理由、それは作品に登場するキャラクター名である。


 彼は、そこそこキャラクターのネーミングにこだわりを持って考えるタイプだ。


 登場キャラクター同士で何らかの共通点を設定して統一感を持たせるようにしたり、キャラクターの名前がその役割を体現していたりと、名前に何らかの「意味」を持たせたがるのだ。


 それ故、彼が先程目を通した作品――ありふれた感じの異世界ファンタジー作品だ――の登場人物たちの名前を見た際、共通点のなさや、何も意味が込められてなさそうな雰囲気にひどく落胆したのである。


「名前ってそないに雑につけるもんとちゃうやろ。もうちょい捻れや、こだわれや! なんやねん、こないなもん適当に欧米風のよくある名前を適当につけただけやんけ! かっこよさげな雰囲気だけで名前つけとんなよ!」


 と、息巻いた後に、ふと。


「せや、これ自主企画にしたろ。名前にこだわり持ってる作者さんは、きっとワイ以外にもおるはずや。そういう作者さんの、ちゃんとこだわったキャラクター名の作品を読んでみたい……」


 成程、動機としてはなかなか前向きなものを感じる。


「逆に、これに乗っかってこやへん有象無象共は、自分の子供たる作品のキャラクターたちにちゃんと考えた名前をつけとらんっちゅうこっちゃ。テキトーな名前ばっか付け腐る連中が浮き彫りになるやで!」


 前言撤回、こいつカスでクソの不純すぎるやつだわ。




 かくして、カクヨムに一つの自主企画が立ち上がる。


 そしてそれが、お疲れ気味の情シス氏の絶望の幕開けであった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る