第14話
1メートル74。
これは最初で最後の自己ベスト。
あと1センチでも高く跳んでみたい、という気持ちを繰り返して、繰り返して、出した数字。
それはわたしにとって、未熟で、未完成な、縋りたくなる宝物だった。
「…げ」
「げって……鳥羽さんって僕に対して酷いよね」
正門前で如月初雪と鉢合わせてしまったことに思わず顔を顰めると、向こうは不貞腐れたようにくちびるを内側に丸めた。
なんでこのひとはわたしに対してこんな態度なんだろうか。
先に歩く。
だけど、なんとなく、気配を感じられるような距離を保ってしまうのはどうしてかな。
足を引きずって歩くだらしない癖のせいで砂利の音が後ろで響いている。うるさいなあ。
「そら子先輩!!」
いつもより歩くスピードが遅かったからか、
校庭で朝練習をしていた後輩に、捕まってしまった。
如月初雪のせいだ。
無視をして走ろうとしたけれど一歩目から動けなくて口惜しい。
その数秒後には熱くなった手のひらに手首が捕まっていた。
「なんで部活来ないんですか?」
睨むような目から視線を反らす。
最近こんな質問ばかりされてうんざりだ。
この子は
陸上部の期待の2年生。走り高跳びの選手だ。
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