第39話

「あ、そうそう。これ、如月が学校辞める前に美術の授業で描いてった絵。ごめんねって伝えてって言われながら渡されちゃった」



ピンク色のハンカチと一緒に渡された一枚の画用紙。



「あいつ、そらのストーカーだったのかも。だってうますぎじゃない?あ、隼ちゃんからキスされてたって聞いたけど平気だったの?」




……ごめんねって。



町に勝手に貼られたポスターと同じ絵柄。




長い髪のわたしが、なぜか大雪が降る空を邪魔するようなバーを跳び超えている絵。




あんただったのかよ。




「きもちわるいね」



思わずミナに同調する。


絵がうまいなんて知らなかったよ。

わたし、如月初雪のこと、ぜんぜん知らなかった。だけど、知らないまま期待していたかった。


きみは期待どおりに、わたしのことを、真っ直ぐに好きでいてくれたのかもしれない。




「でも知ってた? 如月初雪の瞳ってね、すごくきれいなんだよ」



「えーっ!うそだあ。なんかヤダー」





あのひとには、

たぶん、よるの数だけ守ってもらった。


謝ってくれたしね。だから、願ってあげようと思う。




家族のことでさえも他人と呼んでしまう、如月初雪に、ちゃんと朝が訪れることを。





―――― そのときは同じ空の下にいたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る