第2話 星降るカフェの約束「もう一度だけ、君に会える夜がある。」
夜空が透き通るように澄んでいた。街の明かりが遠のくにつれ、星々が降り注ぐように輝きを増していく。歩き慣れたはずの道なのに、ふと気がつくと見知らぬ細い路地に入り込んでいた。
——こんなところに、カフェなんてあっただろうか。
目の前には、古びた木造の店。看板には「星降るカフェ」と書かれている。扉を押すと、ほのかなコーヒーの香りが迎えてくれた。
店内はアンティーク調の落ち着いた空間で、棚には無数の古びたカップが並んでいる。窓際の席には、一人の女性が座っていた。懐かしい横顔——。
「……澪?」
名前を口にした瞬間、胸が締めつけられた。彼女は数年前、事故でこの世を去ったはずだった。
「久しぶりね」
まるで昨日も会っていたかのように、澪は微笑んだ。蒼司は言葉を失いながらも、向かいの席に座る。
「ここは……?」
「このカフェはね、大切な人ともう一度だけ会える場所なんだって」
目の前のコーヒーカップに、星の光が揺れる。蒼司は震える手でカップを持ち上げ、一口飲んだ。
温かく、懐かしい味がした。
「あなた、ちゃんと幸せに生きてる?」
澪の問いに、蒼司は言葉を詰まらせた。彼女がいなくなってから、時間は止まったままだった。前に進もうとしても、足がすくんでしまう。そんな自分を、ずっと責め続けていた。
「……わからない」
正直に答えると、澪はそっと手を重ねた。
「大丈夫。私のことは、もう思い出にしていいの。蒼司には、これからの未来があるんだから」
星の光がカフェの窓から降り注ぐ。その瞬間、澪の姿がふっと霞んだ。
「待って——」
伸ばした手は、ただ空を切った。
気がつくと、蒼司は一人、夜の街角に立っていた。振り返っても、そこにカフェはなかった。ただ、夜空に一際輝く星がひとつ。
澪が、最後にくれた言葉を胸に、蒼司はそっと歩き出した。
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